『オイルサーディン風呂と突きつけられた真実』
蒸し風呂の扉を開ける。サウナ用メガネが一瞬で曇り視界を奪われる。タオルでレンズを吹き、曇ったレンズ越しに室内を見回す……満員!! 部屋の中には陶器っぽい一人一人座れるイスが10脚程おいてあるんだが、それが全部ふさがってる。
いや〜週末の夕刻のスーパー銭湯って、こんなに混んでたのか? 世間の方が仕事しているような真っ昼間にばっかりサウナ入ってるいい加減な職業の自分が申し訳なってくる。この施設入ってから多分5度目くらいの「まいったな…」を独りごち、普通のサウナに戻ろうとしたまさにその時! オレは驚愕するような光景を見た!
露天にある一番大きな湯船……炭酸泉の風呂らしいんだが、その湯船が大変なことになっていた!
湯船の中に人間がとにかくとんでもなく満員に入ってる。
それも非常に整理整頓された状態で満員になっとる。わかりやすく説明すると、横長の湯船なんだけど、長い辺を背にして10人程の男がまずビターッっと並んで座ってる。もちろん向かい側の長い辺も同じように10人が並んで座ってる。
そしてその2列は向かい合ってるわけだけど、湯船の短い辺は1メートル半くらいしかないんで、その向かい合ってる2列の男の足は当然重なり合っちゃうワケなんだけど、それがちゃんと交互交互にうまいことズレてピッチリと納まっている。いや、納まっているというよりもパッケージされているといってもいいくらい整理整頓されたような状態になってる。人間がジグゾーパズルのように立錐の余地もなく湯船にはまり込んでいる!!
もうなんだろ、正直いって、銅版画で見てショックを受けた奴隷船といいますか、缶詰の中のオイルサーディンのようでもある。
あ、オイルサーディンが一番近い!! まさに人間オイルサーディン風呂!
そこまでして入りたいか、風呂!?
人間、色々なタイプがいるなァ〜と思いつつ、もうなんか気持ちが削がれちゃいましてね、あとは軽く1セットだけして出て来ました。
更衣室で服を着ながらふと気付くと、この更衣室、やけに張り紙が多い。読んでみると「迷惑行為禁止」みたいなことがやたらめったら書いてある。
なかには“細かい気泡で湯を白濁させる湯船は、迷惑行為が多いんで、夜は白濁させません”なんてことも書いてある。ア〜ッ!! この場合の迷惑行為っていうのは、なにかっつうと、まぁソッチ系の人たちですわね。
忘れてた! 最初にサウナの種類色々書いたけど、ソッチ系っていうのもあったんだ! この施設、本来はあくまで普通のスーパー銭湯系なんだろうけど、ソッチ系の人が多く来ちゃったんだな〜。さっきまで何回か思った「まいったね」が全部腑に落ちましたよ。今回は以上です…。
文/カーツさとう
コラムニスト。グルメ、旅、エアライン、サブカル、サウナ、ネコ、釣りなど幅広いジャンルに精通しており、新聞、雑誌、ラジオなどで活躍中。独特の文体でファンも多い。
■連載/カーツさとうの最強サウナ熱伝