半世紀以上、日本の大動脈として人々の移動の足を支えてきた東海道新幹線。特に、ビジネスパーソンにとってはなくてはならないインフラとなっている。中には、出張で毎週利用しているという方もいるのではないだろうか。そこで、ビジネスパーソンにとって、重要な足ともいえる、東海道新幹線の意外と知らない「車内販売」について紹介したい。
■「車内販売」が最も売れる時間帯は?
東海道新幹線の一車両の長さは約25m。全16両で400mあまりに達する。この約400mを舞台に乗客に飲食物などを提供するのが「車内販売」、いわゆるワゴン販売サービスだ。平成12年(2000)に食堂車が廃止されてから「車両の華」として乗客に親しまれるパーサーたちに話を聞いた。
「車内販売の人気商品は今も以前と変わらずお弁当、お茶、コーヒー、サンドウィッチなどです。私の入社当時はつぶつぶ果汁缶ジュースが人気でした」
新幹線の種類により乗車するパーサーの数は異なるが、ひかり号の場合、パーサーは基本的に3名。11号車にある車内基地を起点に、ひとりは1号車方面に、もうひとりは16号車方面にワゴンを押しながら向かう。両者の販売状況を見極めながら、フォローの指示を出すのがチーフパーサーだ。新幹線でいちばん忙しい時間帯は、午前の遅い時間だという。
「午前10時から11時くらいに東京駅を出る列車がよく売れるような気がします。朝のコーヒーから始まり、お昼のお弁当、その後にアイスクリームなどのデザートも召しあがってくださるお客様もいますから」
弁当を購入した乗客が、パーサーが1号車まで行って引き返してくると、今度はコーヒーを求めることも珍しくないという。夜の時間帯だと酒類がよく出るが、その後、コーヒーやアイスクリームを酔い覚ましとして購入する乗客が多いのだとか。
乗車前、同乗するチーム全員で行なうミーティングでは、販売目標数の確認が行なわれる。ワゴンに積み込む商品も時季や天候によって微妙に変わっている。
「夏休みや冬休みはお子様の乗車が多いので、お菓子類やアイスクリームを多めに積み込みます。暑い日や湿度の高い日はアイスコーヒーがよく売れますので、各自考えてワゴンセッティングしています」
その日の状況を的確に把握し、サービスが充分行き届くよう準備を整えるのは、パーサーの腕の見せ所だ。いつも笑顔を絶やさないパーサーたちだが、その任務はなかなかハードだ。パーサーたちの勤務は、東京〜新大阪間の一往復が基本。新大阪で宿泊して翌日東京に戻るというケースもある。