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部下をいじる上司ほど出世するワケ

2016.09.17

■モチベーションがアップする

 どこまでが「フィクション」で、どこからが「事実」であるのか、わからなくなると、怖いものがない。そんな上司は、あらゆることを都合のいいようにねじまげて、役員らに報告をする。自分の行為は、すべて正しいと信じ込んでいる。言い換えると、失敗もないし、ミスもない。「成功は自分の力、失敗は部下の責任」と思っている可能性が高い。「俺は優秀だ」と思い込むと、モチベーションは高まる。これが、いい仕事に結びつく。たとえ、大きなミスをしても、それは部下の責任となる。常に自分は正しい、と思える上司はひるむことがない。前進あるのみだから、成功する確率はおのずと高くなる。

■社長や役員から認められる

 社長や担当役員たちもそんな上司を「仕切る力がある」「統率力がある」などと錯覚する。得てして、社長や役員たちは、管理職のことを正確には見抜けていない。実は、社長や役員たちも、どこまでが「フィクション」で、どこからが「事実」であるのか、わからなくなっているからだ。少なくとも、非管理職のことまでは正確には把握できていない可能性が高い。それでも、管理職からの報告をうのみにしている。正しく把握しようと思うのではなく、いかに自分中心の体制を守るかを最優先に考えている。だからこそ、管理職の言い分をそのまま受け入れる。つまり、会社は、ある意味で、嘘で嘘をぬりかためた組織なのだ。

 本来、上司は、管理職手当を受け取っているのだから、それにふさわしい行動をとるべきである。それができないならば、非管理職に戻るべきだ。ところが、日本企業の人事制度は、職能資格制度であることもあり、降格がほとんどない。いったん、管理職になると、よほどのことがない限り、定年まで管理職のままとなる。結局、部下の育成力がなくとも、「自分はそこそこに優秀」と思い込み、部下へ指導らしきことをする。それができないと、自分の力を誇示しようとして、その部下をいじる。このあたりは、もっと問題視されていいところなのではないだろうか。少なくとも、非管理職への降格を増やすようにはするべきである。

文/吉田典史

ジャーナリスト。主に経営・社会分野で記事や本を書く。近著に「会社で落ちこぼれる人の口ぐせ 抜群に出世する人の口ぐせ」(KADOKAWA/中経出版)。

■連載/あるあるビジネス処方箋

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