■連載/ヒット商品開発秘話
健康のためにヨーグルトなどの乳酸菌食品を摂る人は多い。しかし、乳酸菌は熱や酸に弱く、大部分が腸に届く前に死滅してしまう。だが、ロッテの『スイーツデイズ 乳酸菌ショコラ』であれば、生きた乳酸菌を腸まで届けることができる。
2015年10月に発売された『スイーツデイズ 乳酸菌ショコラ』は、生きた乳酸菌をチョコレートで包んだのが特徴。これにより、乳酸菌食品でありながら常温で持ち運べ、時間や場所を問わず乳酸菌を摂取できるようにした。ミルクチョコレートの発売を皮切りに、アーモンドチョコレート、アーモンドチョコレートビターとラインアップを拡大。発売から約半年間(2016年3月末まで)で20億円の売上を達成したほど、好調に売れている。
■チョコレートで、生きた乳酸菌を酸から守る
開発の背景にあったのは、菓子業界の成長の鈍化。少子化が進んだこともあり、この10年、市場規模が横ばいの状況が続いていた。成長するためには、新たな切り口の商品が求められていた。
同社が新たな切り口としたのが、「健康」であった。まず、積極的に摂取したい栄養素などを調べたところ、乳酸菌が上位にきた。そこで、乳酸菌と主力のチョコレートを組み合わせ、健康感を打ち出すことにした。
ただ、同社は乳酸菌を扱った経験や知見が少ない。そこで、乳酸菌のエキスパートである日東薬品工業と共同開発することにした。まず、同社の研究所と日東薬品工業による共同研究がスタート。日東薬品工業には乳酸菌の選定や試験内容に関するアドバイスを受けたりしたほか、乳酸菌を提供してもらった。
熱に弱い乳酸菌は、チョコレートの製造工程で死んでしまうことが多い。しかし2012年秋、ある一定の条件と配合で乳酸菌を入れると、乳酸菌が1年間、常温で生き続けることを発見した。日東薬品工業にとっても、この結果は驚くべきものだった。
研究スタッフはこの結果からある仮説を立て、さらに研究を続けた。その仮説を、商品企画を担当した犬飼美穂子さん(マーケティング統括部第二商品企画部新商品企画室乳酸菌菓子チーム マネージャー)は次のように代弁する。
「乳酸菌をチョコレートに入れたら、常温保存できるだけでなく酸からも守られるのではないか、という仮説を立て、耐酸性試験を行なうことにしました」