■Introduction
夏の工作シリーズ第2弾は何とバックロードホーンのエンクロージャーキットなのだ。それも高さ90cm、重さ24kgという本格派。吉本キャビネットの新製品BearHorn『BW-166』(3万4000円×2税込)である。フロントバッフルは24mm、その他の部分は15mm厚のMDFを採用している。FOSTX『FE166En』というバックロードホーン向きの16cmフルレンジユニット指定箱をベースに設計されており『FE166En』が無加工で取り付けられる。
何より、このキットの特徴は夏の工作シリーズ(1)で紹介した木ダボを採用したことだ。バックロードホーンは内部構造が複雑で板材の点数も多く、垂直や直角を出すのが難しい。これを解決してくれるのがダボである。通常ならハタガネと呼ばれる治具を使って板を固定するのだが、ダボ構造なら専用工具不要で誰でもカンタンに精度の高いエンクロージャーが組み立てられる。BareHornのキットは誤差0.02mm以下の精度で板を切り出しているため、カンナ掛け不要でピシッとした箱が完成するのだ。実際に製作してみると板を切る必要がないので実物大のプラモデル感覚で完成できた。面倒な塗装をしなくてもこのままで十分美しい。木の素材感を生かしたオイルステイン仕上げすればさらに高級感を出せるだろう。木クズが出ずに、水性の木工用ボンドを使うため家族に迷惑をかけず室内で組み立てられるのもいい。
■Concept
現代のメーカー製のスピーカーは、そのほとんどがバスレフ型か密閉型である。バスレフ型はスピーカーの裏側から出た音をポートと呼ばれる穴から反転させて押し出すことから位相反転型と呼ばれている。バスレフポートはヘルムホルツ共振を使って特定の周波数だけ、主に低音を共振させている。これにより小口径ユニットで容積の小さな箱から密閉型より低い音を再生できるのだ。その代償として一部の低音しか増強できない。低音の反応が遅れる、制動が効かずにだぶついた音になるなどの弱点がある。
これに対してバックロードホーンは、名前の通りスピーカーにホーンを付けることで音を能率良く拡散する仕組みだ。前面にホーンがあるのがフロントロードホーン、有名なものにアルテック『A7』がある。Voice of the Theaterという名前からも分かるように劇場用のスピーカーである。これに対して背面にホーンを付けたのがバックロードホーンである。なぜ背面なのかと言えば、折りたたんで長いホーンが出来るからだ。バックロードホーンに使われているのは、エクスポーネンシャル(指数関数)ホーンと呼ばれるタイプで、開口部が大きいほど低音が出る。開口部が同じ面積ならホーンが長いほど低音が出るという特性がある。このホーンをエンクロージャーの中にいかに折りたたむかがバックロードホーンの設計者の腕の見せ所になる。
『BW-166』の内部は複雑な構造になっている。板の側面から出ているの円柱の突起がダボで、貼り合わせる板には穴があってピッタリ設計通りの位置に固定できる
組み立て順を示す図面。斜線の5、11は側面に補強用の板が入っている。釘を使わずに木工用ボンドのみで組み立てられる
組立前のパーツを並べて撮影。完成サイズは幅28×高さ90×奥行き46.2cmの堂々としたフロア型になる