■実は寂しがり屋
ほとんどの上司は寂しがり屋だ。部下から称賛され、チヤホヤされていたいと密かに願っている。それが、人の上に立つ人の多くが持つ「防衛本能」というものだ。だからこそ、「ああ、今日はあれをしなきゃ」などとみんなに聞こえるように独り言を口にする。部下から同情され、気をつかってもらうことで、職場の輪の中に入りたいのだ。そんな思いを察知し、「今日、食事にみんなで一緒に行きませんか?」などと声を掛けてみよう。もしかすると、おごってもらえるかもしれない。年に数回でかまわない。それ以上になると、上司のほうが部下に甘える可能性があるので注意しよう。部下と上司の間にも、緊張感が必要。緊張がない職場では、いい仕事はできない。
■仕事がわからない
上司は、部署の仕事を隅々まで正確に理解しているわけではない。曖昧な場合もあれば、ほとんどわかっていないこともある。上司は自分が理解できてないことを部下に知られることを警戒する。権威や威信がなくなると思い込んでいるからだ。そこで独り言を言うことで、助けてもらうことを期待する。たとえば「これはどうするんだっけ…」と言った時などが、その一例だ。
部下は、忙しい時はともかく、時間がある時には、丁寧に教えてあげよう。本人は、プライドもあり、大きな声でレクチャーを受けることを嫌がる。上司としての見栄もメンツもある。部下ならば、ささやく程度に、教えてあげたい。上司は、安心するはずだ。ただし、何度教えても理解できない人には教える必要はない。そのような人とは、距離を置いたほうがいい。上司と部下の間に、一定の緊張感は必要なのだ。
上司が独り言をつぶやく時、何かの意図がある可能性が高い。日ごろから観察すると、それを見抜くことができる。上司も心や感情を持っている。独り言に敏感になることで、上司の考えていること、弱さや強さなどを知ることができる。それを仕事に生かしたい。
文/吉田典史
ジャーナリスト。主に経営・社会分野で記事や本を書く。著書に「封印された震災死」(世界文化社)、「震災死」「あの日、負け組社員になった…」(ダイヤモンド社)、「非正社員から正社員になる!」(光文社)、「悶える職場 あなたの職場に潜む「狂気」を抉る」(光文社)など、多数。近著に「会社で落ちこぼれる人の口ぐせ 抜群に出世する人の口ぐせ」(KADOKAWA/中経出版)も好評発売中。