■連載/阿部純子のトレンド探検隊
◆自覚症状があるのに老視(=老眼)だと認めない人が世の中には多い?
3年ほど前から手元が見えにくいと感じていたが、ここ1年は矯正しないとさすがに厳しくなり、自宅では数種類のメガネを使い分け、仕事や外出の際は従来通りの近視用ハードコンタクトレンズを使用、近くを見るときはコンタクトレンズの上から老眼鏡で矯正している。取材先で資料を見たり撮影のときは老眼鏡をかけ、スクリーンに映し出された映像は老眼鏡を外して見る。外でスマホを使い地図を確認するときは、サングラスを外し老眼鏡をかけ直す。これをひたすら繰り返すのでかなりのストレスになっていた。
コンタクトレンズだけで矯正できればベストなのだが、何度か遠近両用のハードコンタクトレンズを試してみたもののあまりに違和感を覚え、結局、近視用のハードレンズを使い続けている。何人かの同年代の知人から「遠近両用だったらハードよりソフトの方が自然に見える」と聞き、ジョンソン・エンド・ジョンソンから発売された、一日使い捨て遠近両用ソフトコンタクトレンズ「ワンデー アキュビュー モイスト マルチフォーカル」(以下マルチフォーカル)の新製品説明会に出向いた。
会場となった「アキュビュー ストア表参道」は、瞳分析シミュレーター「EYE DEFINE STUDIO」などの体験型コンテンツが揃った店舗で、じっくりとカウンセリングが受けられるスペースとなっている。
2014年のソフトコンタクトレンズ市場は約2300億円、2015年の速報値では遠近両用は約65億円でコンタクトレンズ市場全体の3%弱となっている。推計ではソフトコンタクトレンズの装用者全体は約1700万人、そのうち使い捨てレンズ装用者が1360万人。使い捨てコンタクトレンズ装用者のうち老視自覚者は推定400万人超といわれており、潜在的なユーザーの数としては非常に多いものの、実際に使用しているのは28万人にとどまっている。
同社の調査によると、45歳以上の8割が老視症状を自覚しているが、実際に矯正をする人は25%にとどまっている。つまり、手もとが見にくいと感じているにもかかわらず「自分は老視ではない」と認めない人が多いということ。50歳を過ぎるとようやく3人に2人は老視が出ていると自認するようになる。
コンタクトレンズ装用者で老視症状が出てからも使い続けたいと思っているのは約92%で、特に女性はメガネを掛けることに心理的な抵抗があることが調査結果からわかった。
説明会で講演を行った、小玉眼科医院・院長で、日本コンタクトレンズ学会理事の小玉 裕司先生はこう話す。
「診療の現場でも“あなたは老視です”と特に女性に対しては言いにくいので、老視を『キャリア アイ』と呼んではどうかと提案している。50歳を過ぎても矯正をしていない人も多いが、早めに矯正した方が目のためにも体のためにも良い。
日本では遠近両用のコンタクトレンズを使っている人は4%ほど。私のクリニックでも積極的に処方しているがそれでも8%ほどで、存在すら知らない人も多い。20年ほど前に初めて発売された遠近両用コンタクトレンズと今のレンズでは性能として雲泥の差がある。以前の成功率は6割ぐらいで、10人に4人は受け入れられなかったが、現在、同社から発売されている遠近両用のソフトコンタクトレンズに関しては、成功率は9割に達している」