■ボリュームが出ない原因はキューティクルにあった
『いち髪 ふんわりボリュームケア』の開発は、年代によって異なるボリュームの悩みを1つのラインで解決するということでもあった。
この難しい課題を解決するには、年代に関係なく共通するボリュームが出ない原因を究明しなければならない。そのためにまず行なったのが、20代から50代までのサンプルを集めること。飯田さんが研究所のスタッフとともに、一人ひとりの髪を切って集めて回った。集めたサンプルを使い、時間をかけて様々な実験を行なったが、この過程で同社は、年齢に関係なく「髪やせ」が起きていることを突き止める。
「髪やせ」とは同社独自の呼び方で、キューティクル層が薄く、剥がれ・めくれがあることにより、髪のボリュームや艶がなくなった状態のこと。キューティクルは毛髪内部を保護し、水分やタンパク質などの流出を防ぐが、研究の結果、毛髪の曲げ剛性(ふんわりさせる力)の約60%を発生させるほど、ボリュームに大きく寄与していることが判明した。またキューティクルは、パーマやヘアカラーなどにより枚数が減ったり、層が薄くなることは既に知られていたが、とくに何もせず放っておいても、加齢により30代から枚数が減り層も薄くなることがわかった。
髪やせした状態のキューティクル(表面)。剥がれ・めくれがあり、なめらかさを失っている
さらに、根元と毛先の状態の違いも明確になった。キューティクルの枚数と層の厚さは、加齢に伴って減少が進んでいくが、髪の毛が生えてくる根元部分と違い、毛先のキューティクルの枚数と層の厚さは、20代と50代で比較しても差が少ないという。
年代を問わずボリュームが出ない共通原因がキューティクルにあることを突き止めたことで、開発は処方や洗い上がりを決めるフェーズに移る。各ラインでも採用されている補修&予防美髪成分「純・和草プレミアムエキス」に、ボリュームケアにつながる和草素材を合わせてテスト。新たに、ざくろエキスとイソフラボン含有大豆エキスを配合することにした。ざくろエキスはうるおいと艶を補給し、イソフラボン含有大豆エキスはキューティクルを補強し剥がれを防ぐ効果が高いという。処方を決めるに当たっては、蓄積してきた和草の研究データを活用し、効果が期待できるものを選択してはテストを重ねた。「様々な和草が持つ効果・効能などのデータは、他社にはないもの」と飯田さんは胸を張って言う。
そして、試作をつくっては洗って検証。飯田さんも試作をテストし、仕上がりと洗い上がりをチェックした。飯田さんの自宅の風呂場は、自社・他社問わずシャンプーやコンディショナーで埋め尽くされており、それらと比較しながら検証しているという。