■連載/ヒット商品開発秘話
クラシエホームプロダクツが2006年から発売しているヘアケアブランド『いち髪』。現在、2015年7月に発売された『いち髪 ふんわりボリュームケア』の売れ行きが好調だという。
『いち髪 ふんわりボリュームケア』は、女性特有の「髪やせ」に着目して開発された。キューティクルを補強することで「髪やせ」のダメージを防ぎ、髪にうるおいと艶を与えて、ふんわりボリューム感のある艶やかな髪に仕上げる。シャンプー、コンディショナー、トリートメントをラインアップ。発売から3か月で累計300万本以上を売り上げるほど好調に売れ、当初の販売計画を達成した。そして『いち髪』を、ヘアケア商品の主要ブランドと同じ年間売上100億円クラスに到達させるのに貢献した。
■年代ごとに異なる髪のボリュームに関する悩み
『いち髪』は、ダメージ補修だけでなく予防までかなえる「予防美髪」がコンセプト。日本で古くから髪にいいと言われている、和草を活かした美髪成分を開発、配合しているのが特徴だ。まず『いち髪 なめらかスムースケア』を発売し、2012年に『いち髪 濃密W保湿ケア』を追加した。
これら2ラインに続く3ライン目が、『いち髪 ふんわりボリュームケア』である。開発が始まったのは発売の2年前からというが、その経緯は何か? 開発を担当した飯田美穂さん(ヘアケアマーケティング部 係長)は次のように話す。
「『いち髪』は2ラインで展開してきましたが、ブランドの成長を考えると、2ラインでは対応できるニーズが限られます。より多くのニーズに対応するには、新ラインの追加が必要でした」
クラシエホームプロダクツ
ヘアケアマーケティング部
係長
飯田美穂さん
とくに対応できていなかったニーズというのが、軽めに仕上げたいというものだった。若い女性を中心にふんわりしたヘアスタイルが流行していることを受け、主要ブランドは軽く仕上がるものを発売。しかし『いち髪』は、主要ブランドに仲間入りできつつあったが、飯田さんは、「3ライン以上展開している主要ブランドと比べると規模はまだ小さく、ニーズに対応しきれていない面がありました」と言う。
こうして『いち髪 ふんわりボリュームケア』は開発されることになったが、ボリュームケアはエイジングと結びつき、40代後半以上向けと受け止められる傾向が強い。しかし同社の調査から、若い人たちの中にも、髪のボリュームで悩んでいる人が多くいることがわかった。
ただ、髪のボリュームで悩んでいるといっても、中身は世代ごとに異なる。同社の調査によれば、20代や30代では「ふんわり感が出ない」ことが目立つが、40代以上は「ハリ・コシがない」が顕著。したがって、ボリュームケアを謳った既存の商品では、若い人たちの満足は得られないことになり、若い人たちも満足できるボリュームケア商品に商機を見出すことになった。しかし、『いち髪』は20~40代の幅広い層を対象にしていることから、社内では当初、従来のユーザー層より上の年齢層を対象とするイメージが強くなるボリュームケアについては、なかなか理解が得られず、研究結果などを示して理解を得ていった。