■連載/ヒット商品開発秘話
日本でしょうゆをつくっている会社は1300にものぼると言われている。しょうゆは、あるブランドを一度使い続けると別のブランドへの変更が起きにくいことから、ユーザーを一度つかめば長いこと支持されるが、その反面、大きなヒットが生まれにくいところがある。
このような商品特性の中で大ヒットしているしょうゆが、キッコーマン食品の『いつでも新鮮』シリーズである。2010年9月に発売された『いつでも新鮮』シリーズの特徴は、しょうゆは通すが空気は通らないパーツを導入した容器を採用し、開封から90日間は常温保存できること。現在、200ml、450ml、330ml入りボトルで展開し、〈しぼりたて生しょうゆ〉〈しぼりたて丸大豆生しょうゆ〉〈塩分ひかえめ丸大豆生しょうゆ〉といったしょうゆのほか、しょうゆ以外の〈だし香る贅沢つゆ〉〈旨みまろやかだし入りぽんず〉なども発売している。2011年度11億円、12年度22億円、13年度45億円、14年度66億円と売り上げ、15年度も80億円以上になると言われているが、なぜこれほどまで売れているのであろうか? その理由を探ってみよう。
■一番美味しいしょうゆを10年以上かけて開発した容器に
「もともと、しょうゆの鮮度を少しでも保てる容器を世に出したいと考え、発売の10年以上も前から研究開発を進めていました。そして、この容器の中身はペットボトルで売っているものと同じではなく、鮮度を保つ意味があるものにすることにしました」
開発の経緯をこのように語るのは、『いつでも新鮮』シリーズを担当するプロダクト・マネジャー室しょうゆ・みりんグループの井上美香さん。鮮度を保つ意味があるものとしてまず選ばれたのが、生しょうゆであった。
キッコーマン食品
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しょうゆ・みりんグループ
井上美香さん