キングレコード「ウルトラマン大百科!」担当者とフジアキコ隊員役・桜井浩子さんが語る、一枚のレコードがつなぐウルトラマンのバトン【前編】
1978年2月。ウルトラマンシリーズのレギュラー放送がなかったウルトラマン史におけるエアポケットのようなこの時期に、ファン心理を刺激するレコードが発売された。そ…
キングレコード「ウルトラマン大百科!」担当者とフジアキコ隊員役・桜井浩子さんが語る、一枚のレコードがつなぐウルトラマンのバトン【中編】
(前編はこちら) SACD化で音源はどうなった? 『ウルトラマン大百科!』のオリジナルLPと並ぶ最新SACD盤(キングレコード)。SACD/CDハイブリッド盤/…
冬木透先生のオペラシティコンサート
桜井浩子さん(以下桜井氏):冬木先生とは晩年に、ご一緒させていただく機会が多くありました。最初のオペラシティコンサートの「コンダクツ・ウルトラセブン」からずっと。「君がやりなさい」って言われて、「何でセブンを私が?」って。でもコーディネーターですから自分が関わった作品かどうかはおいといてやらなきゃいけない。なので『ウルトラセブン』のみんなに「セブン触ります」って挨拶に行きました。私たちは俳優ですから音より演技なんですが、冬木先生のコンサートに関わることで「音楽ってすごい!」と改めて気付かされました。特に演奏がフルオーケストラですから。
本誌:普段の家の中でどれだけ優れたオーディオで聴いていても、ホールには敵いません。
桜井氏:先生に附いてオーケストラとの音合わせも行きました。すると指揮棒を持った瞬間の先生の顔が違う。そして「んっ」って言ってから「パッ」って振ると「バーン♪」って音が鳴る。もうゾゾゾって震えます! そしてオペラシティ演奏会では司会のアシスタントをやりましたが、その時はもう舞台も袖もぐちゃぐちゃ、ばたばた。でも『ウルトラQ』の時から、何かが生まれる時って阿鼻叫喚なんですよ、現場は混乱なんです。私たちは本当にひどい目に遭いましたけど(笑) それでもひどい目に遭うとどんな火事場でも揺るがない。
本誌:極限状態を体験すると肝っ玉が太くなるわけですね。
SACDプロジェクトのその先に……
本誌:キングレコードでは『ウルトラマン大百科!』までSACD化プロジェクトが3作続きました。ではこの後はどうなりますか。既にいろいろとプランを練っているところかと察しますが。
中山良輝さん(以下中山氏):もちろんです。たとえば『ウルトラマン大百科!』に収録されている「帰ってきたウルトラマン」の歌(SACD:Track9)は、TV放映版では郷秀樹役の団次郎さんの歌唱ですが、キングレコード独自音源でボニージャックス歌唱になっています。『ウルトラマン大百科!』は『ウルトラQ』から『ウルトラマンレオ』までの音源で構成されていますが、昭和くくりで言うと『ザ☆ウルトラマン』や『ウルトラマン80』の主題歌にも実はキングレコード独自の音源があるんですよ。
本誌:それは聴いてみたい!
中山氏:たとえばウルトラマンシリーズ楽曲も含めた形で、キングレコード独自音源で組むコンピレーションができないかと検討しています。また復刻プロジェクトに関しては、『ウルトラマン大百科!』のヒットを受けて当時リリースされた『サウンド・ウルトラマン!』『ウルトラ怪獣大百科!』『サウンド・ウルトラマン パートⅡ』といったところまでCD化してほしいというリクエストも届いています。これら続編の実現にあたっては、まず『ウルトラマン大百科!』でウルトラファンの皆様と一緒に実績を出さなければならないので、ぜひ一人でも多くの方にお求め頂きたいです!
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本誌:オーディオファンからの評価も高いと聞いています。優れたオーディオ機器で聴くとちょっとびっくりするぐらいの音が飛び出したりするんでしょうね。
中山氏:オリジナルマスターテープからの最新マスタリングのSACDということで音質にはこだわっています。『ウルトラマン大百科!』に関しては、もちろんいい機材で聴いていただくメリットは大きいと思うのですが、そもそもミックスバランスやバージョンが他のウルトラマン関連音源と違っているものがあるので、まずその部分に関心が向くと思います。
本誌:先ほどお話された「歌い手が違う」といった例ですね。
中山氏:はい。さらにニッチな違いで言うと、「ウルトラセブンの歌」(SACD:Track5)があります。冒頭「セブン~、セブン~、セブン~、セブン~♪」と始まりますが、僕なんかもうここだけで「今まで聴き慣れた音源と違う!」と思ったんですよ。
本誌:……え、え~っと、どう違いますか?
中山氏:最初から3つのセブンはそれぞれ男性のソロですよね。で、このソロパートが従来のは一定で3人が歌って、4回目で三声がハモる時に主旋律が割と上にくるんですけど、『ウルトラマン大百科!』では2番目のセブンが前に出て聴こえてくるんです。
本誌:ではここでキングレコードスタジオの贅沢なラージモニターで検証しましょう。
中山氏:ほら! しかもコーラスになった時も主旋律よりハモリが出て聞こえるあたりも聴き慣れなくて、比較用として『TSUBURAYA IMAGINATION』でも本編のオープニングを確認しましたが、やはり違っていました。それで、気になって調べたところ「ウルトラセブンの歌(Version 2)」と呼ばれる放送当時のレコードに多く収録されているバージョンで、2番・3番の歌詞や歌割りも少し異なります。この音源が、放送から時間の経った『ウルトラマン大百科!』にも収録されていたんです。この音源が高音質盤で聴けるというだけでも、長年のファンにとっても新たな発見があるはずです。
円谷プロダクション藤田浩さん(以下藤田氏):ここにしかないバランスで収録されているトラックがあるんですよ。だから『マンもセブンも音源は持っているからいいや』ではなく、持っている人こそ聴いた方がいい、いや聴かなくちゃいけないアルバムだと思いますね!
中山氏:デジタルになってより聴き込みやすくなったし、比較しやすくもなっていますしね。
本誌:より時代に合った商材として装いも新たに提供されたものだと感じます。昨今、リスナーの方々もいいヘッドフォンやイヤフォンで熱心にリスニングを楽しむ風潮とも合致しています。ではそろそろ対談企画の締めとしてまず中山さんから、『ウルトラマン大百科!』の魅力をプッシュください。
中山氏:『ウルトラマン大百科!』というのは、本物のウルトラマン好きがウルトラマン好きのために作ったアルバムですので、ウルトラマンを愛するすべての人に絶対に手に取ってほしいアイテムです。60年も続いてきた『ウルトラマン』シリーズなので、シリーズ途中や平成・令和からウルトラマンを知った方も多いと思います。そういった方の昭和ウルトラマン入門編としても、音楽だけでなくナレーションやセリフで世界観も堪能できる『ウルトラマン大百科!』をオススメしたいです。

https://www.kingrecords.co.jp/cs/g/gKIGA-41/
本誌:移動中など映像を楽しめない時であっても、聴覚から『ウルトラマン』世界に没入できますね。続きまして桜井さん、同様に『ウルトラマン大百科!』についてレコメンをお願いします。
桜井氏:現在の専門家の方が最新技術を駆使して、わたしたちが60年前にやった作品の音楽にふたたび命を吹き込んで下さったのだとすると、これをぜひお子さんたちに聴いてほしいと思いますね。まだおしゃべりを始める前の幼児にね。その子たちに本物の音楽を聴かせる意味は大きいと思います。ここに収められている音楽は宮本國郎先生、冬木透先生を始めとする音楽家の方がつくった本物の音ですし、ウルトラマンシリーズは敷居が低いから入りやすく、耳を傾けやすいはず。先入観のない無垢な子たちに良い音楽を聴かせるっていうの、アリでしょ?
本誌:令和の子供たちが『ウルトラマン大百科!』をどう聴くか、とても興味深いですね。
桜井氏:円谷一監督もそこはこだわって「子どもたちの耳に、良い音楽をちゃんと届けて」って。だから一監督は冬木先生に「交響曲を作ってほしい」と依頼されたそうです。もちろん、かつて子供だったいまの大人ファンの方は必携の一枚ですよ。
本誌:当時レコード盤を買った全員に「SACDになって出てますよ」とお知らせしたいですよね(笑)! そして桜井さんは9月11日に書き下ろし単行本『ウルトラQ はじまりの深層』(立東舎)刊行されました。
桜井氏:これまで『ウルトラQ、ウルトラマン全67作・ヒロインの追憶』(アルテスパブリッシング社刊)、『ヒロインの追憶 ウルトラの絆』(立東舎刊)という関連本を書きまして、この時代の経緯はおおむね整理したつもりだったんです。ですから次に書くなら円谷プロのコーディネーターとして活動してきた直近20年の話かなと思っていたんです。

https://rittorsha.jp/items/25317415.html
本誌:そこ、興味あります!
桜井氏:でしょ、絶対面白いと思って。 そんな話をしていたら円谷プロの藤田君というオタクさんが(笑)「2026年はウルトラマン60周年。桜井さんと言えば『ウルトラQ』に『ウルトラマン』ですから、今回もこれをテーマにお願いします!」って言うわけです。でも先の2冊で書き尽くした感もあって、書くことがないんですよ。「だったら何を書けばいいの?」 と尋ねたら、これまで書かれなかった桜井さんの気持ちを書いてほしいと。
本誌:気持ちですか?
桜井氏:確かに「私はその時どう思った、感じた」ということは書かなかったんですよ。あくまであったことをそのまま書いて、読んだ方が「そうだったのか」「そんなことがあったのか」と事実を知る助けになればいいかと思っていたんですね。
本誌:資料性に徹した部分があったのですね。
桜井氏:それに気持ちで書くと色々と差し障りがあったりするでしょう(笑) これ書いちゃマズいかな~っていうこともあるのでどうしようかなって思ったんですけど、私たち当事者ももういい歳なので、いまのうちに本音で書いておかないとチャンスがないかもしれないなと開き直りました(笑) 本当は『ウルトラQ』と『ウルトラマン』で一冊のはずだったんですが、書き始めたら『ウルトラQ』だけで終わっちゃって、編集長が「じゃあ『ウルトラマン』編は来年ですね」って。ボケずに元気でいれたら来年書けますよ。
全員:(笑)
本誌:『ウルトラQ はじまりの深層』の読みどころを教えて下さい。

https://rittorsha.jp/items/26317411.html
桜井氏:撮影や演技、さまざまな局面で、わたしがどう思ったか、感じていたかを書きました。たとえば目の前にない得体のしれない物体を見て「はい驚いた演技!」って言われた時とか。そんなリアクション、養成所で習いませんから(笑) それをどうやって自分なりに、特撮の演技として成立させるか、手探りで答えを見つけていくか、といった状況だったんですよ。キャストもスタッフも若くて、映画出身者とテレビ出身者が混ざって阿鼻叫喚の中で特撮ドラマを作っていったあの頃。円谷英二監督がどうだった、一監督はこうだった、その時に私はどう思ったかを思い出しながら。これまでの本では「どうだった」という状況しか書かなかったんですよ。それに対して「私はどう思ったか」を書いたのが『ウルトラQ はじまりの深層』の読みどころです。
本誌:そして来年は同様の切り口で『ウルトラマン はじまりの深層』ですか?
桜井氏:『ウルトラマン』はやっぱりキャストがキャストなので、書けないことが山ほどある(笑) そのヤバいことが面白いし、読者の方が知りたいのはそこなんだとは判ってるんだけど、活字にするとね……。『ウルトラQ』は立ち上げ作品ですからなんとか作品を世の中に出して、みなさんに認めてもらいたいという、それ一点だったんですけど、『ウルトラマン』になるとカラーになって、『ウルトラQ』の視聴率が良かったからイケイケで現場の雰囲気も違うので、制作現場としてはすごくノリがいいんですよ。でも私達東宝からの人、フリー、それに新劇から来たキャップなど混成チームだから、相当不協和音を奏でちゃうんですよ(笑) その不協和音がどうして科特隊でまとまったかっていうのも、書きたいなと思ってたんですけど……。
本誌:令和9年の楽しみがひとつ増えました。来年は『ウルトラセブン』が60周年で盛り上がりも必至です。本日は桜井さん、中山さん、藤田さん、そしてスタッフのみなさまありがとうございました。
文/前田賢紀
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