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キングレコード「ウルトラマン大百科!」担当者とフジアキコ隊員役・桜井浩子さんが語る、一枚のレコードがつなぐウルトラマンのバトン【前編】

2026.11.06

1978年2月。ウルトラマンシリーズのレギュラー放送がなかったウルトラマン史におけるエアポケットのようなこの時期に、ファン心理を刺激するレコードが発売された。その名は『ウルトラマン大百科!』。老舗キングレコードが手掛けたこの一枚のレコードは、発売されるや予想を超える大ヒットを記録。後に続くアニメサントラレコード隆盛の起爆剤のひとつとなった。

それから48年目となる今年。『ウルトラマン大百科!』が初のCD化……どころか高音質フォーマットであるSACD化を果たしリリースされたのだ。発売後ロケットダッシュを決めたこの記念碑的アルバムを深掘りすべく、「DIME」では特別対談を企画。「DIME」12月号の大特集「ウルトラマン再入門」にて掲載した。

対談者は『ウルトラマン』のフジアキコ隊員役を務めた桜井浩子さんと、SACD盤『ウルトラマン大百科!』復刻プロジェクトチームいちの若手、キングレコード中山良輝さんだ。

『ウルトラQ』『ウルトラマン』で初代ウルトラヒロインを務めた桜井浩子さん(左)とキングレコードで特撮音楽にまつわる企画を手掛ける中山良輝さん

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エンタメの原点にして最先端。 今月のDIMEは「ウルトラマンシリーズ」60周年記念の大特集。円谷プロの協力のもと、制作の舞台裏から世界での躍進の秘密、企業コラボ…

ウルトラマン誕生60年目の初CD化

本誌:本対談のきっかけは、1978年に発売され、ヒットを記録した『ウルトラマン大百科!』がついにデジタル化、しかも高音質フォーマットであるSACD化され発売されたことです。なぜ今なのか、なぜSACDだったのか、音源としての特長は何かと言ったあたりを中山さんに明らかにしていただくと同時に、『ウルトラQ』や『ウルトラマン』撮影当時の熱気や、特撮における音楽というものの“あの頃のリアル”を、ウルトラレジェンドのおひとり、桜井浩子さんに伺いたいと思います。ではまず中山さんから『ウルトラマン大百科!』SACD化の経緯をお話し願えますか。

キングレコード中山良輝氏(以下中山氏):はい。事の発端は「ゴジラ」作品でも知られる作曲家の伊福部昭さん作品で『SF特撮映画音楽の夕べ』というコンサート盤を2024年にSACD化したことです。これが大変好評をいただいたことで、次作2025年発売の『交響詩ウルトラマン/ウルトラセブン』のSACD化につながりました。この作品はウルトラマンの音楽や劇伴をオーケストラ演奏としたもので、こちらも好評をいただきました。そして歴史的に見ると『交響詩~』に先立って発売された作品として『ウルトラマン大百科!』がありましたので、これも高音質デジタル化しようとなったわけです。

最新SACD/CDハイブリッド盤『ウルトラマン大百科!』/4400円(キングレコード) https://www.kingrecords.co.jp/cs/g/gKIGA-41/

本誌:すると『~大百科!』と『交響詩~』は兄弟盤と考えていいのですか。

中山氏:そうですね。当時『ウルトラマン大百科!』のヒットを受けて、キングレコードからサントラやBGMなどの企画が続いた、その出発点ともいえるのがこの両作品かと思います。

本誌:ライナーノーツを読むと、こういった特撮やアニメ作品のレコード化に注力した結果、後のアニメサントラレーベル「スターチャイルド」設立につながったことがわかります。

中山氏:『ウルトラマン大百科!』という企画が生まれたそもそもの経緯ですが、実は当時、他社と比較してもキングレコードはそれほどこのジャンルに強かったわけではなかったんですよね。そんな中、当時の担当ディレクターであった藤田純二さんが自社音源をいろいろと確認している中で、かつてシングル盤で発売されていたウルトラマン関連の主題歌レコードに行き当たり、「これだけあればアルバムが作れる!」と気付いたことがきっかけだったようです。音源の権利を所有する日音にレコード化について確認した際に、怪獣ライターとして有名な円谷プロの竹内博さんを紹介いただき、「ここまで知識と情熱がある方であれば任せてみよう!」という藤田さんの決断により、竹内さん主導による選曲・構成で生まれたのが『ウルトラマン大百科!』になります。

本誌:なるほど。ある種の音源の有効活用だったのですね。

中山氏:マニアによって作られたマニアのためのレコードですよね。

本誌:そしてファンの波長とシンクロした結果、大ヒットにつながったと言う。

『ウルトラマン大百科!』と『交響詩ウルトラマン/ウルトラセブン』。いずれもSACD/CDハイブリッド盤で好評発売中!

中山氏:おそらく、シングルを時系列順にまとめたようなベスト盤を編集する作業であれば作品の知識を問わずにレコード会社のディレクターだけで制作できたと思いますが、当時の藤田ディレクターがファン目線をもつ竹内さんのアドバイスを企画のベースにしたからこそ、ファンの心をきちんと掴み、好セールスに繋がったのではないかと思います。

本誌:そうですね。ところで中山さんは1998年(平成10年)生まれの28歳と、昭和ウルトラマン世代からははるかにお若いのですが、お父様、ご家族が大好きだったといった影響からでしょうか?

中山氏:その通りです。父も母も本放送や再放送を通じて特撮作品を観てきた世代なので、僕も物心つくころには、昭和ウルトラマンもVHSビデオやケーブルテレビなどで見せてもらっていて、そこが入口になっているかと思います。中でも、『ウルトラビッグファイトスペシャル ウルトラ戦士スーパーミュージック』は、全シリーズから怪獣とウルトラマンたちの戦闘シーンが繋がっていて、バックに各シリーズの曲が流れていたんですよ。このビデオでウルトラシリーズを時系列で観て、曲を聴いたことで、ウルトラマンの放送順や音楽が身体に沁み込み、僕のウルトラ原体験の礎ができていったと思います(笑)

本誌:では本日この機会に、フジアキコ隊員と並ぶなんてとても信じられない?

中山氏:本当に信じられない光景です。

本誌:ここで話題を転じまして、桜井さんにお尋ねしたいと思います。出演された側という、我々視聴者とは逆のお立場でございます。最初に音楽も含めてチェックした時の、音楽に対する印象、かっこよさ、驚きなど覚えておられることはありますか?

桜井浩子さん(以下桜井氏):『ウルトラマン』の音楽に一番最初に触れたのは杉並公会堂かな。円谷英二監督や科特隊のみんなで並んで、『ウルトラマン』の主題歌を歌ったんですよ。だから音楽と言えばそこが一番印象的で古い記憶なんですけど、でも隊員全員が歌をまだ知らなかった(笑) 英二監督だけはちゃんと歌っておられて、驚いちゃって。そこで初めてこんな音楽がつくんだと知りました。日々、私達は撮影に追われてましたから、本放送が始まっても、自分では観ていないんですよ、当時ホームビデオなんてありませんからね。他に音楽とのエピソードで言うと、宮内國郎先生(『ウルトラQ』・『ウルトラマン』主題歌・劇伴作曲家)が撮影現場に遊びに来られて、見かけた瞬間に「どこかで見たことある男性だな?」と思いました。私、東宝所属だったんですけど、ニューフェイスの頃ちょっと暇で、六本木でブイブイ言わせてたことがございまして(笑)、その頃に、六本木の俳優座の裏にマックスホールというジャズ生演奏の店があって、私は東宝の人たちとか、当時のイケオジたちと通ってたんですよ。その中に宮内さんもおられたので見覚えがあったんですね。

本誌:宮内先生はジャズ畑のご出身でしたよね。

桜井氏:「マックスホールには入り浸ってる」ってご自身でおっしゃってました。最初の『ウルトラQ』の曲が宮内さんのもので、やっぱり軽快だし、ちょっとかっこいいし、合っていたなと思うんですよ。しかも宮内さん自身もイケオジですから(笑) なかなか洒脱な人でね。3回ぐらいしかお会いできませんでしたけど本当にかっこいい人で、だから音楽もそういう風になるんだろうなと納得しました。ただ私達は俳優ですので、音楽の方は後まわし(笑) 後年みんなでカラオケに行って、「歌詞、こういう内容だったんだ」なんて笑ったりして。当時、円谷一(はじめ)監督が「僕も作詞家なんだよ」と話していて、私はなに言っちゃってんだって思ってたんですけど、『科特隊の歌』の作詞家、東京一(あずま・きょういち)が円谷一監督のペンネームだったんですよね。

桜井浩子さん

本誌:当時の洒脱な若者カルチャーの中からウルトラマンの音楽も生まれてきたというわけですね。

桜井氏:そうです。作品作りはドラマ班、特撮班などそれぞれ専業・分業でしたから、班の人は班のことで精いっぱい。最後にプロデューサーやディレクターがまとめて作品にするので、音楽が入るのはたぶん一番最後だったと思うんですよね。だから私達はあまり、特に『ウルトラQ』『ウルトラマン』では直接音楽に触れる機会はありませんでした。

本誌:ご自身で武田アワーの本放送を観た覚えもない?

桜井氏:ありません。私達はオールアフレコ(アフター・レコーディング)だったんですよ。だいたい特撮パートはアフレコの時には完成していませんから、ときどき黒い箇所が出てきて「なにこれ?」って言ったら「ここに特撮が入るけれど、悪いけど抜かして当ててくれる?」って。

本誌:放映時間は撮影で忙しくて観られないし、アフレコ現場では特撮ができていない状態。どっちにしても完パケは観られていないのですね。

桜井氏:そう、ぜんぜん観てない! 黒部進さん(ハヤタ隊員役)も、かなりあとになって本を書く時に初めて全部観たって言ってました(笑)

本誌:主役でさえ!

桜井氏:「なかなかいい番組だったね」なんて言ってましたよ(笑)

本誌:まるで他人事(笑)

桜井氏:リアルタイムでしっかり観ていたのは小林昭二さん(ムラマツキャップ役)ぐらいじゃないかな。キャップは責任あるからね、仕上がりを観て、私達に指導したり、チームをまとめたりしなきゃいけないから。特に『ウルトラマン』ってやんちゃな人が多かったので(笑)

桜井さんと中山さん

本誌:そういった青春群像の中から生み出された『ウルトラQ』『ウルトラマン』誕生から12年後、1978年に発売されたのが『ウルトラマン大百科!』です。その頃、こんなレコードが出る、といった情報は耳にされていたのですか?

桜井氏:知りませんでしたね。私、東宝からフリーになって『ウルトラマン』ももう卒業と思ってたの。だからレコード発売当時は特に、『ウルトラマン』関係のインタビューやそういったお声がけには出なかった時期だったんですよ。そうこうしていたらある時に毒蝮さんとか小林さんから呼び出しを受けて「女性隊員はお前しかいないのになに考えてんだ!」って怒られて(笑) それで90年代になって『ウルトラマン』に帰ってきたんです。

本誌:すると『ウルトラマン大百科!』やそれに続く特撮レコードが出ていた頃からしばらくは、役者としての自分自身を日々磨いた時期だったのですね。

桜井氏:そうですね。といっても自分自身の出演作を観て勉強はしないです。勉強にならないし、反省したくないし(笑) だけど作品の観なおしという意味ではきっちりやりました。その後、本を書く機会を頂くようになって、もう一度『ウルトラQ』から全部観なおしてね。最近4Kリマスターになって観たら、ものすごいびっくりしちゃって! 飯島監督と晩年、電話で話した時も「桜井君ね、僕たちはね、すごい仕事やったんだ」っておっしゃって。当事者は意外とそういった認識がないから、皆さんが「ウルトラマン凄い」って言ってくれてもピンとこない。最初の『ウルトラQ』の撮影当時なんか、一番大変で、地べた這いずり回って、汗水たらして、地獄でしたからね、キャストもスタッフも全員地獄の阿鼻叫喚。でも『ウルトラQ』が今に続くシリーズの土台を作ったんですよ。だから私自身『ウルトラQ』のことはすごく覚えてるんです。『ウルトラマン』になると、さらに色んな要素が増えて、いろいろな意味で大変でした(笑)

本誌:キャストも増え、セットも特撮シーンも増えてますしね。

桜井氏:『ウルトラマン』のキャストも本番になるとものすごく真剣でした。何と言ってもキャップがいるから。本番でNGを出すとキャップが怖い(笑) 一番小柄なんだけどオーラがあって。若手中心の科特隊をまとめてくれって、たぶん小林さんはTBSとかから言われてたんじゃないかな。イデ隊員役が当初のキャスティングから代わって、二瓶正也さんになったところからシュッとまとまりましたね。二瓶ちゃんが入ってきて、このチームがどういう形になるかということが、小林さんや円谷一監督たちに見えてきたんじゃないかな。『ウルトラマン』はひたすら面白かったですね。明るかったし。『ウルトラQ』が大成功した後だったし。やっぱり『ウルトラQ』は相当暗かったです(笑)

鮮明に撮影当時のエピソードを語ってくれた桜井浩子さん

本誌:なんといっても「アンバランス」な世界ですからね。

桜井氏:アンバランスどころか、怪獣世界になっちゃってますから! 

本誌:思いっきり子供向けにシフトしたのが功を奏したのでしょうか。

桜井氏:それはTBSの栫井プロデューサーがそう意識しただけで、私達は全く意識してません。演じること自体は同じですから。それにキャップが「子供相手だと思っておちゃらけるんじゃないぞ!」って、バルタン星人の特撮シーンを観た時におっしゃったこともあります。飯島監督をはじめ誰も子供相手と思ってないですから。実相寺さんも思ってない。

(中編に続く)

キングレコード

文/前田賢紀

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構成/DIME編集部

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