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キングレコード「ウルトラマン大百科!」担当者とフジアキコ隊員役・桜井浩子さんが語る、一枚のレコードがつなぐウルトラマンのバトン【前編】
1978年2月。ウルトラマンシリーズのレギュラー放送がなかったウルトラマン史におけるエアポケットのようなこの時期に、ファン心理を刺激するレコードが発売された。そ…
SACD化で音源はどうなった?

https://www.kingrecords.co.jp/cs/g/gKIGA-41/
(前編より続く)
本誌:今年がシリーズ誕生60周年ということもあり、今回の『ウルトラマン大百科!』が装いも新たに登場したわけですが、中山さん、リマスターによってどのようなサウンドに仕上げる狙いだったのですか? たとえば昨今、ヘッドフォンリスニングが主流になっていますので、ヘッドフォンでより聴きやすくチューニングしているといったような。
キングレコード中山良輝さん(以下中山氏):まず高音質フォーマットであるSACDの特性として、通常CDに比べデータ容量や収録周波数の拡大によって音の再現性が高く、これがアナログ音源との好相性をもたらします。アナログマスターテープ起こしのリマスターですし、今回が初めてのデジタル化ですから、極力、当時聴いた人たちも納得いただけるアナログならではの音が伝わるようなサウンドを目指して作られています。
本誌:ではハイレゾを強調したデジタル風味ではなさそうですね。
中山氏:リマスターって聞くとアナログより見通しが良くなったり、抜けが良くなったりといったイメージがあると思います。もちろんその要素ももっていますが、本作ではアナログの特性や肌ざわりを活かした上でのデジタル化になっているかと思います。これは前作『交響詩ウルトラマン/ウルトラセブン』や伊福部昭さんの『SF特撮映画音楽の夕べ』も同様です。
桜井浩子さん(以下桜井氏):若い人にも伊福部先生の音楽って人気ですよね。どういうところに惹かれるんだろう。
中山氏:伊福部音楽でしか得られない要素と言いますか、”アクの強さ”のようなものが堪らないんじゃないでしょうか。なんだかこう”ダンッダンッダンッダンッ”みたいな原始的なリズムとか”ダァァァンッ ダッダァァァン”みたいな壮大なスケール感の中におどろおどろしい恐怖感やダイナミックな迫力が同居したようなインパクトとか、細胞に訴えかけてくる要素があるのではないかと。
桜井氏:なるほどね。
中山氏:好みは分かれるかと思いますが、伊福部さんの魅力にハマった人は抜け出せなくなる(笑)
桜井氏:そうそう私、伊福部先生に一度お会いしたことがあるんですよ。
中山氏:ええっ!
桜井氏:アフレコルームと間違って入っちゃった東宝スタジオの大きな部屋でオーケストラの収録をしていたんですよ。ドアを開けた時に最初に目が合ったものすごい眼力のおじさん、それが伊福部さんだったのね。お目にかかったのはその一回きりかな。そう言えば、ずっと後に円谷プロのコーディネーターとしてご一緒させていただいた冬木透先生(『ウルトラセブン』主題歌・劇伴作曲家)も普段は優しい方なのに、音になると恐い。絶対妥協しない!
本誌:そういった妥協なき音楽家のエッセンスがテープに収められているわけですね。今回マスターテープからのリマスターということですが、オリジナルレコードからの変更点はありますか?
中山氏:そのままですね。まずテープをオーブンに入れてカビやベタつき等をていねいに取り除いてからデジタル化して、という作業の流れです。
本誌:レコードはレコードというメディア固有の音があると思います。そのレコードで聴けた音をSACDで再現するということになるのでしょうか?
中山氏:むしろアナログテープに収録された音源のポテンシャルをレコードより大きな器であるSACDに収めるようなイメージかと思います。
「すみません!」とここで円谷プロの藤田浩さんが挙手。レコード発売当時、リアルタイムで購入した長年のファンが知る、当時のウルトラマンのリアルを話してくれた。
藤田浩さん(以下藤田氏):レコードが発売された1978年頃はホームビデオの本格普及前です。『ウルトラマンレオ』は1975年に終わっていて、ウルトラマンシリーズはときどき再放送で目にする、そんな時期だったかと思います。かつて『ウルトラマン』や『ウルトラセブン』を観て熱中していた子供たちはすでに中学生、高校生になっており、その彼らの目の前に登場したレコードが『ウルトラマン大百科!』だったんです。以前にはソノシートなどで個別に音源を聴くことができましたが、『ウルトラマン大百科!』では『ウルトラQ』から『ウルトラマンレオ』まで一気に聴ける、これが圧倒的にファンの熱量を高めたし、渇きを癒したんですよ。
本誌:後に言うマニアの養分になったのですね。
藤田氏:マニアというかオタクというか(笑) 子供の頃に特撮を楽しんだ子供たちが大人になっていくちょうどその過程で、マニア向け商材、つまり僕らファンがオタクになっていくマストアイテムがどんどん出るようになったんです。僕は当時高校生でしたが、すごく興奮して聴いたことを覚えています。
桜井氏:なに言ってるの! 藤田クンは元からオタクじゃない(笑)
藤田氏:いやいや、そのオタク心を満たしてくれるアイテムがなかったんですよ、当時は。
中山氏:『ウルトラマン大百科!』が出る少し前に、雑誌『GORO』でのウルトラマン特集や『ウルトラマン』がテレビで再放送されて好視聴率をとっていたという話も聞きました。
本誌:『ウルトラマンレオ』でいったんシリーズが落ち着いてしばらく経っていたところに出た『ウルトラマン大百科!』がヒットした背景には、マニア化したファンたちの渇きがあった。
藤田氏:まさにそうだと思いますね。たぶんそのマニアの心を分かっていたのが、竹内博さんだった。ライナーでは酒井敏夫名義で書いている竹内さんですね。
本誌:筆致が熱いですよね。
藤田氏:はい。その熱さがマニアたちに伝わってヒットしたのだと思います。
本誌:そんな伝説的レコードのデジタル化が今回初めてというのも意外な気がします。なぜでしょう?
中山氏:正しい事情は判りませんが、その価値に気づくディレクターが居なかったのかも知れません。でもファンの熱意に気付いたキングレコードの松下久昭ディレクターが『SF特撮映画音楽の夕べ』『交響詩ウルトラマン/ウルトラセブン』のSACD化を成功させたことが『ウルトラマン大百科!』につながりました。もちろん今年がウルトラマンシリーズ誕生60周年ということもSACD化の後押しとなっています。
桜井氏:60周年までよく来たなと思いますよね。だって生まれた子が還暦ですよ(笑)
本誌:しかもシリーズとして新作を生み出し続けています。
桜井氏:昭和に始まる歴代作品の要素を、世代の若い方たちが大事にしてバトンをつないできたからこそでしょうね。
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秋葉原での試聴イベントは大盛況
本誌:『交響詩ウルトラマン/ウルトラセブン』のSACD発売イベントとして、試聴会を開きました。どんな声がありましたか。
中山氏:まず、イベントに参加して下さったファンの方はもちろんですが、イベントに協力してくださったメディアやオーディオメーカーにも熱心なファンが多く、国内オーディオメーカー各社のご協力もあって総額700万円を超えるオーディオ機器を使用したシステムでの試聴会となり、各媒体の記事もとても熱のこもったものでした。人数が限られたイベントだったので、関係者の方には「立ち見になりますが?」とお伝えするのですが「それでもいい!」と。それからウルトラマン関連の試聴イベントはキングレコードとしても初でしたから、会場内に、『ウルトラマン大百科!』に始まる一連のレコードジャケットを展示したら、皆さん子供の頃に返ったかのように「懐かしい」と言ってくださって。
本誌:各部定員20~25名。オーディオショップでの開催だったそうですね。
中山氏:はい。オーディオの試聴会ということもあり、他のウルトラマン関連のイベントと比較するとあまり広い会場でなかったのですが、お越しいただいた皆様には贅沢な音楽体験ができた空間だったと思います。
本誌:平成世代の中山さんご自身にとって、『ウルトラマン』~『ウルトラマンレオ』の時代の音楽はどのように耳に響きますか。
中山氏:作品の色などを決定づける重要な要素として音楽があると感じています。おそらく役者の方々がどんなに精一杯演じても、そこに付随する音楽がイメージから外れたものであったのなら『ウルトラマン』の世界観は完成しなかったのではないでしょうか。世界観を形作る要因のひとつとして音楽が果たす役割は大きいと感じます。
本誌:イントロを聴いた瞬間に燃えたぎりますよね(笑)
桜井氏:確かに元気がでる! だから落ち込んだりした時には『ウルトラマン』のオープニングを聴くなんて人もけっこういるようですよ。
本誌:昨今のデスクトップで作られた音楽とは違う、リアルな演奏を収録した音楽、特にオーケストラはウルトラマン世界に肉感を与えます。
中山氏:大きく見ればウルトラマンも怪獣も異星人も生物であって、結局は人間ドラマだったりしますよね。だからそこに加わるドラマ音楽も同様に、人の感情を揺さぶったり高ぶらせるものだというのは納得がいきます。
本誌:桜井さんはもうこのSACDをお聴きになりましたか。
桜井氏:もちろん! ただ皆さんがおっしゃるように記憶が刺激されて熱くなるというのとは違って、こちらは出演側ですからもっと冷静。60年も経ったのか、なんだか元に戻ってる気がするな、と。特に『ウルトラQ』なんて誰か他人が演技してるような感覚(笑) 自分が10代の頃ですから俯瞰して見ちゃうんですよね。他者目線で「あ、よく芝居やってるな」とかそういう意味でね。『ウルトラマン』の頃、キャップがおっしゃってたけど、『音が入るとやっぱり俺たちかっこいいな』って自画自賛(笑) 逆に音が入らないと、たとえば「行くぞ!」って言われて、「はい!」って勇ましく歩くんだけど、「ダンダダダン、ダンダダダン」ってBGMや効果音が入らないとかっこがつかない。やっぱり音が入ることでドラマになるんですよね。
藤田氏:『ウルトラマン大百科!』のレコードが発売された時、音楽を聴くだけでもうあの5人が歩いているシーンが脳内再生されましたよ!
本誌:ホームビデオがなく、再放送を待つしかないという渇きを癒す砂漠のオアシス(笑)のようなレコードだったんですね。夏休み、冬休みの再放送が嬉しくて。再放送が頻繁だった時期もあったので、ウルトラマンシリーズの実際の放映順がごちゃまぜになって、いつもリアルタイムで観ている気になっていました。
桜井氏:そういう方は多いですよね。ただヒロインは歳を取るんですよ、作品自体と違って人間ですから(笑) でも生活感丸出しのオバちゃんになっちゃったら「なんだ」ってガッカリされるじゃない? 私個人はいいとしても、ウルトラシリーズに悪いっていう意識があるので、できることはやってます。
本誌:矢沢永吉さんの伝説的名言で「俺はいいけどヤザワはどうかな」ですね。自分とは違う、もう一つの存在として。
桜井氏:そうですね。ちゃんと由利ちゃんしなくちゃいけない、フジアキコ隊員でなくちゃいけない。でもそこに音楽が加わると、由利ちゃん、フジアキコ隊員になるんですよ。
本誌:なるほど! 音が役柄を形作ってくれる。
桜井氏:ピシッとハマるんですよね。
本誌:心・技・体ではないですけど、演技と映像、特撮、音楽という要素が奇跡的にいいバランスで噛み合ったんですね。
桜井氏:当時の人たちが全体を見つめていたからじゃないですか。円谷英二監督、円谷一監督、金城哲夫先生、それから宮内國郎先生も含めて。そして『ウルトラセブン』では冬木透先生がね。

(後編に続く)
文/前田賢紀
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