2026年9月から、労働基準監督署による残業時間の指導運用が見直され、「月45時間」を一律の基準とするのではなく、36(サブロク)協定や労働者の健康状態などを踏まえて総合的に判断する運用へと変わった。
株式会社スガワラくんはこのほど、全国の20歳以上60歳未満の正社員男女480名を対象に「残業ルール(月45時間)の運用見直し」に関する意識調査を実施し、その結果を発表した。
「月45時間」の見直し、認知は約4割
まず、「労働基準監督署による『残業月45時間ルール』の指導運用が見直され、条件を満たせば柔軟な残業が認められることを知っていたか」と聞いたところ、「よく知っていた」(12.3%)、「概要だけ知っていた」(29.6%)となり、内容をある程度把握している人は約4割(41.9%)となった。一方、「聞いたことがある程度」(27.9%)、「今回初めて知った(知らなかった)」は3割(30.2%)にも上った。
今回の見直しは働き方に関わる制度変更だが、6割近くが詳しく知らない、または知らなかったことから、制度の内容が十分に浸透しているとは言いにくい結果となった。
「もっと働きたい」は1割超、4割弱は減らしたい
「現在の労働時間(通常の勤務時間と残業時間)について、どのように感じるか」と聞いたところ、「今くらいの労働時間がちょうどよい」(48.5%)が最も多くなった。一方、「もっと労働時間を減らしたい」は4割弱(38.1%)で、「今よりもっと働きたい」は1割超(13.3%)となった。約半数は現在の労働時間を適正と感じている一方で、「減らしたい」人は「もっと働きたい」人の約3倍もいた。
45時間ルールの見直し、3人に2人が「賛成」
「今回の『残業月45時間ルール』の指導運用見直しについて賛成か反対か」を聞いたところ、「賛成」(16.0%)、「どちらかといえば賛成」(49.4%)となり、賛成派は6割(65.4%)を超えた。一方、「どちらかといえば反対」(24.4%)、「反対」(10.2%)で、反対派は3割超(34.6%)となり、約3人に2人が運用見直しに賛成という結果になった。
賛成の理由は「繁忙期の柔軟な働き方」、反対は「長時間労働容認への懸念」が最多
運用見直しに賛成した人に、その理由を聞いたところ、最も多かったのは「業務量が集中する時期に柔軟な働き方ができるため」(37.6%)で、次点は「働く時間の選択肢が増え、収入を増やしやすくなるため」(35.7%)となり、それぞれ3割を超えた。また、「持ち帰り仕事やサービス残業(隠れ残業)の解消につながるため」も2割(20.4%)となった。
これらのことから単純に残業時間を増やして稼ぎたいだけでなく、仕事量に応じて働く時間を柔軟に調整したい、働いた分を適正に評価してほしいという意識が、賛成理由として表れた。
一方、運用見直しに反対した人では、「会社側が『長時間労働の容認』と誤解して労務管理を緩める恐れがあるため」(38.0%)が最多となった。次いで「職場全体の残業時間が長期化・固定化する懸念があるため」(29.5%)、「過労や健康障害(メンタル不調など)のリスクが高まるため」(16.9%)、「会社や上司からの残業指示を断りにくくなるため」(15.1%)となった。
これらのことから、反対派は、制度そのものよりも、企業が「残業を増やしてもよい」と誤って受け止め、長時間労働が常態化することを警戒しているということがわかった。
「残業のルール変更」をわかりやすく解説
2026年9月から、残業時間に関する労働基準監督署の指導のあり方が見直された。「月45時間以上の残業が解禁される」「残業を増やしてもよくなった」と受け止める人もいるが、これは正確ではない。
現行のルールでは、時間外労働の限度時間は原則「月45時間・年360時間」だ。今回変わったのは法律そのものではなく、労働基準監督署が企業を指導する際の運用だ。これまでのように「月45時間を超えているか」だけでなく、36(サブロク)協定の内容や労働者の健康状態、職場環境なども踏まえて判断されるようになる。
そこで、今回の変更が企業や働く人に与える影響について、わかりやすく解説する。
■「月45時間」の本当の意味
これまで労働基準監督署が企業を指導する際、「月45時間を超えているか」は重要な目安の一つだった。例えば、月60時間の残業が発生していれば、「月45時間以内に抑えるように」と指導されるケースがある。
今回、この45時間という数字自体がなくなったわけではない。指導の際に、45時間を超えたかどうかだけで一律に判断するのではなく、36(サブロク)協定や健康状態、職場環境なども含めて判断するようになるということだ。
■「45時間の壁」が緩む影響
人手不足や業務量が変わらないまま残業抑制が弱まれば、これまで以上に残業をして仕事を終わらせるケースが増える可能性がある。
また、これまで45時間を超えないように仕事を持ち帰ったり、サービス残業となっていた場合には、実際の労働時間が表に出てくる可能性もある。ただし、今回の変更によって企業が自由に残業を増やせるわけではない。
■残業は「本人の自由」ではない
残業は、従業員が自分の判断だけで自由に決めるものではなく、基本的には会社の指示や管理のもとで行われる。会社には、誰がどれくらい働いているのかを把握し、長時間労働になっていれば業務量や働き方を見直すことが求められる。
また、残業申請をせずに残業を行っていたとしても、「申請をしていないから残業代を払わなくても良い」というわけではない。実際に会社の指示や管理のもとで働いていたのであれば、残業代の支払いが必要になる場合がある。
■「もっと働きたい」人は13%
今回のルール変更を考えるうえで、忘れてはいけないのが、働き方に対する考え方は人によって異なるということだ。
今回の調査では、「今よりもっと働きたい」と考える人が13.3%、「今くらいの労働時間がちょうどよい」が48.5%、「もっと労働時間を減らしたい」が38.1%という結果だった。
「もっと働いて収入を増やしたい」「仕事をたくさん経験したい」と考える人にとっては、働く時間の選択肢が広がる場合もある。一方で、労働時間を減らしたい人や、今くらいがちょうどよいと考える人にとって、職場全体で残業が増えることは必ずしも歓迎できない。
だからこそ、「働きたい人がいるから残業を増やせばよい」という単純な話ではない。会社は従業員一人ひとりの事情や健康面にも配慮しながら、適切に労働時間を管理することが大切だ。
■長時間労働の解禁ではない
今回の変更は、企業に長時間労働を無制限に認めるものではない。36(サブロク)協定や労働時間の上限を守ること、従業員の健康に配慮すること、適切に残業代を支払うことは、これまでと同様に重要だ。「45時間のルールがなくなった」と誤解するのではなく、今回の変更が実際の働き方にどのような影響を与えるのかを正しく理解することが大切だ。(解説/菅原 由一氏)
<菅原 由一氏プロフィール>
1975年、三重県生まれ。東京都在住。お客様を黒字に導く節税と資金繰りの専門家。2022年12月に開設したYouTubeチャンネル『脱・税理士スガワラくん』は、登録者数178万人を突破。
ブログ 『脱!税理士 菅原のお金を増やす経営術!』は全国税理士ブログランキング第1位を獲得し、アメブロ【公式】トップブロガーに選任。講演実績は、Google、アパホテル、リコージャパン、ロバートキヨサキなど上場企業、外資系企業も含め1,000回を超え、各メディアからの取材も多数受ける。
書籍『究極の資金繰り』『激レア資金繰りテクニック50』(共に幻冬舎)は、累計3.7万部のベストセラーとなる。2024年2月22日に『タピオカ屋はどこへいったのか? 商売の始め方と儲け方がわかるビジネスのカラクリ』を発売。刊行から1年で累計発行部数12万部を突破。
<調査概要>
調査期間:2026年9月8日
調査手法:インターネット調査
調査対象:20歳以上60歳未満の会社員(正社員)の男女全国
サンプル数:480名(5歳刻みに男女各30名の均等割付)
調査機関:Freeasy
出典元:脱・税理士スガワラくん 調べ
構成/こじへい




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