コーポレートBSの受容性を測定

これを検証するためリトレル氏はたとえば「ゆりかごから墓場までを網羅する新たなレベルの信任を実現します」や「最良の実践例を友人たちと共有することで、新たなレベルの適応的一貫性を検証します」などといった、ほとんど意味はないが印象的な文言のコーポレートBSをAIで生成して数多く用意した。
その後、調査に参加した1000人以上のオフィスワーカーに、AIで生成されたこれらのコーポレートBSの「ビジネスセンス」を、フォーチュン500企業のリーダーたちの実際の発言と並べて評価するよう求めた。
4つの異なる研究に分かれたこの調査では、この尺度がコーポレートBS受容性の個人差を統計的に信頼できる方法で測定できることが確認された。さらに確立された認知テストを用いて、コーポレートBSに対する受容性と、職場でのパフォーマンスに不可欠とされる分析的思考スキルとの関連性を明らかにした。
調査結果は厄介な矛盾を明らかにするものであった。
コーポレートBSに惑わされやすい従業員は、上司をよりカリスマ性があり「先見の明がある」と評価したが、分析的思考、認知的考察、流動性知能を測る調査項目では低いスコアを示した。
またコーポレートBSを受け入れやすい従業員は、職場での効果的な意思決定能力を測るテストでも著しく低いスコアを示した。つまりコーポレートBSに感化され上司に心酔している者は良いリーダーにはなれそうもないのである。
調査によるとコーポレートBSに惑わされやすい者は、仕事への満足度や企業理念に感銘を受ける度合いも高いことが分かった。さらに企業の建前論に騙されやすい者は、それを広める傾向も高いこともまた明らかになった。
そして企業の“先見的な”コーポレートBSに感激し感銘を受ける従業員は、自社にとって効果的で実践的な経営判断を下す能力が低い可能性があり、つまるところ企業文化や社風に強く染まっている社員ほど皮肉にも能力が低いケースが多いということになる。
自問自答する批判的思考が重要
「これは憂慮すべき悪循環を生み出します」とリトレル氏は指摘する。
「コーポレートBSに感化されやすい従業員は、そうした嘘をつきやすい機能不全なリーダーの地位向上を助長し、一種の負のフィードバックループを生み出す可能性があります。『潮が満ちればすべての船が浮かぶ』というよりは、組織におけるコーポレートBSのレベルが高いほど、非効率性の詰まったトイレのような働きをするのです」(リトレル氏)
つまりコーポレートBSの美辞麗句に毒された組織は効率性を欠いていき、真に優れたリーダーを生み出せなくなってくるのだ。
「相互担保のシナジー効果」というような表現は役員会では印象的に聞こえるかもしれないが、実際にはこのような誤解を招くような言葉遣いは、企業文化において粉飾や隠蔽を生み出し、企業を評判や財務上の損害にさらすネガティブな影響を及ぼす可能性があることが今回の研究で示唆されている。
リトレル氏の尺度は実用的な応用が可能であり、将来的には求職者の分析的思考力や意思決定能力に関する洞察を提供する可能性を秘めている。さらなる研究が必要だが、現時点では研究者にとって有望なツールであるとリトレル氏は自負している。
ともあれコーポレートBSの研究は職場内外を問わず、すべての者にとって批判的思考がいかに重要であるかを示している。
「従業員であれ消費者であれ、組織のメッセージに出会ったときは、少し立ち止まって『一体何が主張されているのか? 本当に理にかなっているのか?』と自問自答する必要があるのです。メッセージが流行語や専門用語に大きく依存している場合、それは現実ではなくレトリックに惑わされているという危険信号であることが多いのです」(リトレル氏)
流行語や新語は社会的にも注目を集めるし、使ってみたくなるのも人情だが、その現象の背後にはさまざまな思惑が横たわっているのだと予め見込んでおいてもよいのだろう。
※研究論文
https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0191886926000620
※参考記事
https://phys.org/news/2026-03-workers-synergizing-paradigms-bad-jobs.html
文/仲田しんじ
些細な失態の後にどう振る舞うのか 人通りの多い路上を歩いていてつまずいたり、ペットボトルのドリンクを飲んでいる時にむせて吹き出してしまったり、ズボンのファスナー…







DIME MAGAZINE













