カスタマーハラスメントで心が沈むのは、あなたが弱いからではありません。相手の心理的背景や、心に刺さりやすい理由を整理しつつ、つらさから回復するための3つの視点を紹介。自分を責めずに心を守るヒントを解説します。
「お客様は神様」なんて、誰が言い出したのだろう。理不尽な怒りや執拗な要求を受けたとき、そんなふうに思ってしまうことは、ありませんか。
最近では、過剰なクレームや人格否定のような言葉を「カスタマーハラスメント(通称カスハラ)」と呼び、企業や社会の中でも少しずつ対策が進んできました。
けれど、カスハラのあとに残る「なんとも言えないモヤモヤ」や、「ふとした瞬間に思い出してつらくなる感じ」に、どう向き合えばいいのか分からず、戸惑うこともあるのではないでしょうか。
この記事では、カスハラによって心に起きやすい反応を整理しながら、そこから少しずつ立ち直っていくためのヒントをお伝えします。
カスハラが「心に刺さる」理由
例えばこんな経験、思い当たりませんか?「何度も謝っているのに、延々と怒られ続けた」「対応は間違っていないはずなのに、どこかずっと引きずってしまう」。どうしてあんなにしんどく感じるのか。その理由を見ていきましょう。
(1)相手の怒りが、危険なものとして心に残る
強い口調や威圧的な態度を向けられると、私たちの心はとっさに「危ない」と判断します。
とくにカスハラは、いつ怒りが爆発するかわからない“予測のつかなさ”があり、これが強いストレスになります。対応が終わったあとも気が張ったままで、心が休まりにくくなります。
(2)真面目な人ほど、自分を責めやすい
普段から丁寧に仕事をしている人は、うまくいかなかった場面でまず自分を振り返ろうとします。本来は相手の態度に問題があっても、「もっと上手にできたかもしれない」「自分のどこかに落ち度があったのかな…」と、自分を責めてしまう方も少なくありません。
(3)感情を押し込んだ分だけ、あとで疲れる
対応中は笑顔を保ち、冷静に話すために感情をぐっと抑えていることも多いものです。その緊張の反動で、あとになって心がどっと疲れたり、気分が沈んだりすることがあります。とくに反論できなかった悔しさが残ると、同じ場面を何度も思い返してしまうこともあります。
カスハラをする人の心理3つ

カスハラの言葉をそのまま「自分への評価」として受け取ってしまうと、必要以上に傷ついてしまいます。けれど、相手がなぜそうした言動をするのか、背景を知っておくだけで「これはこの人の問題」と線引きしやすくなります。ここでは、カスハラに見られる代表的な心理を3つ紹介します。
(1)ストレスをぶつけられる“安全そうな相手”を探している
カスハラの中には、家庭や職場など、まったく別の場所でたまったストレスや不満が、対応者に向けられてしまうケースがあります。そのため、本題と関係ない不満を長々と話したり、理不尽に感情的になったりすることがあります。
(2)“自分が正しい”と信じ込み、優位に立とうとする
「自分の言い分こそ正しい」「相手が間違っている」と思いこむ心理が強いタイプです。優位に立つことで安心したい気持ちが背景にあるため、声を荒げたり、強い言葉で責めたりすることがあります。「お客様が上」という古い価値観を引きずっている人も少なくありません。
(3)得をしたい(有利に進めたい)
返金・値引き・特典獲得など、「得をしたい」動機で強い要求をしてくるケースもあります。あるいは、「SNSに晒す」など、脅しに近い言葉で相手を揺さぶり、状況を自分に有利に動かそうとする人もいます。感情をぶつけているようで、実は目的が先にあることもあるんですね。
スハラ後のモヤモヤが続くときに、試してほしい3つのこと
嫌な場面が頭から離れなかったり、思い出すたびに気分が沈んだり。カスハラのあとは、そんなモヤモヤがしばらく続くことがあります。ここでは、そんなときに気持ちの整理に役立つ3つの方法を紹介します。
(1)事実と気持ちを分けて書いてみる
モヤモヤしているとき、頭の中ではいろんな気持ちや記憶がぐるぐる混ざってしんどくなりがちです。そんなときは、ノートやスマホのメモに「事実」と「気持ち」を分けて書き出してみてください。
たとえば「事実:〇〇と言われた」「気持ち:驚いた/悔しかった/怖かった/納得いかなかった」など。そして、「あの人ひどすぎる」といった本音も、遠慮なく書いてみましょう。怒りも、悔しさも、言葉にして外に出すことで、少しずつ落ち着いていくものです。
(2)そのときの自分を、ねぎらってあげる
カスハラのあと、「もっとできたかも」「うまく返せなかった」と自分を責めてしまう人は少なくありません。けれども、たとえうまく話せなかったとしても、混乱したとしても、あの場を乗り越えたこと自体、充分すごいことなのです。「怖かったけど、よく耐えたね」と、ねぎらってあげましょう。そうすることで、少しずつ気持ちがやわらいでいくことがあります。
(3)ひとりで抱え込まず、誰かに話してみる
つらい気持ちをずっと自分の中に抱えていると、心が疲れてしまいます。そんなときは、信頼できる人に「ちょっと話してもいい?」と、すこしだけ打ち明けてみてください。「実はちょっと、理不尽なことがあってね…」たった一言でも構いません。口にするだけで、気持ちがふっと軽くなることがあります。
自分を責めずに、味方になろう
カスハラのあと、「もっとできたはずだった」「あんな対応しかできなかった」そんなふうに自分を責めてしまうのは、めずらしいことではありません。でも、それだけ真剣に向き合っていたという証拠です。
理不尽な言葉に心が傷つくのは、ごく自然な反応です。そんなときは、相手の心理や背景を知ることで、「これは私の価値とは別の話だったんだ」と思えることがあります。完璧ではなかったとしても、あの場を懸命にやり過ごした自分がいます。
どうかその自分に、「よくやったね」と声をかけてあげてください。落ち込んだときほど、自分のいちばんの味方でいてあげましょう。
構成/高見 綾
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