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「ボヘミアン・ラプソディ」の音質No.1はどれ?3種類のアナログ盤を徹底検証

2025.11.29

“70年代ロック名曲トップ10”なる企画があれば、レッド・ツェッペリンの「天国への階段」、イーグルスの「ホテル・カリフォルニア」と共に、間違いなくランク・インすると僕が確信するクイーンの「ボヘミアン・ラプソディ」。この曲を収録するアルバム『オペラ座の夜』発売50周年を記念した3種類のアナログ盤がこの11月に発売された。

LPレコード『オペラ座の夜』(税込6930円)、12インチシングル「ボヘミアン・ラプソディ」(同4400円)、7インチシングル「ボヘミアン・ラプソディ」(同3300円)だ。

50周年記念LP『オペラ座の夜』。

最大の関心は、どの「ボヘミアン・ラプソディ」の音が一番いいか

アナログ盤もずいぶん高くなったものだと、日本盤LPが2000円で買えた高校時代(1970年代前半)が懐かしいが、それはさておき、僕はクイーンの初来日以降、来日するたびにコンサートに出かけたほどのクイーン・ファンだ。そのあたりのことは、映画『ボヘミアン・ラプソディ』公開時に@ダイムに書いた記事を読んでいただけるとありがたい。

クイーンの語り尽くせない魅力を語り尽くす!

 映画「ボヘミアン・ラプソディ」が、大ヒットしている。この原稿執筆時での興行収入が、約64億円(約467万人動員、12月24日時点)。あの「シン・ゴジラ」が約8…

「東芝EMI洋楽部の輝ける日々」/森俊一郎 著(シンコーミュージックエンタテイメント)。

ついでに自慢話を披露する。1992年にロンドンで開かれたフレディ・マーキュリーの追悼コンサートにも出向き、当時所属していた『ビッグコミック スピリッツ』の巻頭グラビアでレポートした。その取材を設定してくれた東芝EMIのクイーン担当ディレクター、森俊一郎氏が執筆した単行本「東芝EMI洋楽部の輝ける日々」の巻頭カラー5ページ目下半分に、取材チームとして福田一郎氏や東郷かおる子氏他とともにロンドンの街を歩く僕の姿が掲載されている。半分上がドラムを叩くロジャー・テイラー、反対ページ(4ページ目)は日本の国会議事堂をバックにしたロジャーとジョン・ディーコンの2ショット。なんと光栄な見開きページだろう。森さん、ありがとう。

50周年記念7インチシングル「ボヘミアン・ラプソディ」。

さて、本題。当然のこととして購入した3種類の50周年記念レコード。レコードの音質オタク(=マトリクス1レコードのコレクター 一番音がいいとされるレコードがマトリクス1でマトリクス1についてはこちらの記事を参照)たる僕の最大の関心は、どの「ボヘミアン・ラプソディ」の音が一番いいかだ。

推定では、盤が12インチでレコードの溝を広く取れて回転数も45回転の12インチシングルが一番よく、7インチとLPの甲乙は聴いてみないとわからない、となる。まずはLPを聴くと、音としては悪いとは言わないが良いとも言えない。7インチシングルは、LPと変わらない気がする。何度も聴き比べれば違いがわかってくるかもしれないが、大差はないと言っていいだろう。ところが12インチとなると案の定、一変する。音のメリハリ、音場の広がり、楽器の輝き、明らかに優れている。LPと7インチを5段階評価の3とすれば、4、いや4+くらいの違いがある。

アナログレコードの迷宮〝マト1〟の世界

■連載/元DIME編集長の「旅は道連れ」日記  アナログレコードがブームだと言われている。しかもブームの中心は、デジタル世代の若者のようだ。CDが登場したのは1…

50周年LPのレコードは透明。
40周年LPのレコードは黒。
50周年LPと40周年LPの内袋。録音クレジットは同じで、マスタリングは名匠ボブ・ラディックだ。

では今度は50周年のLPと2015年におそらく40周年を記念して発売されたLP、そして1975年発売のLPとしては一番音がいいはずのUKマトリクス1(以降、マト1)を聴き比べてみよう。40周年と50周年は内袋にある録音クレジットが全く同じなのでマスターは同じ、違いは50周年は透明盤で40周年は黒盤で180g重量盤と、レコード盤だけと考えていいだろう。ただし測ったわけではないが、50周年も180gとは謳っていないもののかなり重い(比べるとUKマト1は相当軽い)。

比較試聴すると、40周年の方が50周年より音がいい気がする。あくまでも気がするレベルだ。もう一度聴くと50周年の方がいい、いや互角だとなるかもしれない。しかしUKマト1はレベルが違う。何度聴こうと、誰が聴こうと、圧倒的にUKマト1がいいと評価するはずだ。フレディのヴォーカルひとつとっても、声が瑞々しく若々しい。40・50周年を3と評すれば4+、いや5と言ってもいい。『オペラ座の夜』UKマト1は中古市場ではあまり高くなく、コンディション良好盤でも1万円前後で手に入る。音にこだわるなら、6930円の新品50周年より中古UKマト1がお勧めだ。

50周年記念12インチシングル「ボヘミアン・ラプソディ」。

続いてこのUKマト1と50周年12インチシングルを聴き比べて驚いた。UKマト1の圧勝と思っていたが、イントロからして歴然、12インチの方が圧倒的にいい。12インチのマスターも40・50周年と同じ(もちろん7インチも)はずだが、溝を深く広くカッティングするとこうも違うということだろうか? UKマト1が5なら、こちらは6+くらい音がいい。「ボヘミアン・ラプソディ」(B面は「アイム・イン・ラヴ・ウィズ・マイ・カー」)さえいい音で聴ければいいならLPは不要、4400円の12インチを買いたい。このマスターを使って、『オペラ座の夜』収録の名曲、「マイ・ベスト・フレンド」と「ラヴ・オブ・マイ・ライフ」を12インチシングルで出してくれないかな。

40周年記念12インチシングル「ボヘミアン・ラプソディ」。

一番音のいい「ボヘミアン・ラプソディ」の“掟破りの録音”とは?

こうなると50周年12インチシングルが、一番音のいい「ボヘミアン・ラプソディ」なのか? ここで切り札を登場させよう。僕が一番いい音だと信じてきた「ボヘミアン・ラプソディ」、2015年に40周年記念として12インチシングルで発売された7465枚限定のEU盤だ。1980年代前半の『FMレコパル』編集部在籍時からの僕のロックとオーディオの師匠、音楽/オーディオライターの岩田由記夫さんと開催しているレコード聴き比べの会「レコードの達人」でも聴いて、参加者がUKマト1よりも遥かに素晴らしい音に“耳”を見張った最強の「ボヘミアン・ラプソディ」だ。岩田さんによると“掟破りの録音”、つまり通常では行わないリミッターいっぱいいっぱいまで音を入れたからこその轟音とのことだ。

40周年12インチのレコード盤。
50周年12インチのレコード盤。

この2枚はともに12インチシングル。40周年は黒盤で50周年は透明ブルー盤と、色が違うが、もう1点違いがある。溝の終わりからレーベルまで(録音されていない部分)が、50周年は約36ミリで40周年は約40ミリだ。つまり50周年の方が1本1本の溝がより広く深い(録音スペースが大きい)ので、理論上は50周年の方が音的に有利ということになる。よって予想では50周年の勝利だ。40周年は聴き比べの会でUKマト1を凌駕したように目から鱗の良音、素晴らしい録音と記憶するが、しばらく聴いていない。50周年には及ばないだろうと思った。

ところがどっこい(←昭和の死語でしょうか?)、天を仰ぐほどに40周年の方がいい音だ。日本人大リーガーで言えば、“松井は凄かったが、では大谷は?”くらいの違いか。UKマト1と50周年の差どころではない。50周年を6+としたら40周年は10、いや比較すべき対象ではないと言ってもいいだろう。ヴォーカルが、ギターが、ドラムが、ベースが、音場が、メリハリが、と言葉で述べても意味はなく、百聞は一“聴”にしかずだ。  

40周年12インチ盤の中古市場相場は、コンディション良好盤で1万円ほど。アナログ派で「ボヘミアン・ラプソディ」を愛する方なら1万円は決して高くはない。

文/斎藤好一

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