紙の手形・小切手は、業務の非効率性、セキュリティリスク、利用枚数の減少を主な理由に廃止されます。代替手段として、手続きが簡便で安全性の高い「電子記録債権」への移行が推進されます。2025年9月末にほとんどの金融機関で手形・小切手の発行受付が終了し、2027年3月末には交換が廃止となる予定です。
目次
長年ビジネスを支えてきた「紙の手形や小切手」が廃止されます。
日本の商習慣に根付いていた手形や小切手はなぜ廃止されるのでしょうか?
また、今後のスケジュールはどのようなものになっているのでしょうか?
【FAQ】方式でわかりやすく説明します。
紙の手形・小切手廃止とは?
紙の手形・小切手が廃止されるのは、非効率な業務の解消、セキュリティリスクの低減、そして利用枚数の大幅な減少が主な理由です。
特に中小企業の業務を効率化して、経営の安全性向上を図る電子化への移行についてご説明します。

■Q:紙の手形や小切手廃止されるのはなぜ?
A:紙の手形と小切手の廃止は、大きく分けて3つの理由があります。
1つは、業務の非効率性を解消するためです。
紙の手形や小切手は、発行から受け取り、そして現金化まで、多くの手間と時間を要します。
特に、手形を現金化するためには、指定の銀行に持ち込んで手続きをします。また、期日よりも前に現金化したい場合は、金融機関や手形割引業者へ持ち込みます。
その作業は、特に中小企業の担当者にとって大きな負担となっていました。
もう1つの理由は、セキュリティリスクの低減です。
紙媒体である手形や小切手は、紛失や盗難、偽造などのリスクを常に抱えています。
これらのリスクは、企業の財務に深刻な影響を与える可能性があります。
電子化することで、これらのリスクを大幅に減らすことが期待されています。
さらに、もう1つの理由は紙の手形や小切手の利用枚数の減少です。
1979年には約4億4000万枚程度の利用がありましたが、2024年には約20分の1の1967万枚まで減少しています。
利用の減少と電子化への潮流を受けて、紙の手形・小切手が廃止されることになります。
■Q:廃止されるとどうなる?
A:紙の手形・小切手が廃止されると、その代替として「電子記録債権」が主流となります。
これは、手形や小切手の問題点を克服する電子データであり、インターネットバンキングなどを通じて取引きでる金銭債権です。

引用:電子記録債権とは – でんさいネットhttps://www.densai.net/about/academy/origin/
電子記録債権は、「でんさいネット」という電子債権記録機関を利用することで、より安全かつスムーズな取引が可能になります。
これにより、これまで現金化に要していた時間が大幅に短縮され、資金繰りの改善にもつながります。
【参考】でんさいネット
紙の手形・小切手廃止までの具体的なスケジュール
紙の手形・小切手廃止は企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)を後押しするため、経理業務の効率化を目指して実施されます。
正式な廃止日は2027年3月末となっており、そのスケジュールについてもご紹介します。
■Q:なぜこのタイミングで廃止されるの?
A:廃止されるのは、政府が掲げる「デジタル社会の実現」と「中小企業の生産性向上」という2つの大きな目標に基づいています。
特に、中小企業庁は、中小企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進しており、紙の手形・小切手はその障壁の1つとなっていました。
電子化は、取引の迅速化だけでなく、企業の経理業務全体の効率化にもつながるため、中小企業の成長を後押しする重要な一歩と位置づけられています。
■Q:廃止の正式な日程はどうなってる?
A:2027年3月末までに紙の手形・小切手の交換が廃止されます。
【参考】紙の手形・小切手利用廃止へ | 一般社団法人 全国銀行協会
それに先立ち、ほとんどの金融機関では2025年9月末に発行受付が終了となります。
例えば、三菱UFJ銀行の場合、2024年1月4日以降に開設した当座勘定は、手形・小切手の発行受付を行っておりません。
そして、2025年9月30日(火)で、利用中の当座勘定を対象に手形・小切手の発行受付を終了します。
また、他行を支払地とする手形・小切手の預金入金も2026年3月31日で受付を終了します。
【参考】手形・小切手の全面的な電子化に向けた取り組み|三菱UFJ銀行
ほかにも、三井住友銀行では、2025年9月30日に手形・小切手の発行受付終了し、2026年9月30日に他行を支払地とする手形・小切手の預金入金扱い受付を終了する予定。
そして、2027年4月1日をもって、手形・小切手の取立受付を停止する予定となっています。
詳しくは、ご利用の金融機関のホームページなどでご確認ください。
【まとめ】
ここまで、紙の手形・小切手の廃止について、その理由やスケジュールをご紹介してきました。
長年にわたって使ってきたみなさんには、ちょっと寂しい気持ちもあるかもしれません。
しかし、今回の廃止は、単なる決済手段の変更ではなく、企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)を加速させるチャンスとなり得ます。
紙の手形や小切手は、発行や受け取り、現金化に多くの手間と時間、さらには紛失や偽造といったリスクを伴っていました。
これからのビジネスでは、こうした非効率な業務から脱却し、「電子記録債権」へのスムーズな移行が求められます。
この移行は、経理業務の効率化だけでなく、資金繰りの迅速化、安定化やセキュリティリスクの低減につながるものです。
手形や小切手の利用がなくなることで、これまでそこに割いていたリソースを、より生産性の高いコア業務へと振り分けてみてはいかがでしょうか?
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文/中馬幹弘
編集/ライター。慶應義塾大学卒業後、野村證券にて勤務。アメリカンカルチャー誌編集長、モノ情報誌編集を歴任







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