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社会人なら知っておきたい「約束手形」の基礎知識

2023.03.19

『約束手形』という言葉自体は聞いたことがあるものの、実際何なのかは分からないという人も少なくないでしょう。約束手形の基本知識や使い方、他の決済方法との違いについて解説します。また、メリット・デメリットについても見ていきましょう。

そもそも約束手形って何?

そもそも、約束手形とはどんなものなのでしょうか?まずは、約束手形の基本から使用条件、今後の国の方針まで解説します。

つけ払いをするための手形のこと

約束手形とは決済手段の一つで、簡単にいうと『つけ払い』をするために利用するものです。

約束手形を渡す『振出人』が、支払期日・金額を書いた約束手形を『受取人』に渡すことで、決済が完了します。受取人は支払期日に手形を持って金融機関に行き、現金化するのが約束手形の決済方法です。

取引成立時に手元にお金がなくても決済ができる方法として、ビジネスでは広く利用されています。なお、万が一支払期日に振出人の口座に残高がなかった場合は、約束手形は『不渡り』となり代金を受け取ることはできません。

支払期日は30~120日以内が一般的

約束手形の振出日(手形や小切手が振り出された日)から支払期日までの期間を『手形サイト』といい、この期間は振出人・受取人の合意により設定されます。30日単位で、30〜120日の間で設定されるのが一般的です。

振出人が親事業者で受取人が下請業者など、上下関係がある場合に受取人が損をしないよう、下請取引においては最大120日と定められています。

しかし近年では、中小企業庁より『60日以内』へ短縮が求められるなど、速やかな支払いがスタンダードになっています。

ただし、双方が合意した場合においては、長期の手形サイトも設定可能です。速やかな支払いをよしとする時代の流れに逆行していることもあり、あまり見る機会はないものの、210日・300日・1年など双方の合意次第では長期の設定をすることもできます。

参考:中小企業庁:下請代金の支払手段について

約束手形は2026年に廃止予定

約束手形は、2026年をめどに廃止される方針となっています。その主な理由は、受取人にとって不利な条件が多いためです。

通常の振込決済に対し、約束手形で決済した場合に受取人がお金を受け取れるまでの期間は、平均して2倍かかるとされています。

受取人が自社のサービス・商品を提供してから、現金を手に入れるまでの期間が長くなればなるほど、資金繰りは厳しくなります。このような受取人の負担が大きくなる仕組みが問題視され、廃止の方向に進んでいるのです。

また、約束手形用紙の発行が、ペーパーレス化が推進されている現代にはそぐわないという側面もあります。約束手形の用紙だけでもかなりの紙が使われているため、廃止することで環境負荷軽減も実現します。

今後は、新たな金銭債権である『電子記録債権(でんさい)』への移行が進んでいくでしょう。

約束手形と他の決済方法との違いは?

サインする手元

(出典) photo-ac.com

約束手形に似たような決済手段として、小切手・為替手形・買掛の3種類があります。約束手形とこれらの決済方法との違いについて、詳しく説明します。

小切手との違い

小切手も約束手形も、用紙に支払期日・金額を書いて受取人に渡すという手順は同様ですが、現金化できるタイミングが大きく異なります。

約束手形は用紙に記載した期日になってから現金を受け取れるのに対し、小切手は『受け取った日からいつでも換金が可能』です。そのため、小切手を振り出す際には、口座に小切手に記載した金額よりも多く預金があることが条件となります。

注意点として、小切手には使用期限が設けられています。小切手を『受け取った翌日から10営業日以内』に換金をしないと、無効になりただの紙切れとなってしまうため、換金のタイミングには注意が必要です。

なお、使用期限の最終日が休日であれば、翌営業日まで持ち越されます。

参考:中小企業庁:「夢を実現する創業」問16

為替手形との違い

約束手形が振出人・受取人の2者間での取引であるのに対し、為替手形は振出人・支払人・受取人の3者間での取引に使われます。

例えば、A社がB社から製品を仕入れ、C社に販売するとします。この場合、C社からA社に、A社がB社に代金を支払うのが通常の形です。

しかし、これをC社からB社に直接支払ってもらおうというのが為替手形です。このパターンでは、A社が振出人・B社が受取人・C社が支払人となります。

ただし、為替手形は一般的な商用取引で使われることはほとんどなく、輸出入などのケースで用いられることが多いようです。

買掛との違い

買掛も約束手形と同じように、代金を後から支払う決済方法です。ただし、買掛は約束手形のように用紙を発行することもなければ、金融機関に現金化しに行くこともありません。

債務者から債権者へ直接振込・現金払いなどで支払うもので、期日の設定・支払い方法もないのが買掛です。なじみの飲食店でつけ払いをするイメージで、支払者への信用が担保となります。

約束手形は不渡りになったとしても、金融機関に取立を行うことができます。しかし、買掛の場合は裁判などの法的な手段で、代金を回収をしなければなりません。

約束手形よりも気軽である分、代金を回収できないリスクが高まる可能性があることを覚えておきましょう。

約束手形の使い方

握手するビジネスマン

(出典) photo-ac.com

ここでは、約束手形の実際の使い方について説明します。約束手形を使うには、振出人も受取人もそれぞれやるべきことがあるため、把握しておきましょう。

取引の流れ

まずは、取引の流れについて知りましょう。約束手形を使った取引は、次のような流れになります。

  • A社がB社に対して、サービス・商品を販売する
  • B社が振出人として、受取人A社に約束手形を振り出す
  • 振出人B社は合意した期日までに、代金を自社の当座預金口座に入金する
  • 受取人A社が支払期日に金融機関に行き、取立の依頼を行う
  • 振出人B社の口座から代金が引き落とされ、受取人A社に入金される

A社とB社の間で支払期日を定めたら、その期日をもとに手形を発行し、期日になったら受取人が銀行で換金するというのが通常の手順です。

裏書譲渡のやり方

裏書譲渡とは、手形の受取人が裏側に必要事項を記入することで、その手形を第三者への支払いに充てられるというものです。

例えば、A社がB社から100万円分の商品を購入し、100万円の約束手形を発行したとします。その手形を受け取ったB社が、後日C社から同じく100万円の商品を購入したとしましょう。

この際B社が、A社から受け取った手形に裏書をして、C社に譲渡することが可能という仕組みです。こうすることで、B社は直接C社に支払いをする必要がなくなります。

ただし、手形の金額変更はできないため、手形のうちの一部を渡すということはできません。振出人から受け取った額を全額譲渡することになるので、裏書譲渡を行う際には注意が必要です。

手形割引のやり方

手形割引とは、支払期日前に手形を現金化することです。約束手形は通常、期日前の決済はできませんが、金融機関・手形割引業者に手数料を支払った上で、手形を買い取ってもらうことが可能です。

期日に現金化する場合に比べて、受け取れる金額は手数料分少なくなりますが、すぐに現金が欲しい場合や資金繰りの調整などに使われます。

手数料は買取先や期日までの日数によって異なるため、手形割引を行いたい場合は事前に確認しましょう。

約束手形のメリット

印鑑を押す手元

(出典) photo-ac.com

約束手形を使用することで、どのようなメリットがあるのでしょうか?約束手形の二つのメリットを紹介します。

支払期日を延長できる

約束手形の大きなメリットとして、手元にお金がなくても取引を進められる点が挙げられます。支払期日まで猶予があるため、その間にキャッシュフローを整えることができます。特に資金繰りが厳しい会社にとっては、有効な手段です。

また、資金を調達するまでの時間が稼げるため、高額取引が可能になるのもポイントです。金融機関から借り入れをすると、利息がかかります。

しかし約束手形であれば、手元に資金のない状態で新しいビジネスに取りかかれるため、会社の可能性を広げることができるでしょう。

信用度の高い決済方法である

約束手形は誰でも発行できるものではなく、銀行の与信審査をパスして、当座預金口座を開設する必要があります。そのため、『約束手形を発行できる=社会的信用が高い』という印象を与えられます。

口約束の意味合いが強く、未納分を回収するには裁判を起こさないといけない買掛に比べ、約束手形は信用度の高い決済方法といえるでしょう。

代金回収の確実性が高いことから、取引先に受け入れてもらえる可能性が高い点は、約束手形のメリットです。

約束手形のデメリット

電卓をたたく男性

(出典) photo-ac.com

最後に、約束手形のデメリットについても解説します。約束手形の使用を検討している場合は、メリット・デメリットの両方を理解した上で、自社のビジネスにおいて最適な手段を選択しましょう。

不渡りになると信用を大きく損ねる

約束手形は信頼性が高い分、不渡りを出してしまうと、金融機関・取引先のどちらからも会社の信頼を大きく損なうことになります。

1度でも不渡りを出すと、不渡り処分を受けた旨が全金融機関に通達されるため、会社の評判は著しく下がってしまうでしょう。

さらに、6カ月以内に2度の不渡りを出した場合には、銀行取引の停止・当座預金取引と融資の2年間停止の処分が下されます。銀行を使った取引ができなくなるため、事実上の倒産です。

正しく使用しないと会社を窮地に追い込む原因になり得るため、きちんとルールを守った上で活用することが大切です。

受取人にとって不利な条件が多い

約束手形は、受取人にとって不利な条件が多いのが現状です。具体的には、以下の通りです。

  • 支払期日を含む3営業日以内にしか取立ができない
  • 期日より前に現金化する場合は手数料を払う必要がある
  • 不渡りになった場合に資金繰りが困難になる

振出人が享受できるメリットに比べて受取人のメリットが少なく、結果として約束手形廃止の方針につながっています。

裏書譲渡を活用すれば手数料なしで他社への支払いができる点を除いて、受取人に利点が少ないというのは見過ごせないデメリットの一つといえるでしょう。

構成/編集部

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