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アナログ管理の落とし穴!〝タイムカードを捨てた〟会社に裁判所が下した厳しい判断

2025.10.25

裁判所のジャッジ

ーー ん?社長、何か反論でも?

シャチョー
「その紙は、毎月末締めで従業員の給与を計算し、毎月手書きの紙の給料支払明細書を発行したあとは、その紙を都度破棄していたので存在しません」

ーー らしいですが、裁判官いかがですか?

裁判所
「シャラップですね。手書きの紙を提出せよ」
「理由は以下のとおりだ」


・労働時間を管理する文書としては、その手書きの紙しかない。会社は「労働関係に関する重要な書類」(労基法109条)として5年間の保存義務を負っており、違反した場合は罰金の罰則もある(同法120条1号)。このようなことに照らせば、会社がその紙を所持している蓋然性(がいぜんせい:ある事柄が起こる確率や、真実として認められる確実性の度合い)が非常に高い
・具体的な廃棄の方法および状況などが説明されていない上、その廃棄を裏付ける客観的な資料などは一切提出されていない


裁判所
「あと、社長が『廃棄した』と主張するに至った経緯が不自然なんだよね。社長は当初『手書きの紙などは税理士が保管している』と説明するだけだったけど、その後、時を経て『廃棄した』と言い分を変えてるよね。こんな社長の主張を信用することはできない」

ほかの裁判例

残業代請求の労働トラブルでは、会社が証拠を確保していることが多いため、従業員が文書の提出命令を申し立てること結構あります。以下は、賃金台帳(労基法108条)の提出を命じたケースの一例です。

・住友生命保険(賃金台帳提出命令)事件(大阪地裁 H11.1.1)
・京ガス(賃金台帳提出命令)事件(大阪高裁 H11.7.12)
・藤沢薬品工業(賃金台帳等文書提出命令)事件(大阪高裁 H17.4.12)

従業員ができる対策は?

中には文書提出命令が認められないケースもあるため、タイムカードのない会社では、労働時間を記載して手元に確保しておくなどの方法も有効です。下記のように、従業員自身が作成した労働時間の記録などが証拠として採用された判例もあります。

■ クロスゲート事件(東京地裁 R4.12.13)

会社はタイムカードなどで労働時間を記録していなかったが、従業員は証拠として【自分が入力した出勤簿】を提出。これに対して会社は「信ぴょう性なし」と主張したものの、裁判所は従業員の主張を全面的に信用した。

〈理由〉
・会社は労働時間をタイムカードなどで機械的に記録していない
・労働時間の把握は【従業員が勤務簿(エクセル)に入力して会社に提出する】という方法だった
・Xさんが提出した出勤簿を見て会社が疑義を述べた形跡がない

■ ザ・ウィンザー・ホテルズインターナショナル事件(札幌高裁 H24.10.19)

残業した時間について、裁判所は従業員が書いた報告書を信用した。

■ ブロッズ事件(東京地裁 H24.12.27)

従業員がタイムカードを押したあとも働いていたことを、【PCの履歴】から認定した。裁判所の考え方は「タイムカードがある場合は打刻時間で労働時間を推定する。しかし、タイムカード以上に働いたとの合理的な証拠があれば、そちらを信用する」というもの。

今回は以上です。「こんな解説してほしいな~」があれば下記URLからポストしてください。また次の記事でお会いしましょう!

取材・文/林 孝匡

「残業代を請求すると評価に響くぞ」発言は一発アウト?裁判所が上司に下した意外な判決

こんにちは。 弁護士の林 孝匡です。 宇宙イチわかりやすい法律解説を目指しています。 「え……残業代を請求するの?」「人事評価が下がるからやめた方がいい」 上司…

Author
「ムズイ法律を、おもしろく」がモットー。 YouTube:https://www.youtube.com/@saiban_LABO

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