
リモートワークや働く場所を業務内容によって臨機応変に変えるABW (Activity Based Working)などが定着したことで、オフィスの価値が大きく変化している。
新しい境地に進んだかに見えるオフィスは、まだ模索段階にある。
オフィスの最新トレンドと共に、Z世代向けやこれからのオフィスの動向について、オフィスづくりのプロであるイトーキに聞いた。
「オフィスに適した服」は誰が決めた?Z世代を中心に巻き起こるオフィスウェア論争
「Z世代」という言葉を聞くと、「ティーン」や「若者」のイメージを連想する人が多いだろう。しかしZ世代の中で最も年長である1997年生まれの筆者も、今年で28歳に…
イマドキのオフィスのトレンド
先日、ネスレ日本がオフィスや様々な場所でスターバックス®のコーヒー体験を楽しめるサービス「We Proudly Serve Starbucks® コーヒープログラム」の発表に際してイベントを実施。
「変化するオフィス」に関するトークセッションが開催され、イトーキやコクヨ、丹青社などオフィスづくりのプロたちが最新の知見を持ち寄った。
このコーヒープログラムは、高品質のアラビカ種100%のスターバックスの豆を使用し、フルオートの本格コーヒーマシンを用いてカフェ ラテやカプチーノなど、スターバックスのコーヒー体験が可能になるもの。
オフィスにカフェを設置すると同時に、いま、求められるオフィスに最適化する必要がある。
そこで話題に上ったのが、これからのオフィスづくりは、「効率」から「居心地投資」と「会話のデザイン」へシフトする必要があるということ。
Z世代を中心とした若年層はオフィスに居心地の良さを求める傾向がある。
イトーキ中央研究所が全国の正社員・経営者約5,000人を対象にした調査では、『将来、理想的なオフィスとはどのような姿だと思いますか?』の問いに対し、20~29歳では『カジュアルな会話を楽しみ、発想を得たり、チームワークを高めるスペース』の項目が36.0%と、他の年代に比べて高い割合を示していた。
従来は“業務を行う場所”としての役割が中心で、成果を求める必要があったオフィスは、対面での会話や偶発的な交流、アイデアの共有など、業務とは異なる「つながりの場」としての機能が必要になった。
「会話デザイン」と「居心地の良さ」の設計方法
この新しいオフィスの具体的な設計方法について、登壇していたイトーキの担当、岡 純平氏に話を聞いた。
【取材協力】
岡 純平氏
株式会社イトーキ
ワークスタイルデザイン統括部ワークスタイルデザインラボルーム長、クリエイティブディレクター
一級建築士、デザインディレクションを中心に民間オフィスや教育施設の空間設計に従事し多数の日経ニューオフィス賞受賞案件に携わる
──今後、オフィスにはどのように設計していけば良いと考えますか?
「物理的な会話のしやすさだけでなく、『どんな状態で会話するか』の設計がポイントだと考えています。会話の価値が『成果思考』から『関係構築思考』に変化する現代だからこそ、多様な感性を受け入れる環境づくりが求められていると思います。
具体的には、働く場所を活動に応じて自由に選択できるABWの機能性に加え、例えば、従来のオフィスにある固有の緊張感を緩和するために、温かみのある素材や観葉植物など自然のエレメントをインテリアに取り込むことで無意識の緊張を和らげる空気づくりや、交流の機会を創出する心理的安全性の向上、サーカディアン照明の計画で生体リズムを最適化する設計手法など、より情緒的な表現が求められています」
──オフィスに居心地の良さを求める若年層が多い、と。
「今回の調査結果から、若年層はフランクにチーム交流を行えるスペースを重視する傾向があることがわかりました。出社した際には対面でのつながりを重視し、他者からの学びや助言を得られる設計への工夫が必要だと感じています。
先ほどの情緒的な表現に加え、仲間との連帯感が形成されやすいチームコワークの座席割合を高めた居場所をつくるスタイルなども一つの手段です」