
富とお金のメンタルトレーナー ・三凛 さとし氏は、18歳以上24歳未満の令和7年度新社会人140名を対象に「会社選びとお金のリアル」についてアンケート調査を実施。結果をグラフにまとめて発表した。
新社会人の会社選びの決め手、「給与」はトップも「働きがい」への関心も高い
令和7年度の新社会人140名に「入社した会社を選んだ基準」を聞いたところ、「給与」(30.7%)が最多となった。
しかし、「働きがい(福利厚生・教育制度)」(28.6%)や「社風・社員の魅力」(26.4%)が僅差で続く形となり、単純な「稼ぎ」だけが就職先決定の要因ではないことがわかった。
給与という基本的な安全基盤を確保しながらも、同時に自己成長や人間関係の質も重視する。現代の若者たちによるこの傾向は、物質的な豊かさだけでなく精神的な充足を同時に求める、令和時代の複合的なキャリア観を反映していると言えるだろう。
■将来希望する年収は「1000万円未満」が最多、意外に堅実な金銭感覚
次に、「結婚相手に求める年収」について聞いたところ、「500万円~600万円未満」(19.3%)が最も多く、次いで「400万円~500万円未満」(14.3%)、「気にしない」(12.9%)、「600万円~700万円未満」(11.4%)という結果が得られた。
続いて、「自身が将来獲得したい年収」を聞いたところ、「700万円~1,000万円未満」(25.7%)が最も多く、次いで「500万円~700万円未満」(22.1%)、「1,000万円~1,200万円未満」(20.0%)という結果に。
注目すべきは、全体の57.1%が1000万円未満の年収を希望しており、「若者の高望み」というステレオタイプとは裏腹に、むしろ現実的な将来設計を行なっている点だ。
これは、経済成長の鈍化や社会保障の先行き不安など、彼らが育ってきた社会環境が現実的な期待値形成に影響していると考えられる。
■初任給の使い道、「貯金」がトップでZ世代の堅実さが際立つ
さらに、「初任給は何に使う予定か?」という質問には、「貯金」(50.0%)半数を占め、「親・家族へのプレゼント・食事」(46.4%)、「生活費」(35.0%)と続いた。
消費より貯蓄を優先する姿勢は、コロナ禍や物価高などの経済的不確実性を経験してきたZ世代ならではの特徴とも言える。
彼らは「お金の教養」が高く、将来への備えを若いうちから意識している。不安定な雇用環境や年金問題など、将来の不確実性への防衛反応として、堅実な金銭管理志向が根付いていると分析できる。
親や家族へのプレゼントが2位に入るのも、感謝の気持ちと自立への第一歩を示す興味深い結果だ。
■欲しいものトップ2は「旅行」「車・バイク」。モノより経験指向が鮮明に
最後に、「ゆくゆく欲しいもの・買いたいもの・やりたいことは何か?」について聞いた。最多回答は「旅行」(41.4%)となり、「車・バイク」(35.7%)、「家・マンション」(34.3%)、「ブランドもの」(31.4%)、「資産運用・投資」(29.3%)と続いている。
この結果から、物質的な所有よりも体験や経験を通じた充実感を重視する傾向が読み取れる。
SNS全盛時代に育った彼らにとって、経験の共有や思い出の蓄積が自己表現やアイデンティティ形成につながっていると考えられる。また「車・バイク」が高い割合を占めるのは、移動の自由や行動範囲の拡大への憧れを示唆している。
Z世代新社会人の価値観とその背景にある心理とは
■解説:三凛 さとし 氏
今回の調査結果から、現代の新社会人の価値観について興味深い発見がいくつか見えてきます。
まず注目すべきは、「給与」と「働きがい」の関係性です。どちらか一方ではなく、両方を重視する傾向が強く表れています。これは基本的な生活の安全を確保しながらも、自己実現や成長も同時に追求したいという複合的な価値観の表れでしょう。新社会人たちは、単純な二者択一ではなく、より現実的な視点を持っていると言えます。
また、初任給の半数が貯金に回されるという結果からは、将来への備えを意識する堅実さが見て取れます。これは私たちの世代が育った社会経済環境を考えれば納得できる現象です。景気の低迷、就職氷河期の話題、コロナ禍など、経済的不確実性を数多く経験してきた世代だからこそ、将来への不安に対する防衛反応として貯蓄を重視するのでしょう。
さらに興味深いのは、欲しいものとして「旅行」がトップに来ている点です。これは物質的所有より経験的消費を重視する価値観の表れです。研究でも、モノを買うよりも経験にお金を使った方が長期的な幸福度が高まることが示されています。SNS時代に育った新社会人たちは、「所有する喜び」より「経験する喜び」とその共有価値を重視しているのです。
企業側にとって重要なのは、若者のこのような価値観の変化を理解し、対応していくことでしょう。単なる高給与だけでなく、自己成長の機会や充実した経験を提供できる職場環境を整えることが、優秀な若手人材の獲得・定着につながります。
新社会人の堅実な金銭感覚は、批判されるべきものではなく、むしろ彼らが育ってきた環境への合理的な適応戦略です。企業には若手社員の将来不安を軽減する長期的キャリアパスの提示や、安定と成長の両立を支援する制度設計が求められています。
「給料」と「働きがい」。この二つは対立するものではなく、相互に支え合う関係にあるのです。適正な報酬があってこそ、心理的充足も得られる。この現実的な視点こそ、令和時代の新社会人が持つ賢明な知恵なのかもしれません。
調査概要
調査期間/2025年4月15日~21日
調査手法/インターネット調査
調査対象/18歳以上24歳未満の令和7年度新社会人の男女全国
有効回答者数/140名(男性:61名、女性:79名)
調査機関/Freeasy
出典/合同会社serendipity 調べ
関連情報
http://sanrinsatoshi.com/
構成/清水眞希