
岡山県の自然豊かな場所で育った鈴鹿央士さん。そんな彼のもとに、思いがけないかたちで芸能界入りのチャンスが訪れた。高校時代、通っていた学校で行なわれた映画撮影にエキストラとして参加。その場で主演女優・広瀬すずさんの目に留まり、事務所にスカウトされた。驚くほど突然の出来事だったが、本人は「気負わずに始められた」と振り返る。
「僕にはこれしかない」なんて気負いする必要はない
「スカウトされた時に親に相談したら、大学に進学することを条件に、『就職活動をするタイミングで、芸能界が楽しいならそっちに進めばいいんじゃない?』と言ってくれました。芸能の道一本に進路を絞らず、『もし合わなかったら普通に就職すればいいよね』という選択肢を提案してくれたことで、気軽にやってみようかな、と思えたのが大きかったです」
プレッシャーを感じすぎず、ひとつの挑戦として芸能界に飛び込んだ鈴鹿さん。当初から「自分には芸能しかない」と思い詰めなかったことが、ピュアで柔らかな雰囲気を支える要因なのだろう。このスタンスは、デビューから6年経った現在も持ち続けている。
「今も、『一生この仕事を続けなきゃいけない』とか、『僕にはこれしかない』という大きな使命感や気負いはないんです。ただ、今は誰かの楽しみや、暮らしを豊かにする作品を届けたいという気持ちが強いから続けられています」
俳優としての本格始動後、NHK連続テレビ小説『なつぞら』(2019年)や社会現象となったドラマ『silent』(2022年)、人気漫画を実写ドラマ化したNetflixシリーズ『君に届け』(2023年)など、話題作への出演が続いている。トントン拍子に見える俳優人生だが、その裏ではいつも葛藤があるという。
「挫折や後悔はほぼ毎作品あります。もちろん、『あの時こうしておけばよかった』とは思いたくないので、たくさん準備して試行錯誤しながら撮影に取り組んでいます。でも、終わったら何かしら後悔するところが出てくる。全部が満足ということはないですね。プレッシャーもありますが、それを無理になくそうとは思いません。『そういう自分もいるよな』と受け止めるようにしています」
俳優 鈴鹿央士
すずか・おうじ/2000年生まれ。2019年の俳優デビュー作『蜜蜂と遠雷』で日本アカデミー賞など5つの新人賞を受賞。その後『六本木クラス』(2022年/テレビ朝日系)や『silent』(2022年/フジテレビ系)、『嘘解きレトリック』(2024年/フジテレビ系)など話題作に次々出演。MEN’S NON-NO専属モデルとして活躍中。若さの中に落ち着きと和やかさを兼ね備えた25歳。着実に人気俳優としての階段を駆け上がる姿の裏にある、仕事で周囲を惹きつける大切なヒントとは?
「自然体」という言葉がしっくりくる姿勢の裏には、波に身を任せることへの信頼もある。
「もちろん仕事となると気合を入れますが、ある程度、波に身をゆだねている感じもあります。たまには抗うこともあるけれど、基本的には流れに乗ってみる。そんなスタンスでいただいた仕事に向き合っています」
鈴鹿さんにとって、俳優という仕事への意識を変えたきっかけが映画『蜜蜂と遠雷』(2019年)への出演だった。デビュー作でもあるこの作品で、役者やスタッフが一丸となる現場を体感し、ものづくりの楽しさに目覚めたという。
「『蜜蜂と遠雷』の撮影現場で出会った俳優やスタッフの方々が、力を合わせて作品を作る姿を見て、『こんな素敵な大人たちがいるんだな』と気づかされました。それまでの学生生活で接する大人といえば先生くらい。でも、撮影現場には幅広い世代の方がいて、約2か月間、ほぼ毎日一緒に過ごすわけです。そこで、『何だかいい世界だな』って。また、人を好きになる感覚を覚えたのも『蜜蜂と遠雷』がきっかけ。この作品がなかったら全く違う人間になっていたかもしれません。それくらい大きな経験でした」
着実に積み重ねるキャリアの中で人を魅了し好機をつかむ理由
『蜂蜜と遠雷』で第43回日本アカデミー賞新人俳優賞など多くの賞を獲得して以来、次々と新しい仕事が鈴鹿さんのもとへ舞い込む。昨年は『嘘解きレトリック』で月9ドラマの初主演を果たし、今年は現在公開中の『映画ドラえもん のび太の絵世界物語』で2度目の声優に挑戦。物語のカギを握る謎多き美術商人・パルを演じた。
「お話を聞いた時は、ドラえもんの世界に入る喜びとワクワクが強かったものの、声優のお仕事は不慣れで、不安もありました。実際、声だけで表現する難しさを感じながらも、楽しく演じました」
登場キャラクターの中で自分に一番近いのは誰か尋ねると、意外にも「しずかちゃん」が挙がった。
「僕もお風呂が好きなので、そこが似ているかなって(笑)。あと、いざという時に助けてくれる強さや、友達を思う気持ちが素敵。だから、自分に近いというより、そうありたいと思う存在です」
反対に、自分とちょっと違うと感じるのは出木杉くんだそうだ。
「いつもテストで満点を取って、何でもできて、すごいなと。僕はそんなに完璧ではなくて、単純に羨ましいです」
そう謙遜する鈴鹿さんだが、取材では出木杉くんのように優しく誠実な一面が垣間見えた。多忙を極める中、今回の取材も分刻みのスケジュール。それでも、全ての問いに言葉を選びながら丁寧に答えてくれた。終了時間になっても、自らの休憩時間を削り「他にお答えできることはありますか?」と声をかけてくれる一面も。その姿には、目の前の相手への気遣いと、仕事に対する誠実さがにじんでいた。あらゆる感情を受け入れ、たゆたうように流れに身を任せながらも、ひとつひとつの仕事に真摯に向き合う。その姿勢が多くの人を惹きつけ、信頼を生み、次のチャンスを引き寄せるのだろう。
冒険のカギを握る少年・パル役で声優に挑戦!
『映画ドラえもん のび太の絵世界物語』
全国東宝系にて公開中
絵の中の中世ヨーロッパへ飛び込んだドラえもんたちは幻の宝石・アートリアブルーを巡って壮大な旅へ。だが、その先には世界滅亡の伝説が待ち受けていた──。『映画ドラえもん』シリーズ45周年記念作品。
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