
人的資本に関する情報開示が義務化されてから2年。上場企業はもちろん、開示義務がない非上場上企業においても、情報開示への動きが加速している。
開示指標として、女性管理職比率や男女の賃金格差などの記載が求められていることから、ジェンダー格差の解消に取り組んだ企業も少なくはないだろう。
だが、一時的に女性管理職比率等の数値が改善したとしても、実際働いている従業員が働きがいを感じながらいきいきと働いていなければ意味がない。
そこでGPTW Japanでは、従業員へのアンケート結果を踏まえ特に女性の働きがいに優れた企業を「女性ランキング」として選出したので、詳細をお伝えしよう。
2025年版 日本における「働きがいのある会社」 女性ランキング
■ディスコ (大規模部門)
企業理念としての「DISCO VALUES」では、性別等の特定の属性による差別や評価をしないことを明記。基本姿勢はダイバーシティ研修を通じて多くの従業員に届けられており、職場における実践度合いについても定期的にきちんとモニターされている。
■フロンティアホールディングス(中規模部門)
すべての従業員の幸福度を重視する価値観のもと、性別問わず多様なキャリアパスを実現できる環境が整備されている。全従業員が公平かつ意欲的に活躍できる職場風土が一層深化された。
■Mahalo(小規模部門)
「女性の人生を輝かせ明るい未来を創る」というパーパスのもと、リーダーシップの発揮を促す制度や教育が充実。内発的動機づけを重視しながら、ライフプランや価値観にあわせたキャリア支援が存在する。
2025年版 日本における「働きがいのある会社」女性ランキング傾向解説
厚生労働省が、管理職に占める女性比率の公表を義務化する方針を固めるなど、女性の活躍を推進する取り組みはこれからも加速すると見られる。「働きがいのある会社」女性ランキングに選出された企業の傾向から、女性が活躍する職場の特徴に迫った。
女性ランキング選出企業の従業員数 (一般従業員相当~役員・経営幹部)における女性比率は、選出企業平均で約45%であり、従業員規模別に見ると、大規模(1,000人以上)で約41%、中規模(100~999人)で37%、小規模(25~99人)で約56%となっている。
女性ランキング選出企業(15 社)の各調査設問(60問)に対する平均スコアを算出し、スコアが高い5項目を抽出すると、下表(表1)の通りとなった。
「入社した人を歓迎する雰囲気がある」、「人種に関係なく正当に扱われている」、「経営・管理者層は、誠実で倫理的」、「裏工作や誹謗中傷しない」といった項目のスコアが高く出ていることから、女性ランキング選出企業は、良好な人間関係があり、全体的に立場に関係なく公平に扱われる職場環境であることがうかがえる。
表1:女性ランキング選出企業(15 社)の平均スコアが高い項目(TOP5)
また、「働きがい認定企業」の中でも、女性ランキング選出企業に見られる顕著な特徴を示すべく、「働きがい認定企業(全体)」と比較して平均スコア差が大きい項目を抽出すると下表(表2)となった。
「仕事の割り当てや人の配置を適切に行っている」、「この会社に合った人を採用している」、「言うこととやることが一致している」といった「信用」に関連する項目での差が大きく、女性ランキング選出企業では、組織の方針やふるまいに対して、女性従業員からの「納得感」が得られている様子がうかがえる。
表2:「働きがい認定企業」平均スコアと比べて差が大きい項目(TOP5)
管理職に占める女性比率を、女性ランキング選出企業と「令和5年度 雇用均等基本調査(厚生労働省)」の調査結果と比較した。
ただし、女性ランキングには「女性従業員比率が一定の基準以上」という選出条件を設けていることや各調査結果において従業員数セグメントが異なることから、この結果については参考値扱いとする。
「令和5年度 雇用均等基本調査」の結果では、従業員規模が100人以上(女性ランキングの中規模/大規模相当)になると係長相当職以上における女性比率は12%~13%台、30~99人規模(女性ランキングの小規模相当)では約17%となっているが、女性ランキング選出企業を見ると、1000人以上(大規模)で約20%、100~999人(中規模)で約17%、25~99人(小規模)で約40%となっており、女性活躍が推進されている様子がうかがえる。
※出典:厚生労働省(2024)「令和5年度 雇用均等基本調査」
■Great Place To Work Institute Japan コンサルタント 岩佐 真裕子氏のコメント
今年の女性ランキング選出企業においては、特にスコアが高い項目から、良好な人間関係があり、全体的に立場に関係なく扱われる職場環境があると評価されており、トップ5問中2問が「公正」に関する設問でした。
また、女性ランキング選出企業は、一定の働きがいを達成している「働きがい認定企業」と比べると、経営・管理者層に対する「信用」に関連する項目での差が大きく、組織の方針や経営層のふるまいに対して、女性従業員からの納得感が得られていることがわかりました。
上記のような環境があることで、参考値ではありますが世の中の傾向よりも女性ランキング選出企業における女性の管理職比率は高い結果となりました。
女性の活躍推進においては、最初の段階では労働環境や労働時間など働きやすさの改善に注目が集まりがちです。それでは働きやすさは改善されますが、やりがいを持って働けるかはまた別の問題となります。
女性が本当に高い働きがいをもって働ける環境を作るには、労働環境整備に留まらず、誰もが公正に扱われていると感じられる環境づくりを行うことで、自分らしく、自身の能力が発揮できていると女性が感じられることや、経営・管理者層が信用されるふるまい(仕事の割り当て、人の配置、言行一致など)を行うことで、このリーダーの元で働きたいと女性が思えることが重要です。
なお、誰もが公正に扱われる、経営・管理者層が信用される組織づくりは、決して女性にとってのみ大切というわけではありません。そのような組織づくりを推進することは、女性だけでなく、最終的にはあらゆる方が働きがいを感じられる組織づくりに繋がります。
調査概要
調査期間:2023年7月~2024年9月(2025年版調査)
参加社数:657社
評価観点:働く人へのアンケートの結果が一定水準を超える「働きがい認定企業」を対象に、1)「女性の従業員アンケートの結果」、2)「女性従業員比率などの基本会社データ」の2つの観点から評価
関連情報
https://hatarakigai.info/ranking/woman/2025.html
構成/Ara