食べているときもマインドフルネス!
ところで、寝る前だけでなく日常中でも、マインドフルネスを実践することで、夜の睡眠に良い影響が及ぶと言う。実は食べている時も、マインドフルネスが実践できるのだそうだ。
「食事中にスマートフォンを見たり、考えごとをしたりしていませんか? 食事のときには、ストレスを軽減し胃腸に負担をかけない食べ方をすることで、夜の睡眠に良い影響を及ぼします。アメリカでは、肥満や糖尿病の治療にも役立てられている、『マインドフルネスイーティング』と呼ばれる食べ物を使った瞑想をご紹介します」
●マインドフルネスイーティングのやり方は3ステップ
1.お腹を意識して今、どのくらいお腹が空いているのかを確認する。
2.食べながら「目→手→香り→舌→喉→口の動き→耳→心→ストーリー」の順に意識を移していく。
・目
「今、初めて目の前のものを食べることになった」つもりで、食べ物の見た目を確認する。
・手、香り
手や箸でつまみ、重みや感触、香りを感じたら「美味しそう」など浮かんでくる感覚を頭で言葉にする。
・舌、喉
一口目はお刺身を舌にのせて噛まずに味わい、舌である程度、柔らかくしたら飲み込んで喉で感じる。
・口の動き、音
二口目を口に運んだら、食べ物の上下の歯で噛んですりつぶす動きを感じ、口の中の動きからくるもぐもぐ、ごくりなどの音を聞く。
・心
食べながら自分の感じる思い、美味しい、新鮮、もっと食べたい、好き、苦手、満腹などの感覚や思考に意識を傾ける。
・ストーリー
食べ物のストーリーを思い描く。例えば野菜であれば農家の人がどんな思いでそれを育て、どんなふうに市場やスーパーに運ばれてきたのか。その人の努力を感じ、感謝の気持ちを持ちながら味わう。
3.自由に五感をフルに使って楽しむ
自由に好きなように、五感をフルに使って、香りや味、音、口の中の感覚、浮かんでくる思いなどを感じる。2、3回呼吸をしながら余韻を味わい、終了。
睡眠の質を上げる栄養素3選
選ぶ食べ物は、ぜひ睡眠の質を上げるものがおすすめだ。どんなものが良いのだろうか。山下氏に数ある中から3つを厳選してもらった。
1.グリシン
エビ、カニ、ホタテ、牛すじ、鶏軟骨、豚足などに多く含まれる
「グリシンは、脳の疲労回復(睡眠の質の向上)を促進します。血管を拡張し体温を調節することで、睡眠を促してくれるほか、脳疲労の回復にもつながります」
2.タウリン
魚介類、特に牡蠣やイカ、タコなどに多く含まれる
「タウリンは、肉体の疲労回復を促進する栄養素です。2024年3月に国立長寿医療研究センターと北翔大学、大正製薬株式会社が共同で行った研究(※)で、40歳以上を対象に8年間の体力変化とタウリン推定摂取量の関係を評価したところ、タウリン推定摂取量が多い人ほど脚の筋力を維持していました。その他、肝機能の改善など、内臓の疲労回復もサポートします。風邪やインフルエンザの感染症時の肉体疲労も回復してくれ、症状を軽くしてくれるという研究もあります。
脳疲労にアプローチするグリシンと身体の疲労にアプローチするタウリンの両方を摂取するようにして、相互の相乗的なアプローチが期待できます」
※Domoto T, Kise K, Oyama Y, Furuya K, Kato Y, Nishita Y, Kozakai R, Otsuka R. Association of taurine intake with changes in physical fitness among community-dwelling middle-aged and older Japanese adults: An 8-year longitudinal study. Front Nutr. 11:1337738, 2024. doi: 10.3389/fnut.2024.1337738.
3.GABA
発芽玄米やお茶、カカオ、トマト、キムチなどに多く含まれる
「哺乳類の脳や脊髄に存在しており、神経伝達物質としての役割を果たすGABAは、自律神経のうち、活動時に優位となる交感神経を抑制する働きがあります。そのため、心理的ストレスが和らげられ、スムーズな入眠を促します」