「部下が動かない」と悩む上司に対し、部下のキャラクターを分析して個別に指導する方法を紹介。敏感度、こだわり、共感力、社会的コミュニケーション力、不注意度などのチェックポイントを考慮し、具体的かつ適切な指導を行うことで、部下のやる気を引き出すアプローチを解説します。
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「部下が動かない」と悩んでいる上司の方は、多くいらっしゃると思います。そうしたとき、「なぜ計画通りに進めないのか」「進捗を毎日報告せよ」などと部下を叱責したり、管理するだけでは不十分で、むしろそれらによって部下が委縮してしまい、逆効果になることもあります。
動かない部下を動かすためには、部下のキャラクターを分析し、個々に応じた指導をすることが大切です。今回は、部下を見るときのチェックポイントとキャラクター別の指導法、さらに上司自身が分析力を身につけるために日頃から意識して欲しいことをお伝えしていきます。
キャラクター把握のためのチェックポイントと指導方法
1.敏感度
昨今はHSP(ハイリー・センシティブ・パーソン)という概念で語られることも多くなりましたが、HSPとは疾患名ではなく「感受性が非常に高く、環境刺激に敏感に反応する」という気質を持った人の総称です。
人の声や音や温度に敏感に反応するといった特徴があります。このタイプは、他人の目を非常に気にするので、些細な指導であっても他人から見えるところで行うのはNGです。
指導をするときには1on1、かつ静かな場所で行うことをおすすめします。また、メールなど文章で指導を行う場合は、断定的な文章を避け、アドバイス的な言葉の選択を意識してください。
2.こだわり
業務の中ではこだわることが必要な場面もありますが、こだわる必要がないところでこだわるために、業務スピードが遅くなったり、残業が多くなっているのは問題です。
ただ、本人は自分のこだわりにプライドを持っているので、頭ごなしに否定したり対話もなく禁止命令をするのはNG。混乱して全く動かなくなってしまう可能性があります。
したがって、指導するときはまず肯定から。「君がこだわる気持ちはわかるしクオリティは評価している」といったん肯定してから「ただね……」といった流れで、根拠を示しながら指導をすすめましょう。
また、頭で理解できてもすぐに修正ができる人は多くないため、注意後は少し長い目で見守りましょう。
3.共感力
共感力が高いタイプは聞き上手が多いです。そのため、同僚から愚痴の相手や相談を受けることも多く、結果として同僚や後輩に慕われています。
それ自体は良いことですが、注意の仕方によっては、同僚や後輩を味方につけて、集団で上司を攻撃してくる可能性があります。したがって、指導をするときはストレートに厳しく伝えることは避け、努めてやんわり伝えることを意識してください。
ぼかして伝えるくらいでも、彼らは高い共感力ゆえに上司の言わんとしていることを理解します。
4.社会的コミュニケーション力
目を合わせて話さない、声が大きすぎる、しばしば空気が読めない発言をする、といった社会的コミュニケーション力が不足しているタイプの部下には、できるだけ具体的に指導をしてください。
たとえば、「もう少し積極的に動こう」といった注意の仕方では部下は何をどう改善したらよいかが全くわかりません。「昨日の会議の中であなたがすでに進めている案件がありましたよね。そこは会議中に発言をして共有すべきでした。
今からでも構いませんので社内ツールで会議参加者と共有してください」など、具体的な指導を重ねていってください。
5.不注意度
忘れ物が多い、時間を守れない、デスクの上が片付けられない、うっかりミスが多いなど、注意力が散漫で時間を守れない状態が「慢性的に」続いていることで業務の動きが鈍くなっている部下は、その状態に本人も苦しんでいる場合も珍しくありません。
そのため指導をし過ぎると、改善できない自分を責めて、休職や退職につながる可能性もあります。発達障害の特性としても見られる状態ですので、まだ医療につながっておらず、本人も努力しているのに修正ができないと把握できた場合は、医療やカウンセリングなど専門機関への受診をすすめ、連携を取ながら改善をはかるようにしてください。
分析力をつけるためにはどうするか?
ここまで部下のキャラクター別の指導方法をお伝えしましたが、そもそも部下のキャラクターを分析できる観察力がなければ指導のしようがありません。
ここからは、観察力を磨き分析力をつけるため、上司の方が日常で心がけていただきたいことをいくつかお伝えしたいと思います。
1.プレーヤー気分を捨てる
マネジメント側になったら、プレーヤーとして収集する情報や社内での動き方は全く違います。プレーヤーとして動く際の情報も入れておくに越したことはないですが、めまぐるしく日々が変化する現代においては、あれもこれもと両立させることは非常に難しいといわざるをえません。
優先すべきはマネジメント力をつけるための情報。プレーヤー意識を捨てられないがゆえに、両方ともどっちつかずになってしまう状態は避けましょう。
2.人間観察を日課にする
通勤中の電車では好きなゲームに熱中、休みの日は趣味に没頭。仕事が終われば完全にプライベートを謳歌できるのはプレーヤーまでです。
上司としての質を高めるコツは、自分と関係がない人をも観察することです。「業務時間外もそんなことをするのはしんどい」と思われるかもしれませんが、人を観察し、行動とそれに付随する色々な感情を知ることで勘が鋭くなり、細かく聴取をしなくても部下が動くためのアプローチ方法が短時間でわかるようになるので、タイパがあがり業務ははかどります。
自分に関係のない事象だから、という意識を捨てて人間という生き物を楽しむ心を意識してください。
3.心理学の知識をつける
動くのも動かすのも人間である限り、心理学の基礎知識は役立ちます。人にはバイアスという心の状態があること。同調圧力というものが存在していること、単純接触効果という効果があることなど、深くなくて構わないので、心理の知識をつけていってください。
まとめ
部下が動かない要因として、「当人に業務遂行能力がないから」と部下の能力のせいにするのは簡単です。しかし、高い遂行能力を持っていても、上司と部下のコミュニケーションの取り方によっては、全く引き出されなかったりするものです。部下もひとつの人格を持った人間であるということを忘れずに、観察力と分析力を磨き、適切な指導につなげていってください。
文/小日向るり子
フィールマインド代表。カウンセリング件数約6000件(2024.4月現在)。カウンセリングのほか人間心理や恋愛コラムの執筆も行っている。
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