宇宙関連のスタートアップ企業ではロケットが今最も注目されている
榎本 注目するスタートアップ企業として挙げるなら、中小企業支援制度(SBIR)に選出された、将来宇宙輸送システム、インターステラテクノロジズ、スペースワンです。いずれもロケット開発企業ですが、将来宇宙輸送システムは、日本旅行と提携し、2040年代に300万円の宇宙旅行を目指すと発表しました。
青木 気球で上空まで運んだロケットを、さらにそこから打ち上げる構想のAstroXも注目です。異業種からの参入例でITの起業家が立ち上げました。
榎本 ロケット以外だと衛星事業に取り組むスタートアップ企業にも注目しています。そのひとつが、Synspective。雨でも夜間でも撮影可能なSAR衛星画像を撮影できる、観測衛星の事業者です。例えば災害時に、ドローンでは到達が難しい場所でも状況を把握することができるため、多くの人の命を守ることにつながります。
青木 望遠鏡を積んだ人工衛星で地球を観測できるアクセルスペースや、地上側でデータ受信に必要なアンテナを手がけるインフォステラなど、衛星を活用したスタートアップは特に多いです。
月面1000人計画がビジネスチャンスを生むきっかけに!?
榎本 2040年には1000人が月面で生活する計画があり「宇宙での衣食住」についてニーズが高まるかもしれません。例えば「衣」では下着メーカー・ワコール製の滑り止めを付けた宇宙用靴下。「食」では藻類のミドリムシを食品や燃料に活用するユーグレナが構想中の〝月面で食べる食品〟の製造装置。「住」では鹿島建設が京都大学と共同開発中の『ルナグラス』という月面居住施設です。
青木 民間企業で初めて月面着陸を目指すispaceが月面輸送サービスも企図していますが、月面で人が過ごすためには、エネルギーとともに電力および通信のインフラが必要。例えばKDDIは2030年に月面5G通信の実現を目指し、ホンダはJAXAと共同で次世代エネルギーを開発中。GITAIでは月面工事用のロボットを開発するなど、インフラ整備に動く企業が多数出てきました。
榎本 現状では宇宙での飲酒は禁止されていますが、それを可能にしたいと、酒蔵メーカーの津南醸造が挑戦しています。将来的には月面でお酒を飲みながら〝お月見〟ならぬ〝地球見〟を楽しめるようになるかもしれません。
宇宙エバンジェリスト/スペースポートジャパン理事
青木英剛さん
宇宙ビジネスと宇宙技術の両方に造詣が深く、宇宙ビジネスの啓発や、民間主導の宇宙産業の創出に取り組んでいる。三菱電機時代には、宇宙船『こうのとり』の開発や月着陸実証機「SLIM」を設計し、多くの賞を受賞している。世界中のスペースポートに詳しい。
注目TOPICS!
NASAでは火星から岩石のサンプルを持ち帰る計画を検討中。2024年中に実現に向けた新しいアプローチを決定する予定だ。
文科省のSBIR事業は国内ロケットベンチャーを支援。インターステラテクノロジズに対して最大46.3億円の交付を決定した。
福岡に拠点を置くQPS研究所では、自社で開発・運用を行なっている小型SAR衛星を活用したビジネスを、着実に進めている。
月面で1000人が暮らし、年間1万人が訪れる「Moon Valley 2040 構想」を実現すべく、ispaceでは月着陸船の開発に力を注ぐ。
取材・文/久我吉史 撮影/園田昭彦
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