猛暑の影響で増えたテレビCMの放映
『焼肉ザクだれ』シリーズはまず〈塩だれガーリック〉を発売する。ザクザク食感を生かし、味を変える「味変」ならぬ食感を変える「食感変」を打ち出した。
いまのところ思っていた以上の勢いで売れているが、堅実に息長く売れ続けることを目指しているという。市場での定着を図る上で現在の売れ行きを持続したいところ。継続的な販促策の実施が欠かせないが、テレビCMの放映以外では自社SNSの公式アカウントからの情報発信のほか、ユーザーがSNSで発信した情報を自社HPで紹介している程度である。SNSでの情報発信については、同社の商品の魅力やレシピを発信する『エバラアンバサダー』の間でも『焼肉ザクだれ』シリーズは人気が高く、SNSでの情報拡散に寄与している。
「他の自社商品と比べて積極的に販促に取り組んでいるわけではありません」と話す杉戸さん。焼肉のたれは売上をつくる上でテレビCMの影響力が大きいことから、テレビCMの放映が販促策の中心になっている。
加えて2024年は、猛暑も販促策におけるテレビCMのウエートを高めた。例年だと8月下旬あたりから鍋つゆのテレビCMを放映し始めるが、暑さが長引き季節的に合わないことからテレビCM放映開始時期を後ろにずらし、その代わり『焼肉ザクだれ』のCMを流すことにした。当初予定より多くテレビCMを流すことになり販促が強化された形になった。
ご飯のお供や冷奴の薬味としても利用可能
同社のHPでは自社商品を使ったレシピを多く紹介しているが、『焼肉ザクだれ』を使ったレシピもいろいろ紹介されている。イメージが近いことから使い方が食べるラー油と似たところがあり、同社が提案するまでもなく炊いたご飯や冷奴に乗せる使い方のほか、餃子のたれ代わり活用するユーザーも多い。
『ザクだれごはん』。熱々ごはんに『焼肉ザクだれ』をのせるだけで完成
『ザクだれ豆腐』。冷奴の薬味として絹ごし豆腐に『焼肉ザクだれ』をかけるだけ
レシピは今後も、新作を同社HPで紹介する予定。人気が出てきた使い方などがあったらその都度追加していく。
ちなみに杉戸さんのオススメは『ザクだれおつまみしいたけ』。軸をカットしたしいたけのかさを下にしてから『焼肉ザクだれ』をのせ、粉チーズをふりかけてからオーブントースターで焼くだけと簡単にできる。
〈旨辛ガーリック〉はこの8月に発売となった。〈塩だれガーリック〉と同じタイミングで企画されており、試作された醤油ベースの味を発展させたものだ。もろみや蝦醤(シャージャン/小エビを塩漬けにして発酵させた調味料)、かつお節の旨味に唐辛子を合わせた。魚介の旨味の中にほどよい辛味が感じられるようにした。
新たな味など今後の展開は模索中。現在のところ商品に対するネガティブな反応がほとんどないことから、ザクザク食感や焼肉以外にも使えるといった特徴的な良い点を伸ばしていきたい考えだ。
一方で、営業担当から大容量の業務用を求める声が聞かれるようになった。『エバラアンバサダー』の間でも大容量を求める声が多いという。
取材からわかった『焼肉ザクだれ』シリーズのヒット要因3
1.食感が楽しめる斬新さ
焼肉のたれといえば普通は液体。味を楽しむものだが、具材主体なので味だけではなく食感も楽しめる。「味変」ならぬ「食感変」という新たな概念を打ち出し、新規性をアピールすることができた。
2.幅広い使い道
これまでの焼肉のたれは焼肉以外の使い道が限られた面が否めなかった。そういうものとは一線を画し、ご飯のお供や冷奴の薬味といったいままでの焼肉のたれではできない使い方ができるようになった。
3.やみつき感のある味わい
具材に食欲をそそるガーリックが使われていることなども相まって、やみつきになる満足感の高い味わいに仕上げることができた。
SNSでの声などから判断する限り、1回購入すると2回、3回と繰り返し購入に至るケースが目立つという。早速リピーターができつつあるので、焼肉のたれにとどまらず食感が楽しめる万能調味料としてのポジションが確立できれば末長く愛される商品になると思われる。
製品情報
https://www.ebarafoods.com/sp/zakudare/
文/大沢裕司
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