新たな生活習慣に合った働き方が模索される中で「選択的週休3日制」の導入について議論が高まっています。弊社では現状に先駆け、週休3日制を4年以上続けてきました。全メンバーが週に稼働できる上限を30時間に設定しています。
週休3日・週30時間でも確実に成果を上げられる
このような勤務体制を実践している理由は、労働ではなく価値を提供することへのこだわりを持っているからです。極力少ない時間でより大きな成果を出す(=MORE WITH LESS)ための最適な手段だと考え、継続してきました。現にクロスリバーでは、週休3日・週30時間労働でも成果を残し、週休2日の時と同様もしくはそれ以上の報酬を支払うことができています。
MORE WITH LESSが実現できることを証明するために最初に行なったのは、意識よりも先に行動を変えることです。「週休3日・週30時間以内」という労働ルールを作り、その実行を約束できる人だけをメンバーに迎え入れました。社長の私も当然、週休3日です。無駄をそぎ落とす時短の取り組みも欠かせません。クロスリバーでは全員が〝時間のダイエット〟をするために毎週15分だけの時間を使って、自分の行動を内省(リフレクション)しています。そこで成果につながらなかったこと=無駄だったことを見つけて「やめることを決める」のです。
この毎週15分の内省をクライアント企業に適用したところ、平均8%の労働時間を削減できました。日本のビジネスパーソンが1週間の稼働のうち68%を使っている「社内会議」「資料作成」「メール処理」は、振り返る=内省しないと成果につながったかどうかがわかりません。立ち止まって考える時間を設けて、成果につながらないことをやめるようにしましょう。
働く時間を可視化して受注を絞ることも重要
週休3日・30時間労働を実践すると、今まで自分がやってきたことの無駄を削って、重要な仕事に集中しようという意識に変わります。意識を変えると行動が変わるのではなく、行動を変えることで意識が変わるのです。そのためには自分が今、週に何時間働いているのかを可視化することが重要です。どこまで〝ダイエット〟できるのか、自分で「目標」を決めるようにしましょう。
私の場合は〝ダイエット〟の手始めとして自分の労働時間と成果を測ったら、健康診断と同じように専門家の意見を聞くようにしています。依頼するのは、国内外のメンターや、尊敬する企業経営者やコンサルタントたちです。自身の働き方を見てもらったうえで、どこをどのように改善すべきなのか、客観的なフィードバックを得るようにしています。いわば〝外部の目〟によって、週休3日を実行しているという自己満足に陥らないようにしているわけです。
稼動時間の上限を設定することで、受注案件を絞ることもできます。時間効率の悪い仕事や、将来、AIに取って代わられそうな仕事を断り、「すべき仕事」にエネルギーを傾けるようにしましょう。仕事を断ると、お客様から週休3日制についてネガティブなコメントをいただくこともあります。しかし、顧客へ提供する価値の質を落とさないこと、自社のさらなる成長を目指していることは、意外と理解してもらえるものです。
週休3日という働き方は将来の日本には不可欠
AIをはじめとするテクノロジーの進展は、弊社が週休3日を実践するうえで追い風となりました。Excelを一日中操作するような作業は、これからAIに置き換わっていくと考えられ、作業をやめることができるのです。今後、深刻化する介護問題も、週休3日を浸透させたい理由のひとつ。これからの日本では、親や親族の介護をしなければならない人が確実に増えていきます。現在の週休2日制では対応しきれない事態が必ず発生するはずです。
介護離職者が増加してしまうと、企業も社会も立ち行かなくなってしまうでしょう。家族の対応をする時間を確保しつつ働き続けるためには、週休3日制という働き方が必要となってくると思います。だからこそ、我々クロスリバーが先陣をきって週休3日の実証実験を続け、そこで得た学びを多くの人にシェアしていきたいのです。
自分が週に何時間、どの仕事に充てているのかを知らないビジネスパーソンは意外と多いはず。まずは目安として、現状、週50時間働いているのなら40時間を目標にするのがベスト。仕事の10時間を削減するために、今やっている作業で何をどう見直せばいいのか、そして何を減らすべきかを徹底的に検証しましょう。
文/越川慎司
全員がリモートワーク・複業・週休3日を実践するクロスリバーの代表。約700名のほぼ全員がリモートワークのキャスター社における事業責任者も兼ねる。自著15冊・累計34万部。『最速で結果を出す資料の作り方』(DIMEデジタル新書)が好評発売中。
800社17万3000人のAI行動分析でわかった「仕事の無駄」を絶つ超タイパ仕事術
「時短を意識して仕事を進めるためには、一日を通して計画的に準備することが大切です。仕事時間だけに意識を傾けるのではなく、働く前後の時間を有効に活用することも心がけましょう。精神を落ち着かせることや、リフレッシュのための時間を確保することで、仕事時間中の効率が高まり、結果的には時短につながります」と話すのは、ビジネスコンサルタントの越川慎司さん。
複業・週休3日を実践しながら800社へ働き方改革のノウハウを提供し、24冊以上のビジネス書を執筆している、まさに仕事の達人だ。同氏がこれまでに働き方改革を支援してきたのは800社以上にのぼる。クライアント企業の優秀なビジネスパーソンに見られる行動を分析して導き出した、業務の無駄を徹底的に省き、仕事のタイパ(タイムパフォーマンス)を高める方法を著書の「最速で結果を出す超タイパ仕事術」で詳しく解説している。
■第1章
企業にはびこる無駄の数々について実証データをもとに紹介。「よかれと思って作ったページの81%が読まれない」「重要だと思っていた書類の88%は不要だった」など、どれも衝撃的な内容となっている。日頃の仕事でいかに時間を浪費しているのかを思い知らされるはず。
■第2章
人間の思考傾向や行動原理について解説。「目の前の仕事に集中したくなる」「完璧を求めすぎると疲弊するだけ」といった思考回路を意識することにより、無駄を生じている様々な思い込みをやめるきっかけになるはずだ。
■第3章
仕事の取捨選択を行なう際の〝見極め〟を伝授。「自分の目標から逆算して、本当に必要な業務に注力する」「場合によっては念のための確認を省く」といった考え方を知ることで、在的には無駄だとわかってはいるもののやめられない業務を手放せるようになる。
■第4章
本書のメインテーマである〝タイパ〟を高めるための「無駄をやめられる35の秘策」を大公開。コミュニケーション、情報収集、アウトプット、タイムマネジメント、プレゼン、キャリアの形成といった6つのテーマごとに、具体的にどんなアクションを起こすことで無駄を省けるのかを、わかりやすく紹介。35の秘策をすべて実践する必要はなく、真似できそうなところから始めてみても問題ないはず。
■第5章
成果を出し続けている企業の事例を挙げながら、組織としてタイパを高める習慣を指南。第4章までの内容と合わせて実践し、理想的な職場環境を構築を目指したい。
なお、同書で紹介している〝超タイパ仕事術〟によって成果を上げているビジネスパーソンの実例も、コラムページで詳しく解説しているので、多くのビジネスパーソンにとって働き方を見直す指針となるはずだ。