経済学におけるコミットメントの意味と使い方
続いて、経済学の分野におけるコミットメントについて解説する。
■経済学におけるコミットメントの意味
経済学の分野におけるコミットメントとは、特定の行動を行うことをあらかじめ示すことで、他者に対して取れる選択肢を制限することを指す。こちらについては、使い方の例をみていただいたほうがイメージしやすいかもしれない。
■経済学におけるコミットメントの使い方の例
ここで、経済学分野におけるコミットメントの使い方の例を2つ挙げる。
[例1]
「他店の方が安い場合は同額まで値引きします。」
これは家電量販店などで実施される最低価格保証である。最低価格で販売できることを示す(コミットメントする)と、顧客は他店で購入する理由がなくなるため、結果として顧客を確保しやすくなる。
また、競合店も「大幅に値下げをしても同じ価格にされるなら意味がない」と考えるため価格競争が発生せず、結果として利益率も維持しやすくなる。
[例2]
「日本政府は、この減税政策を少なくとも来年まで実施します。」
減税策が一時的な政策ではなく、長期的な政策だと示す(コミットメントする)ことで、消費者や企業が積極的に消費や投資を行うようになり、結果として景気の改善が期待できる。
まとめ
コミットメントという用語について、意味や使い方を理解しないまま「なんとなく使っていた」「混乱していた」という方も多いのではないだろうか。
ここで解説したように、コミットメントという用語は分野や文脈によって意味やニュアンスが異なる。しかし、そこを正しく理解できれば、より効果的なコミュニケーションを行えるようになるだろう。
なお、シーンによっては、コミットメントという用語を使うよりも、「参加」「関与」「専念」「責任」「約束」「公約」など、従来からある言葉を使った方が適切な場合もあることは認識しておきたい。
文/松下一輝(まつしたいっき)
大学院修了後、ITエンジニアとして大手システムインテグレータに入社。通信キャリアを顧客とする部署に配属され、業務システムやWebアプリケーションなどの設計・開発業務に従事する。その後、文章を書く仕事に興味を持ち、ライターに転身。ITやサイエンス、ビジネスといった分野の記事を執筆している。