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近年、「コミットメント」という用語を耳にする機会が増えている。主にビジネスやISO、心理学、経済学などの分野で使われているが、分野や文脈によって意味やニュアンスが変わるため、理解が追いついていない方も多いだろう。
本記事では、「コミットメント」という用語にフォーカスし、その基本的な意味を解説した上で、各分野における意味や使い方などをわかりやすく解説していく。
コミットメントの意味
「新規プロジェクトにコミットメントする」「社長から新企画のコミットメントが得られた」など、近年、ビジネスシーンなどで、「コミットメント」という用語が使われるようになってきた。「コミット」と略して使われることもある。
そもそもコミットメントとは、英語の「commitment」に由来し、「参加」「関与」「専念」「責任」「約束」「公約」など、さまざまな意味を持つ。
ビジネスシーン以外にも心理学や経済学などの分野でも使われており、分野や文脈によって意味やニュアンスが異なるため、注意が必要である。
なお、日本においてコミットメントという用語が広く世間に知られるようになったきっかけは、パーソナルトレーニングジム「RIZAP(ライザップ)」のテレビCMだ。CMに出てくる「結果にコミットする」というフレーズは、「結果を約束する」「結果に責任を持つ」という意味である。
ビジネスシーンにおけるコミットメントの意味と使い方
ここから各分野におけるコミットメントの意味と使い方を解説していく。まずは、ビジネスシーンにおけるコミットメントの意味と使い方からだ。
■ビジネスシーンにおけるコミットメントの意味
コミットメントは、ビジネスシーンにおいては、主に「参加する」「約束する」「承認する」といった意味で使われている。
[参加する]
ビジネスシーンにおいてコミットメントは、「(プロジェクトや行事などに)参加する」という意味で使われることがある。ただ、単に「参加する」という意味だけではなく、「主体的な姿勢で積極的に関わっていく」というニュアンスが含まれている。そのため、この用語を使うと周囲からの期待が高まり、求められる責任も重くなりやすい。相応の見通しや心構えのもとで使う必要があるだろう。
[約束する]
ビジネスシーンにおいてコミットメントは、「(成果や効果、品質、期限などを)約束する」という意味でも使われる。ただ、単に「約束する」という意味だけではなく、「責任を持って約束する」というニュアンスが含まれている。そのため、こちらの意味でも、相応の見通しや心構えのもとで使う必要があるだろう。
[承認する]
ビジネスシーンにおいてコミットメントは、「(計画や企画、方針などを)承認する」という意味でも使われる。主に組織の上層部が使うケースが多い。
■ビジネスシーンにおけるコミットメントの使い方
ここで、ビジネスシーンにおけるコミットメントの使い方の例を3つ挙げる。
[例1]
「私が部長を担当している部署は、新規プロジェクトにコミットメントする。」
この例では、コミットメントを「参加する」という意味で使っており、部署単位で新規プロジェクトに積極的に関わっていく姿勢を表している。これにより、部署メンバーの意識が高まることもあるだろう。他部署の追随を促す効果もある。
[例2]
「弊社は、お客様に最高品質の製品を提供することにコミットしています。」
この例では、コミットメントを「約束する」という意味で使っており、お客様に対して品質に関する責任を負う姿勢があることを表している。品質に問題があれば責任ある対応を求められることもあるが、一方で、お客様に安心感を与えるため、購入を促進する効果を見込める。
[例3]
「社長が、この社内運動会の企画にコミットメントしてくれた。」
この例では、コミットメントを「承認する」という意味で使っている。社長が承認すれば、メンバーのモチベーションは高まり、議論も活発化しやすくなるだろう。また、社内運動会企画に興味を持つ社員が増える効果も見込める。
■組織コミットメントとは
ビジネスシーンでは、組織コミットメントという用語も使われている。組織コミットメントとは、従業員が自分の所属する組織に対して抱く帰属意識や連帯感などを表す用語だ。組織コミットメントの高い従業員は、業務に高いモチベーションで主体的に取り組む傾向が強い。そのため、組織コミットメントの高い従業員が多い職場では、職場の雰囲気がよく、生産性も高い傾向がある。さらには、遅刻・欠勤が少ない傾向や離職率が低い傾向もあり、無駄のない効率的な組織運営を実現しやすい。
この組織コミットメントには、大きく「情緒的コミットメント」「功利的コミットメント」「模範的コミットメント」の3つのタイプがある。
[情緒的コミットメント]
情緒的コミットメントとは、個人の感情や価値観など、情緒的な要素に基づいて形成される組織コミットメントのことだ。情緒的コミットメントが高いほど、組織に対して愛着を持ち、貢献したいという意欲が生まれやすい。さらに、組織の目標を自分事と捉え、積極的にその実現に向けた行動をとる傾向もある。なお、組織の雰囲気や従業員構成に大きな変化があると、モチベーションが低下することがある。
[功利的コミットメント]
功利的コミットメントとは、損得勘定に基づいて形成される組織コミットメントのことだ。例えば、労働時間や勤務地などの労働条件や、その組織に所属することで得られる社会的評価、そして報酬額などが重要な要素として働く。功利的コミットメントが高い従業員は、組織の理念や目標などには関心を示さないことが多く、労働条件が悪くなったり報酬が低くなったりすると転職を考える傾向がある。
[模範的コミットメント]
模範的コミットメントとは、社会的責任感や義務感などに基づいて形成される組織コミットメントのことだ。模範的コミットメントの高い従業員は、「組織の一員であるからには、その組織に対して尽力する必要がある」といった価値観を持つ傾向がある。組織の方針やルールに従う意識が強い一方で、受け身な姿勢が強く、組織に対する働きかけや提案などを行わない傾向がある。
■isoにおけるコミットメントとは
ISOの文脈においてもコミットメントという用語が使われている。ISOとは、「International Organization for Standardization」の略称で、国際標準化機構のことだ。
国際的な取引や活動がスムーズに行えるように、製品やサービス、プロセスにおける統一された基準を策定している。このISOの文脈におけるコミットメントとは、組織がISO基準を遵守するために必要な行動をとる意思を明確に示すことを指す。
心理学におけるコミットメントの意味と使い方
続いて、心理学の分野におけるコミットメントについて解説する。
■心理学におけるコミットメントの意味
心理学の分野では、「コミットメント効果」という用語が使われる。これは、自ら設定した目標を達成しようとする際、その意志を他者に対して、あるいは公の場で宣言することで、目標達成率が高まる心的効果のことを指す。人間には、発言と行動の一貫性を保とうとする欲求や、周囲の期待に応えようとする欲求があり、これら欲求がコミットメント効果の背景にある。
■心理学におけるコミットメントの使い方の例
ここで、心理学分野におけるコミットメントの使い方の例を2つ挙げる。
[例1]
「今度こそ本気でダイエットを成功させたいから、SNSでマイナス10キロのダイエットに取り組むと宣言した。」
この例では、SNSのフォロワーに対して宣言(コミットメント)をしている。フォロワーの存在が自己意識に影響を与え、結果としてダイエットの成功率が高まる効果を期待できる。また、「今日はランニングしました」「今日はこんなヘルシー料理を作りました」などと投稿して、フォロワーから応援メッセージがあれば、モチベーションが強化されることもある。
[例2]
「起業家として成功するために、仲の良い友達に、『成功するまで、あなたたちとの飲み会には行かないから』と宣言した。」
この例では、友達に対して宣言(コミットメント)している。友達の存在が自己意識に影響を与え、結果として起業の成功率が高まる効果を期待できる。また、友達との飲み会に行きたい気持ちを原動力として活用することもできる。