結果的には失敗につながる「努力だけがすべて」という考え
私は物心がついた頃から体が弱く、高校2年生までは160cmにも満たない身長でした。その後、大学受験には3回も失敗。大学卒業後に入社した通信会社には同期が2000人いて、その多くが一流大学出身者でした。
いわば体や経歴のハンディを持つ私が、そのような高学歴者に囲まれた環境で何を武器にすればいいのか……。考えた末に、体力と努力を強みにしようと考えました。
入社した約20年前は「残業」や「徹夜」を評価する文化があり、その風潮に流されていました。長時間労働による自己満足に陥りながら努力を積み重ね、特に営業の仕事では成績を上げることができ、一定の評価も得られました。その結果「努力だけがすべて」という勘違いをしてしまったのです。
その後、29歳で本社の要職に就いた頃まで「時間をかければ何でもできる」と思って仕事に取り組んできた中、体が限界を訴え始めていました。資料作成だけでなく雑務にも没頭し、先輩や上司の後始末をしたうえで自分の仕事に取りかかる。そうした生活が続いた結果、うつ病を患いました。
この失敗を省みず、マイクロソフトで本部長に昇格した直後にも、同じ失敗をしてしまいました。仕事が楽しくて、休日も仕事をしていました。米国本社との時差で夜遅くまで仕事をしていたこともあり、再び体調を崩したのです。
数々の失敗を機に「タイパ仕事術」に取り組む
これらの失敗から得たのは、成果を出すプロセスが楽しいと感じること、自己満足に陥ること、そして自分自身を俯瞰的に見られないことが危険だという重要な教訓です。評価が上がると気がよくなり、結果として健康を害してしまう。これは多くのビジネスパーソンが陥りがちな罠です。
人気ビジネスコンサルタントが指南する話題の書籍「最速で結果を出す超タイパ仕事術」
働き方を見直すヒントが満載 「メールを見ていますか?」というメールが、企業の97%に存在する。 重要だと思っていた書類の88%は不要だった。 68%の企業では会...
2度もうつ病になったことをきっかけに、私は短時間で高い成果を出すための「タイパ仕事術」を極めようと思いました。無制限に仕事をするのではなく、限られた時間の中で多くのことを成し遂げようと心に決めたのです。睡眠時間は毎日7時間とし、無駄な仕事を見極めようと試みました。すぐに成果を出すことはできませんでしたが、失敗も成功も、すべては学びの過程であり、それをどう生かすかが重要であると考え、行動実験を積み重ねていきました。
「アクセルの踏み方」よりも「ブレーキのかけ方」が大事
私は次第に、仕事の中で手を抜いていいところ、油断してもいいところを見極めることも重要だと認識できるようになりました。それは、クルマの運転中、先を見越して交差点やカーブに差しかかる前にブレーキを踏むのと同様です。
社内会議の資料に高解像度のすてきな画像を入れても、評価されるわけではありません。デザインにこだわるよりも要点を絞ることが重要で、具体例で説明したほうが伝わることが多いのです。
「どのようにアクセルを踏むか」よりも「どこでブレーキをかけるか」。その見極めタイミングが「タイパ仕事術」では重要です。
例えば、社内報のデザインや週報作成など、100%の力を投入せずとも合格点をもらえる時があります。これは日常生活でも同じことがいえるでしょう。ホコリをゼロにしようと全力で掃除する必要はありません。目に留まるところをきれいにするなど、合理的な方法を探すことが大切です。
仕事や日常生活の中で、油断してもいい部分を見つけることによって、効率的に時間やエネルギーを使うことが可能となります。
「タイパ仕事術」を実践すれば週休3日も夢じゃない!
究極の「タイパ仕事術」は、ただ仕事を早く終わらせる手段ではありません。自分自身の限界を見極め、そのうえでどのように効率よく、そして質の高い仕事をするかという問題に向き合うことが本質です。そのことに気づけたのは、数多くの失敗のおかげです。
こうした経験が、後に全メンバーが週休3日の会社を創業するきっかけとなりました。どうしたら短時間で成果を出し続けられるのか。日々、実験を重ねています。
働き方改革という言葉が浸透してきているとはいえ〝残業沼〟に苦しむビジネスパーソンは数多くいます。私と同じように体を壊してもらいたくないので、書籍や連載を通じて私の失敗=学びを、広めていきたいと思います。
社内の要職に抜擢された当時、私の強みは資料作成。PowerPointのスキルが特に高く、そのスキルに陶酔。多くの機能を活用して不要なほど、豪華な資料を作成して自己満足していました。しかし、そのような資料を社内の会議用に作ったとしても、著しく高い評価につながることは期待できません。
文/越川慎司
クロスリバー代表取締役。800社へ働き方改革を提供。
800社17万3000人のAI行動分析でわかった最速で結果を出す書籍「超タイパ仕事術」
越川さんは、複業・週休3日を実践しながら800社へ働き方改革のノウハウを提供し、24冊以上のビジネス書を執筆している、まさに仕事効率化のスペシャリスト。
最速で結果を出す超タイパ仕事術
著:越川慎司
同氏がこれまでに働き方改革を支援してきたのは800社以上にのぼる。クライアント企業の優秀なビジネスパーソンに見られる行動を分析して導き出した、業務の無駄を徹底的に省き、仕事のタイパ(タイムパフォーマンス)を高める方法を詳しく解説しています。その一部をダイジェストで紹介します。
同書は、第1章から第5章までの5部構成になっています。
第1章では、企業にはびこる無駄の数々について実証データをもとに紹介。「よかれと思って作ったページの81%が読まれない」「重要だと思っていた書類の88%は不要だった」など、どれも衝撃的な内容となっています。日頃の仕事でいかに時間を浪費しているのかを
思い知らされるはずです。
第2章では、人間の思考傾向や行動原理について解説。「目の前の仕事に集中したくなる」「完璧を求めすぎると疲弊するだけ」といった思考回路を意識することにより、無駄を生じている様々な思い込みをやめるきっかけになるでしょう。
第3章では、仕事の取捨選択を行なう際の〝見極め〟を伝授。「自分の目標から逆算して、本当に必要な業務に注力する」「場合によっては念のための確認を省く」といった考え方を知ることで、在的には無駄だとわかってはいるもののやめられない業務を手放せるようになるはです。
第4章は、本書のメインテーマである〝タイパ〟を高めるための「無駄をやめられる35の秘策」を大公開。コミュニケーション、情報収集、アウトプット、タイムマネジメント、プレゼン、キャリアの形成といった6つのテーマごとに、具体的にどんなアクションを起こすことで無駄を省けるのかを、わかりやすく紹介しています。35の秘策をすべて実践する必要はなく、真似できそうなところから始めてみても問題ないはずです。
第5章は、成果を出し続けている企業の事例を挙げながら、組織としてタイパを高める習慣を指南。第4章までの内容と合わせて実践し、理想的な職場環境を構築を目指しましょう。
なお、同書で紹介している〝超タイパ仕事術〟によって成果を上げているビジネスパーソンの実例も、コラムページで詳しく解説していますので、多くのビジネスパーソンにとって働き方を見直す指針となるはずです。