800社以上の働き方改革を支援するクロスリバー代表取締役の越川慎司さん。クライアント企業で成果を上げている優秀な社員の行動分析をもとに、仕事のタイパを高める秘訣を1冊にまとめた「最速で結果を出す超タイパ仕事術」が発売され話題となっている。本記事ではコミュニケーションやキャリアアップまで幅広いテーマを取り上げる本書の中から会議を見直すポイントについて、ピックアップして紹介する。会議に使う資料づくりにおいても、時間を無駄に費やしがちだ。仕事に直結する情報だけを効率よく取りまとめ、上司の意見を途中段階からすり合わせるのが、書類作成のタイパを高めるコツだ。
そもそも必要のない書類は作らないこと
越川さんが代表を務めるクロスリバーの調査では、仕事における時間の多くが、必要のない書類づくりに消耗されているとのこと。苦労して作成した書類の約88%が、実際には必要なかったようだ。「安全運転の一環」として、または「組織のプロセスに従わざるを得ない」ために行なわれている不要な書類づくりをやめて、時間をより効果的に使うためには、会議の書類づくりに関する意識と行動も変革しなければならない。
まず、自分が作成する会議の書類が本当に必要かどうかを評価する習慣をつけることが重要。それは、自分の意図や目的を明確にし、それらに対して書類がどのように寄与するのか考えることを意味する。もし書類が目的の達成に寄与しないなら、その書類は本当に必要なのか疑問を持つべきだ。また、書類が相手にとって本当に価値があるのかを考えることも不可欠。どのように役立てられそうかを、よく考えるようにすることが重要だ。もちろん、作成に費やされる時間と労力が書類の価値に見合っているのかも考えよう。
秘訣【1】インフォメーションではなくインテリジェンスでまとめる
インターネットから入手できる情報の多くは、データや事実を集めただけのインフォメーション。そのまま、会議の資料などに使うのには不十分であり、あくまでも整理された情報=インテリジェンスにアップグレードすることが重要だ。例えば、売り上げの推移や市場規模の対前年比などのデータが意味することとともに、背後の状況などを理解するように心がけ、インテリジェンスとしてまとめることを意識しよう。
【Before】闇雲に情報を集めて資料を作る→【After】〝本質〟を見極め仕事で使えるインテリジェンスに
〈 よりタイパを高めるポイント!〉
今後さらに厳しい状況に陥るのか、それとも現在は〝底打ち〟の状態で上向きになりそうなのか。集めたインフォメーションが示しているデータの傾向やパターンをいち早く見つけることで、インテリジェンスをまとめやすくなる。
秘訣【2】ネットの検索頼りをやめて時には同僚に上手に質問する
情報は〝海のように膨大〟なインターネットから得られるものだけが有益とは限らない。人に質問して得られる情報のほうが、本質に近いものを持っていることもある。質問を通じて欲しい情報を効率よく入手するためには、相手から具体的な回答を得られるよう、自分が何を知りたいのか、どんな情報が必要なのかを、まず明確にしよう。他人の回答をよく理解し、それに対してさらに話を堀り下げると、なおベターだ。
【Before】長時間ネットの情報を探し続ける→【After】人との話から情報の〝本質〟を収集する
〈 よりタイパを高めるポイント!〉
誰かに尋ねることに不慣れな人や恐怖心を抱いている人は、それを克服することも重要。「質問するとバカに見られるのではないか」という恐怖心を克服し、聞きたいことを尋ねる勇気を持つことで、深い理解と学びを効率よく得られる。
秘訣【3】上司と意見をすり合わせて差し戻しや修正の無駄を省く
上司に対する資料の確認は、100%の状態ではなく、進捗20%といった初期段階で依頼するほうがいいだろう。このことを実践した優秀な社員は、以前に比べて大幅な修正を受けるケースが激減。「早めにフィードバックを受けることの重要性」を学んだ後は、新たなプロジェクトを始めるたびに、途中経過の確認を上司から定期的に得ている。その結果、作成する資料の「差し戻し」は89%も減少。最初から完璧なものにこだわらないことで、無駄を省くことができる。
【Before】資料を100%の完成度まで仕上げる→【After】途中段階でもあえて見せてチェックしてもらう
〈 よりタイパを高めるポイント!〉
進行中の作業は初期段階から上司だけでなくチーム内でも共有すること。そのことが、組織全体の作業効率を向上させることにつながる。自分の考えが間違っていることを、いち早く指摘してもらいやすくなり、大きな間違いも未然に防げるのだ。
秘訣【4】隅々まで何度も確認をせずにまとめてチェックする
書類を確認する際、1ページが出来上がるごとに入念な「個別のチェック」を行なっていないだろうか。実はそのような〝過度に丁寧な作業〟が時間を無駄にしていることもある。「木を見て森を見ず」という考えを持ち、書類がある程度出来上がったら冷静な目で全体を見通す「一括チェック」に切り替えるようにしよう。このほかにも「同じ内容の書類はテンプレ化する」ことなども徹底した優秀な社員は、資料を仕上げるまでの時間を1/4に削減できたそうだ。
【Before】正誤のチェックを都度細かく行なう→【After】ある程度まで仕上がったらまとめてチェック!
〈 よりタイパを高めるポイント!〉
仕事は、ひとつの作業だけに専念したほうがはかどりやすくなる。書類作成についても同様。メールのチェックや電話対応をはじめ、妨げとなるほかの作業はできるだけ控えること。作業効率だけでなく資料の質も高められるはずだ。
秘訣【5】紙のままファイルで保管せず撮影して活用しやすくする
手紙はもちろん、会議のために作成した書類は、紙のまま書棚や机の引き出しに保管しても、必要な情報を探すのに時間を取られてしまうだけだ。そのため、スマホのカメラで撮影して管理するのがいい。無料アプリのAdobe Scanでは文字認識もしてくれる。そうすることで、大量の紙の山から解放され、必要な情報にすぐにアクセスできるようになる。クラウド上で整理すれば、どこからでもアクセスが可能に。過去の書類を見つける時間が大幅に短縮される。
【Before】会社の書棚に整理して保管しておく→【After】スマホで撮影!自分が探す時も共有するのが効率的
〈 よりタイパを高めるポイント!〉
デジタル化した会議の資料は、デジタルツールを使って編集できるのも美点。ハイライトをつけたりコメントを追加したり、必要な部分だけを保存したりすることで、自分だけのデータベースをまとめられ、より効率的に資料を管理できる。
優秀な社員の行動分析から導き出した業務の無駄について、データをもとに解説。仕事の無駄を省くための考え方から、タイパを高めるための実践方法まで紹介している。個人だけでなく組織の業務効率を上げる秘訣も含めて必見だ。
「最速で結果を出す超タイパ仕事術」
著者・越川慎司さん
世界各地に分散したメンバーが週休3日・リモートワーク・複業(専業禁止)をしながら800社以上の働き方改革を支援する、クロスリバーの代表取締役。