多くの会議は「共有」が目的になっている
社内会議が必要なのは、実行者と決定者が異なるからです。実行者と決定者が同一人物なら会議は必要ありません。すなわち、実行者が実行できるよう、決定者が決定をしないといけないのです。
現場の実行力を高める会議には「共有」「決定」「ブレスト(アイデア出し)」の3種類が挙げられます。218社への調査で圧倒的に多かったのは「共有」の会議でした。逆に想定以上に少なかったのが「決定」の会議です。より多くのことをスピーディーに決めることこそが成果につながるにもかかわらず、会議全体のうち「決定」の会議は13%しかありませんでした。
「決定」をするためには、アイデアや意見を出してもらわないといけません。そのための「ブレスト(アイデア出し)」の会議も、ほとんど行なわれていなかったのです。
「いいアイデアを出してください」はNG
「ブレスト(アイデア出し)」の会議では、アイデアの〝質〟を高めるよりも、アイデアの〝量〟を増やすことが大事です。意外に思われるかもしれませんが、これまでの調査から、いいアイデアは大量のアイデアの中に埋もれていることがわかっています。部下に対して「いいアイデアを出せ」と言うよりも「何でもいいからアイデアを出せ」と言ったほうが、実は効果があるのです。
管理職としては、部下が黙ったままの会議よりも、実現の可否を問わず、自由なアイデアをどんどん言ってくれたほうがうれしいのではないでしょうか。
アイデアをたくさん出し合うには心理的安全性が必要
気兼ねなくアイデアを出し合えるよう参加者の心理的安全性を確保することで、会議中の意見は増え、時間内に終わる確率が高まります。不要な作業を増やし、時間を奪う〝過剰な気遣い〟をなくすためにも、腹を割って話せるようにしましょう。無駄なことがなくなり、時間を有効に活用できます。
部下はその場の空気を読もうとしたり、上司の顔色を確認したりしがちです。特に気にするのが「上司が怒っているかどうか」。調査では、部下の7割以上が「気にしている」と回答しました。一方、上司に聞くと「怒っていないのに、怒っているように思われる」という回答が半分以上を占めたのです。
「上司が怒っている」と認識した部下は、不要な気遣いや忖度をするようになります。このような状態の組織では、会議が増える傾向にあり「念のため」「一応やっておこう」と、次々に会議を設定してしまいます。その結果〝会議のための会議〟を行なってしまうのです。
口角の2cmアップで意見が増えて会議が減ることにもつながる
このような気遣いや忖度を部下にさせないため、上司はできるだけ口角を上げるようにしましょう。
ある不動産会社とメディア企業で40代以上の男性社員を対象に「口角を2cm上げましょう」キャンペーンを実施したところ、会議で出たアイデアの数が劇的に増え、会議時間は8%も減りました。
ムスッとして腕を組んで会議に参加するより、口角を上げて聞く姿勢を見せるだけで、会議の空気や心理的安全性は大きく変わるのです。「ブレスト(アイデア出し)」の会議では、意図的に口角を上げて白い歯を見せると、効率も効果も高くなることが実証されています。ぜひ試してみてください。
冒頭2分の雑談でアイデアの数が2.3倍に!
会議は冒頭2分で、その場の空気が決まります。本題に入る前にまず雑談をして、場を和ませてください。仕事とは関係のない話題で盛り上がり、お互いに笑顔を見せ合うことは、心理的安全性を確保するうえでとても効果的です。
社内会議の冒頭2分に雑談をしなければならないグループAと、雑談をせずにいつもどおり会議を進めるグループBに分け、両者の成果の違いを検証する実験を、12社1954人とともに2週間行ないました。それぞれが開いた160回以上の会議を比較した結果、グループAはグループBに比べて、発言者数が1.8倍となり、出されたアイデアおよび提案の数は2.3倍に。予定時間より早く終わる確率が45%もアップしたのです。
会議のタイパを上げることは意思決定を早め、実行力や業績のアップにもつながります。無駄な会議をやめてタイパを高めましょう。
弊社で行なった調査によると〝成果の出ない会議〟の多くは「ブレスト(アイデア出し)」と「決定」が同時に行なわれていました。成果が出ないのは、ひとつの「決定」を導き出すために「ブレスト(アイデア出し)」から生まれる様々なアイデアを、否定することになるからなのです。会議の改革を進める218社が1か月の間に「ブレスト(アイデア出し)」と「決定」の両会議を分けて行なうようにした結果、会議全体の開催時間は11%も削減されました。
文/越川慎司
クロスリバー代表取締役。複業・週休3日を実践しながら800社へ働き方改革を提供。最新の著書『最速で結果を出す超タイパ仕事術』も好評発売中。仕事の無駄を省く35の方法などを丁寧に解説している。
17万3000人のAI行動分析でわかった最速で結果を出すための「超タイパ仕事術」
越川さんは、複業・週休3日を実践しながら800社へ働き方改革のノウハウを提供し、24冊以上のビジネス書を執筆している、まさに仕事効率化のスペシャリスト。その越川氏の書籍が話題となっている。。
最速で結果を出す超タイパ仕事術
同氏がこれまでに働き方改革を支援してきたのは800社以上にのぼる。クライアント企業の優秀なビジネスパーソンに見られる行動を分析して導き出した、業務の無駄を徹底的に省き、仕事のタイパ(タイムパフォーマンス)を高める方法を詳しく解説しています。
同書は、第1章から第5章までの5部構成になっています。
第1章では、企業にはびこる無駄の数々について実証データをもとに紹介。「よかれと思って作ったページの81%が読まれない」「重要だと思っていた書類の88%は不要だった」など、どれも衝撃的な内容となっています。日頃の仕事でいかに時間を浪費しているのかを
思い知らされるはずです。
第2章では、人間の思考傾向や行動原理について解説。「目の前の仕事に集中したくなる」「完璧を求めすぎると疲弊するだけ」といった思考回路を意識することにより、無駄を生じている様々な思い込みをやめるきっかけになるでしょう。
第3章では、仕事の取捨選択を行なう際の〝見極め〟を伝授。「自分の目標から逆算して、本当に必要な業務に注力する」「場合によっては念のための確認を省く」といった考え方を知ることで、在的には無駄だとわかってはいるもののやめられない業務を手放せるようになるはです。
第4章は、本書のメインテーマである〝タイパ〟を高めるための「無駄をやめられる35の秘策」を大公開。コミュニケーション、情報収集、アウトプット、タイムマネジメント、プレゼン、キャリアの形成といった6つのテーマごとに、具体的にどんなアクションを起こすことで無駄を省けるのかを、わかりやすく紹介しています。35の秘策をすべて実践する必要はなく、真似できそうなところから始めてみても問題ないはずです。
第5章は、成果を出し続けている企業の事例を挙げながら、組織としてタイパを高める習慣を指南。第4章までの内容と合わせて実践し、理想的な職場環境を構築を目指しましょう。
なお、同書で紹介している〝超タイパ仕事術〟によって成果を上げているビジネスパーソンの実例も、コラムページで詳しく解説していますので、多くのビジネスパーソンにとって働き方を見直す指針となるはずです。