1994年、学校を卒業したあとに、手巻きの腕時計が欲しくて当時は22万円ほどだったオメガのプロフェッショナルを探して様々な時計屋を探していたところ「doppeL」に出会ったのだそうだ。着けてみると周りの人は口をそろえて「カッコイイね、それどこで買ったの?」と聞いてきたと言う。そうすると清水氏も「doppeLで買った」と紹介することになる。「じゃあお店の人に言っておくよ」と。
そこから10年。清水氏は自身もお客なのにもかかわらず、お店に訪れる人に知らぬ人はいないという状態になった。いわばネットワークのハブのような存在だ。そこで転機が訪れる。老年にさしかかり、店舗の契約がきれることもあって「お店をたたむ」と言ったそうだ。そして「つながりのあるオマエ(清水氏)が継がないか」と。悩む清水氏。常連客は付いているものの、まだ働いているしできるのだろうか、と。
行きつけの歯医者でそんな話をしていたところ、歯医者から「診療所の隣のテナントスペースが空いている、ぜひ入ってくれないか」とオファーがあったそうだ。そしてアフターメンテナンスも縁のあった時計師に了承を得ることが出来た。「常連」「店舗」「時計師」という3つ点が自分に向いていると悟った清水氏は継ぐことを決めたそうだ。
■クラウドファンディングを使ったワケ
きっかけは2009年にお店が15周年を迎えるにあたって、オリジナルの時計を製作。その噂を聞きつけた、当時時計の学校の研修生だった牧原氏の講師が「ただの時計屋が製作した時計がどんなものなのか」見に来たのだそうだ。結果としてレベルの高さに共感し、牧原氏を推薦されたという。卒業制作展で出品した作品などを見て「オリジナル時計の3作目を作ってくれないか」と依頼したそうだ。
しかし時計製作には工具や設備が必要だ。幸いつくばという立地のせいか、工作機械などを扱う商社マンがお客さんに多く、ツテから仕入れることができたという。クラウドファンディングを勧めてきたのは最初に出てきたドサナイテの曽我氏。クラウドファンディングサービスはいくつかあるが“地域”という特性を活かした強みがあったのでクラウドファンディングサービスのfaavoを利用したとのこと。資金調達の目的は時計師が時計で生計を立てられるようにするための費用(施設の償却費や報酬)に当てられるそうだ。