裁判所のジャッジ
裁判所
「仮眠時間も労働から解放されてねぇから、労働時間だ!」
「会社は以下の残業代を払え」
X1さん:708万円
X2さん:835万円
X3さん:427万円
キョーレツな金額です。あまり見かけない金額です。
―― なぜ仮眠時間が労働時間にあたると?
裁判所
「そもそもの話をしますと、会社の指揮命令下にあれば労働時間になります。たとえ何もしていない時間であっても労働からの解放が保障されていない場合は労働時間なのです」
会社
「ちょっと待ってください!Xさんたちは、眠り続けることができました。トラブルなどが発生してもそれに対応する必要はなかったからです」
Xさんたち
「違います。先輩から『トラブルが発生したときは複数名で対応するよう』指示されていました」
―― 裁判所さん、いかがですか?
裁判所
「おたくの緊急マニュアルには▼緊急連絡があった場合、2名以上で現地に急行すべし
▼夜間で人員不足の場合は仮眠者を起こすべしみたいなことが書かれてるじゃん……」
裁判所
「あと、業務日誌を見ると、仮眠時間でもクレーム・トラブル等があれば複数名で対応することがあったよね」
会社
「この業務日誌は社外持ち出し禁止ですよ!この業務日誌は証拠として認められません!」
裁判所
「シャラップ!まぁたしかに、社外持出禁止って書かれているので、Xさんたちの行為は不法行為といえ、雇用契約上の債務不履行ともいえますわな」
「しかーし!証拠収集が違法であったとしても、証拠能力が否定されるとは限らないのだよ」
というわけで、裁判所は以下の事情を考慮して「証拠能力OK」と判断しました。
・業務日誌はXさんたちの具体的な勤務状況を明らかにするための極めて重要な証拠
・会社の指揮命令の下でマニュアル代わりに使っていたこと
・業務日誌が開示されることで個人のプライバシーが侵害されたりしないこと
裁判所
「しかもだ。以下の事情もあるよね」
・Xさんたちが仮眠をとっていた部屋には、緊急呼び出し装置、内線電話あり
・仮眠時間にもPHSの携帯を義務づけられていた
・仮眠する時は、寝巻きではなく洗濯後の制服で寝ていた
裁判所
「この状況からすると、Xさんたちは、仮眠時間中もトラブルなどに対して直ちに相当の対応をすることを義務づけられていたといえる。労働から解放されてないぜ!」
というわけで、今回の仮眠時間=労働時間と認定され、巨額の残業代が認められました。
X1さん:708万円
X2さん:835万円
X3さん:427万円
あるある
最後、あるあるを。仮眠時間以外にも、以下のケースでよく裁判になります。興味のある方はご覧ください。すべて「労働から解放されてねぇ!会社よ、カネ払え!」と命じた裁判です。
■ 着替え時間
■ 待機時間
■ 休憩時間
今回は以上です。「こんな解説してほしいな~」があれば下記URLからポストしてください。また次の記事でお会いしましょう!
取材・文/林 孝匡(弁護士)
【ムズイ法律を、おもしろく】がモットー。法律コンテンツを作ることが専門の弁護士。
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