「傾聴力」という言葉は聞いたことはあるでしょうか。
しばしばビジネスコミュニケーションの現場でよく耳にすることが増えた言葉ですが、実はビジネスの場だけではなく、日常の生活の中で円滑なコミュニケーションを図るための大切なスキルの1つとなります。
この記事では、傾聴力とはどのようなものなのか、傾聴力を持つことのメリット、そして傾聴力の鍛え方についてご紹介します。
傾聴力とは
まず初めに、「傾聴力」とはどのような意味を持つのかを見ていきます。
デジタル大辞泉(小学館)には「傾聴力」はなく、「傾聴」がありました。その意味は、
耳を傾けて、熱心に聞くこと。
と説明されています。
上記の説明だと「傾聴力」とは、相手の話に耳を傾けて、熱心に話を聞くことができる力、ということになりますが、熱心に話を聞くだけではありません。熱心に話を聞く中で相手の気持ちに寄り添い、相手を理解しようとするスキルのことを指します。
傾聴力のきくには「聴く」という漢字が使われています。一般的には「聞く」とは受動的に耳に入ること、「聴く」は能動的に話を理解することだとされています。
また、この「傾聴力」という言葉は、アメリカの臨床心理学者が提唱したカウンセリング技法の1つになります。カウンセリングでは、傾聴力という技法は、相手が本当に話したいことを引き出して理解するために用いられています。
傾聴力を持つことがなぜ必要なのか
コミュニケーションにおいて、能力が高いとされるのは話し上手な人と捉えられがちですが、実は聞き上手な人のほうが能力は高いとされています。
聞き上手な人が多く持っている能力が「傾聴力」なのです。ここでは傾聴力を持つことのメリットを解説します。
1.相手への理解が深まる
言葉の説明でもあったように、傾聴力を持った人は、相手の気持ちに寄り添いながら、相手を理解しよう熱心に相手の話を聴きます。相手の気持ちに寄り添うので、そこに先入観などはありません。素直に相手のことを受け入れます。傾聴力を持って聴くことで、相手への理解が深まっていきます。
2.信頼関係が築ける
人は誰かに話を聴いてもらうとき、話に熱心に耳を傾けてくれていると感じると、もっと話したい、自分のことを知ってもらいたいと思います。その気持ちが重なることで、自然と信頼関係は深まっていきます。
信頼関係が築けると、さまざまな相談をしてくれるという一方通行だけでなく、相談を親身になって聴いてくれるようになるなど、相互で話し合える関係になっていきます。
3.自己理解につながる
傾聴力の、相手の気持ちに寄り添いながら話を聴くとは、相手の話を相手の立場になって聴くということ。この能力があると、自分の立場を客観視することができるようになります。
自分を客観視できると、普段気がつかなかった自分の価値観や思考のクセなどがわかるようになります。
傾聴力の鍛え方
「傾聴力」とは熱心に話を聴くだけではないことがわかったと思います。最後に、日常の会話から傾聴力を鍛える方法をお伝えします。どれも難しいものではありません。会話の中で次に説明することへの意識を持つことが大切になります。
1.姿勢や態度を意識する
まずは、しっかりと相手の話を聴くという姿勢や態度を意識することから始めましょう。
体は相手のほうに向け、姿勢はやや前のめりがいいでしょう。後ろにのけぞっている姿を想像してもらうとわかると思いますが、少し偉そうに感じませんか?相手への興味を示すためにも、やや前のめりの姿勢を意識することです。
表情は、あなたがいつもリラックスしている状態を心がけてみてください。
2.話す割合は、相手7:自分3を意識する
会話の中で話す割合は、相手が7割、自分が3割を意識しましょう。ほとんどの人は聴くことよりも話すことのほうが多くなりがちです。なので話す割合を意識することが必要なのです。
3割とは、体感的に全然話せなかったと思うくらいになります。
3.ペーシングを意識する
ペーシングとは、話すテンポやトーンなどを相手に合わせること。こちらがゆっくりと話しているとき、まくしたてるように早口で話し続ける人にはなんとなく話しづらいと感じませんか?ページングを合わせることで相手に安心感を与えることができ、心地よく会話を進めてくれます。
ゆっくり話す人には相槌をゆっくり行い、声のトーンが低い人には可能な限り低く合わせるようにしましょう。
4.言葉のオウム返しを意識する
相手の話したことをオウム返しすることで、相手は自分の話を理解してくれていると感じてくれます。
オウム返しの方法は、例えば「上司に怒られてしまって、明日仕事に行きたくない」と相手が言ったときには「怒られてしまって仕事に行きたくないんですね」という感じです。
これに慣れてきたら、次は相手の感情をオウム返しすることを意識してみましょう。例えば「上司に褒められて、すごくうれしかった」となったら、「褒められたことがうれしかったんだね」というふうに。
これらは会話内で常に行わなければいけないものではありません。自分の3割分の話や、相手の話の中でのページングなどをしっかり行いつつ、少しずつオウム返しをするようにしてみてください。
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文・構成/藤野綾子