オンラインの人格と、リアルの人格
――PCやタブレットメーカーで知られるレノボが日本、英国、米国の10代~70代の5000人を対象に実施した調査によると、Z世代(18~26歳)の約70%が「オンラインと現実社会の人格が違うと感じる」と回答しました。他世代の約40%と比較すると、「オンラインの人格」をそれぞれが持っているということでしょう。
また、Z世代の2人に1人が「リアルよりもオンラインの方が自分を表現しやすい」と答えています。
「私たちの相談窓口にアクセスしてくれる人の約60%が、10~20代です。面と向かって話すよりも、チャットの方が伝えやすいと感じている人は多いです。
さらに、本人よりもAIアバターの方が、コミュニケーションしやすいケースもあります。レノボ・ジャパンとの共同キャンペーン『Meet Your Digital Self』で、プラスサイズモデルのちなつさんという女性のAIアバターを作成しました。そして、ちなつさんのお母様と会話をしていただいたのです。
その結果、お母様は娘であるちなつさんへの意識が変わり、今まで以上に良好な親子関係に繋がることが予見される結果になりました。ちなつさんも“オンラインの自分と、リアルの自分がいい距離感で共存すればいい”ことに気付きます。
今、オンラインが人のつながりを分断するという論調で語られることが多いですが、オンラインだからこそ、人間関係を好転させ、人と繋がることもできる。そのために、それらを適切に使うことが大切だと感じています」
――リアルとオンラインの人格を意識しつつ、心地よく繋がることが「デジタルウェルビーイング」。
「とはいえ、人がいるところに、トラブルは発生します。不安や悩みがあると、視野がどうしても狭くなってしまい、相手を強い言葉で攻撃してしまうようなことも起こる。
『あなたのいばしょチャット相談』では、SNS上で発生した悩みも受け付けています。いつでもどんなときでも受け入れる。僕たちの存在が、より多くの人々の孤独や不安な気持ちに寄り添い、適切なサポートを受ける機会に繋げていきたいです」
大空さんは、「孤独になると、生きる力が弱くなっていき、マイナスになる。これをゼロまで引き上げるのが私たちの仕事です」と言いました。後編では具体的なサポートについて紹介していきます。
取材・文/前川亜紀 撮影/黒石あみ