一度退職した社員を再雇用する「アルムナイ採用」を導入する企業が増えているという。このアルムナイとは英語で〝卒業生〟を意味する言葉で、企業によっては「カムバック採用」「Uターン採用」とも呼ばれている。
そんなアルムナイ採用について、OpenWork「働きがい研究所」から調査リポートが届いたので、同社リリースを元に概要を紹介したい。
今回の調査レポートでは、アルムナイ導入が進む「金融業界」に着目。「退職者」による回答に限定して、評価が高い企業をランキング化している。
TOP5社の「20代成長環境」スコアは4点超え。社員の成長を促すフラットな企業文化も高評価のポイントか
金融業界に限定し、退職者が高く評価した企業を調査した今回の調査レポート。1位はゴールドマン・サックス証券、2位は米国に本社を置く日本法人のBofA証券、3位に英国本社の日本法人KPMG FASとなり、TOP3社はすべて外資系が占めた。
日系企業からは野村グループの2社、楽天カードがランクインしている。
ランクイン企業の業態別では、「証券会社、投資ファンド、投資関連」が6社、「クレジット、信販、リース」が2社などとなり、メガバンクや地方銀行、信金などはTOP10にはランクインしていない。
ランクイン企業のスコアを詳しく見ると、TOP5社すべてで「20代成長環境」スコア(5点満点)が4点を超えている。また、「社員の士気」スコアもすべて3.7点以上となっており、これは今回の対象データ全体の「社員の士気」スコアの平均が2.74点であることからも、非常に高い評価であると言えるのではないか。
退職した企業を「良い会社だった」と評価する上で、「自分が成長できたか」「成長できる環境が提供されていたか」は重要なポイントと言えそうだ。
ランクイン企業の成長に関する社員クチコミを見ていくと、教育環境が整っている、風通しがよく年齢にかかわらずフラットにコミュニケーションが取れるといった、「社員の成長を促す」職場環境があることが推察できる。
ランクイン企業の元社員が投稿した社員の成長を促す職場環境に関するクチコミ
「初めの数年間は考える暇もなくひたすらに膨大な仕事が降ってくるので、それを素早くこなして自分の睡眠時間と少しばかりやった仕事を振り返る時間を確保できるかが分水嶺になる。わからないことがあったらすぐに質問すべしという文化があり、質問した際には先輩が非常に丁寧に指導してくれるので、この点はすごく良いと感じた。走りながら高速で仕事を回すやりがいを初めの数年間で感じることができる(投資銀行部門、男性、ゴールドマン・サックス証券)」
「オープンかつフラット。若手が挑戦できる環境が揃っている。風通しはとても良い。廊下ですれ違ったパートナーとプライベート含め相談しやすい環境であり、年齢に関係なく議論できる。プロモーションスピードもはやく、優秀であれば年齢に関係なく管理職になれる(コンサルタント、男性、KPMG FAS)」
「新卒には手厚いトレーニングプログラムが用意されており、働きやすいと思う。本人の希望と努力次第で海外やフロントに移る例も多い(バックオフィス、女性、JPモルガン証券)」
社員は「アルムナイ」をどう受け止めている?
他業界に先駆けてアルムナイ制度の導入や、元社員との交流組織を設けている金融業界だが、それぞれの企業では実際に定着しているのでだろうか。また、一度退職した社員が再入社することに対して、社員はどのように受け止めているのか。
「アルムナイ」のほか、「カムバック」「再雇用」などのキーワードを含むクチコミを調べると、退職後も企業が元社員とのつながりを持ち続けることについて、「寛容な企業文化」として評価する声が見られ、家庭の事情で退職せざるを得なかった元社員を再雇用するケースが実際にあることもわかった。
また、TOP10にはランクインしていないが、昨年アルムナイネットワークの設立を発表した金融機関には、元社員との交流を歓迎する声や「自身のキャリアを考え、身につけたい業務の専門職へと転職をした。
カムバック採用などの制度も整っているため、また会社に必要とされるような人材になることを目指している」といった、制度を利用してカムバックを目指す声も投稿されている。
アルムナイ制度は、人材獲得の面だけでなく、社員のキャリア形成にも寄与すると言えそうだ。
■OpenWorkに投稿された金融業界のアルムナイに関するクチコミ
「卒業生・アルムナイとの人的ネットワークが豊富であり繋がりが強い。会社を辞めた後でも人脈が維持できやすい。退社後にスタートアップやファンド等で活躍している人が多く、啓発される若手の社員が多い。その様な、ある意味寛容な企業文化があるので、トップ級の人材を引き寄せ続けることができるのではないか(投資銀行部門、男性、ゴールドマン・サックス証券)」
「基本的には新卒入社の人間には色々な意味で優しい。日本のトップマネジメントの人間も新卒入社が多い。とはいってもやはり途中入社の人間の方が多く、出戻りもあり。一度退社し、他社に転職した後、その会社が肌に合わず、戻ってくる人間も多くみてきた。ギスギスした会社とは異なり、人に仕事を教わる機会も沢山あり、それが良しとされる文化があ。(トレーダー、男性、JPモルガン証券)」
「大企業ゆえ、産休・育休などの制度は非常に整っており、結婚や出産を機に退職する女性はほぼいない印象。また、配偶者の転勤などで一度退職した女性の再雇用システムがある(リテールセールス、女性、野村證券)」