新NISAの開始や日経平均の大幅な変動で盛り上がる株式市場。しかし、どんな銘柄を買えばいいのか。有識者の推奨銘柄も報道されるが、実際、どんな人物がどんな事業を行っているのか? ――そんな疑問に応えるため、【テンバガーを探せ】と題し、様々な投資家が推奨する企業のトップに取材を行う連載企画をスタート。日本で最も多くの社長を取材している経済ジャーナリスト. 夏目幸明が注目企業を解き明かします。
第1回は2023年6月13日に東証グロース市場に上場した、日本のAI市場をけん引する「ABEJA」(5574)。前半の記事では、「ABEJA」が現在行っている事業についてお話を聞きましたが、今回はAIによっておこる、これからの未来について聞きました。
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株式会社ABEJA代表取締役CEO
岡田陽介さん
1988年生まれ、高校でCGを専攻し文部科学大臣賞を受賞。2012年にABEJAを起業し、23年に東京証券取引所グロース市場上場。政府有識者委員会も歴任。
株式会社ABEJA
独自のAIプラットフォーム「ABEJA Platform」を基盤に300社以上に上る顧客企業のDXを支援。2023年には生成AIのひとつ、大規模言語モデルを「ABEJA LLM Series」として商用化した。
AIの大規模言語モデル+ロボットの技術で起きる変革とは
岡田 いま飲食店に、食事を運ぶロボットが普及しています。このロボットがAIの大規模言語モデル(Large Language Model、以下「LLM」)とともに進化すれば、社会構造が一変するはずです。
例えばお客さんがロボットに「ちょっと、お箸ちょうだい」と言ったとします。LLMは現在すでにその言葉の意味が理解できますが、ロボットが箸を取り出してお客さんに持っていく動作はできません。現状を人間に例えるなら、脳は進化していても、体が進化していない状況なんです。
夏目 とすると、今の可愛いロボットに可動型の腕がついて、ものをとったり、机を拭いたりするようになれば……?
岡田 今度はブルーワーカーの方たちの仕事が変わります。飲食店でコックさんがロボットに「キャベツがなくなっちゃったから買ってきて!」と言えば買ってきてくれます。いえ、むしろ料理もロボットが行う未来が来るでしょう。
一部コンビニでは、既に発注作業がほぼ自動化されるなど、店長さんの労働量が減少しています。今後は、商品が届いたらロボットが棚に並べ、お客さんに「肉まんちょうだい」と言われたらショーケースから取り出す、といったことが起きます。
建築現場も変わるでしょう。AIは人間と違い、1つの脳でいくつもの体を動かせます。この部品がここに届いたらすぐにこの工程を始めて……と人間より効率よく動けるはずです。
夏目 AIに仕事を奪われる、とおっしゃる方もいますが?
岡田 いえ、その分、人間は人間にしかできない仕事に専念できるはずです。高齢者や子供に寄り添うとか、何らかの創作活動は人間でなければできません。例えば介護や保育の仕事を見ていると、私も「これは人間でなければ無理だな」と思います。
夏目 岡田さん、そういう時代は夢でなく、本当にくるんでしょうか?
岡田 はい、必ずきます。