【実践例/営業】〝アーリーマジョリティー〟になることを意識して人から情報を聞き出そう
適切な情報収集の量や手段は、職業や職種によって異なる。営業の専門家・大村康雄さんによると、営業職では過度な情報収集がむしろ逆効果になるケースも多いという。営業に求められる情報収集やコミュニケーションスキルなどについて伺った。
エッジコネクション
大村康雄さん
慶應義塾大学経済学部在学中に有限会社ネクストサービスサプライヤーを創業。新卒でシティバンク銀行(現SMBC信託銀行)入行。2007年に営業マーケティング総合サポート企業・エッジコネクションを創業した。
〝付け足す〟会話の心がけが相手から情報を聞き出す秘訣
新規顧客の営業商談前に行なう情報収集の心がけには、2つの鉄則があると大村さんは言う。1つは「失礼にならないこと」、もう1つは「相手を萎縮させないこと」。前者は理解しやすいが、後者はどういう意味なのか?
「営業担当者が相手の業界やビジネスについて詳しくリサーチしすぎて、初回から『こうですよね』と言うと、相手は『どこまでこちらのことを知っているのか』と警戒してしまいます。その結果、逆効果になることのほうが実は多いのです。初回の商談では信頼関係を構築することが大事で、過度な情報収集は必要ありません」
晴れて信頼関係を築くことができ、商談がうまくまとまった後であれば、積極的な情報収集は吉と出る。「自分(自社)のためにこんなに調べてくれたんだ」と思ってもらえて、より良好な関係を築くことができる。
新規商談では「むしろ相手から話を聞き出すことが重要」だと大村さんは説くが、どのようなコミュニケーションを取ればいいのだろうか。
「〝付け足す〟とよく言うんですけど、相手の話に対して『確かに先日、リリースを出されましたね』などと〝付け足す〟ことで、会話が盛り上がります。こちらから先に情報を出すのではなく、直近の企業情報を把握して相手からの情報に〝付け足す〟ことができるようにしましょう」
そして、大村さんが重視するのは、社内の情報共有だ。相手先に説明できるよう、自社のサービス内容を頭に入れておくことはもちろん、商談で質問されがちな項目は、営業資料に盛り込んだほうが良いという。
「商談相手の疑問点を打ち消し、より商談しやすいよう、同僚から得た情報などをもとにブラッシュアップさせます。そして、成約した時の話の流れや、失注の原因など、営業チームとして一番欲しい情報を、部内で共有しておくようにしましょう」
現在は情報共有のためのデジタルツールが普及してきている。しかし、営業の場合はフォーマットに入力するシステムよりも、対面で話を聞くほうが有益な情報を得やすいという。
「デジタルツールへの入力では暗黙知(言語化されていない主観的なナレッジ)が共有されません。そのため、対面の会話を心がけ『成約もしくは失注した際の流れ』や『商談現場での微妙な温度感』といった情報を、互いに質問し合い、営業ナレッジとして得るようにしてください」
営業職にとって本当に必要な情報は人から聞き出すのが大前提
新規の商談では、相手が現在抱える課題や成約に必要な条件などの情報を聞き出すことが最優先。相手から頻繁に質問される内容を営業資料に盛り込めば成約率が高められる。また社内では、成約に至った話の流れなど、経験談を直接聞くことが営業の能力を高めることになる。
人から情報を聞き出すには情報に疎くても鋭すぎてもダメ!
アーリーマジョリティーであれ!!
イノベーター理論で〝キャズムよりも前〟という位置付けの「イノベーター」「アーリーアダプター」が得ている〝先鋭すぎる情報〟は、相手を委縮させるだけなので必要ないそうだ。「ただし話題のことを知らないのはNG。流行に敏感な一般人=アーリーマジョリティーのスタンスが適しています」(大村さん)