デロイト トーマツ グループから、デロイトが2023年10月~2024年1月に実施した世界調査「Women @ Work 2024: A Global Outlook」の日本版レポートが発表された。
本調査は世界各地の女性の職場環境や満足度、組織における女性向けの支援施策などを把握すると共に、職場が抱える課題を示すことを目的としたもの。2021年から実施しており、今回が4回目の調査となる。
前回までと同様に、日本、オーストラリア、ブラジル、カナダ、中国、ドイツ、インド、南アフリカ、英国、米国の計10か国で合計5000人の働く女性を対象に実施しており、日本版では、調査対象のうち、日本で働く女性500人の回答から示された傾向やグローバル平均との比較をまとめている。
本稿では同社リリースを元に、その概要をお伝えする。
マイクロアグレッションに関する経験を組織へ報告する女性の割合が上昇
過去1年間に職場で経験したインクルーシブでない行動として、グローバルでは31%、日本では33%の女性がマイクロアグレッション(※)を経験したと回答しており、セクシュアルハラスメントを経験した割合(グローバル:4%、日本:5%)のおよそ6倍となっている(図1)。
※ マイクロアグレッション:差別とまではいかないにしても、無意識なバイアスなどによって、無自覚に相手を傷つける日常的な言動
また、マイクロアグレッションを「所属組織へ報告した」と回答した日本で働く女性の割合は、2年連続で上昇している(2022年:21%、2023年:36%、2024年:72%)。
<図1:過去1年間に職場で各ハラスメントを経験したことがあると回答した割合>
インクルーシブでない行動を報告しない理由にも変化が生じており、2023年調査で最も多く回答されていた「報告するほど深刻とは感じなかった」(36%)は、今回の2024年調査では14%まで低下しており、女性の意識・行動に変化が生じていることが推察できる(図2)。
<図2:インクルーシブでない行動を報告しない理由トップ3>
一方で、「マイクロアグレッションを含むインクルーシブでない行動を報告した場合、自分が所属する組織が適切な対応を取ることを確信している」と回答した日本で働く女性の割合は4%で、グローバル(9%)を下回った(図3)。
<図3:インクルーシブではない行動を所属組織に報告した場合の影響>
■生理・更年期による休暇取得を含め、女性が働きやすい環境の整備に向けた具体的な措置が求められている
生理・更年期による「どのような痛みや症状があっても休暇を取らずに働き続けている」と回答した日本で働く女性は34%で、2023年調査から引き続き30%を超えている(2023年:生理44%、更年期:35%)(図4)。
<図4:生理・更年期の痛みや症状があっても休暇を取らずに働き続けている日本で働く女性>
ジェンダーの多様性の担保、特に女性活躍推進の上で、女性の生産性や働きやすさに影響する生理・更年期の課題は、組織が経営課題の一部と捉えて対策を講じることが必要だ。
本調査で「自分が所属する組織は、ジェンダーの多様性/女性活躍推進へのコミットメントを果たすために具体的な措置を講じている」と回答した女性は、日本・グローバルともに11%であり、所属組織による措置が不十分である状況が考えられる(図5)。
<図5:自分が所属する組織のジェンダーの多様性/女性活躍推進に対する認識>
■ハイブリッド勤務における柔軟性の低さに懸念を抱き、完全出社への回帰にネガティブな感情を抱く傾向
ハイブリッド環境(リモート・出社の組み合わせ)での勤務について、過去1年間に経験したことがある日本で働く女性は、「勤務パターンが予測できないと感じる」(31%)、「働き方の柔軟性が低い」(25%)、「フレキシブルに働きたいと意思表示しているにもかかわらず、出社を要求される」(24%)の順に「懸念がある」と回答した割合が高く、いずれも2022年調査・2023年調査における同回答の割合を上回っている(図6)。
<図6:ハイブリッド環境での勤務における懸念>
また、過去1年間に所属組織がオフィス出社回帰の方針を示したことが与えた影響について、常に出社が義務付けられている女性は、「自身が所属する組織に対してネガティブな感情を抱いた」と回答した割合が30%で最も高く、一定の出社が義務付けられている女性が同回答をした割合(6%)を24ポイント上回った(図7)。
<図7:組織によるオフィス出社回帰の方針が与えた影響>
■社会環境の変化および、働く女性の意識変化をより反映した施策を推進する必要性が増している
今回の調査では、マイクロアグレッションなどのエクスクルーシブな行動に対する働く女性たちの感度が高くなっていることが明らかになった。
また、女性活躍推進に関する組織の対応をシビアに評価していることも判明。組織が女性活躍推進などに取り組んでいたとしても、実際に組織で働いている女性からすると取り組みのレベルやスピードが不十分である可能性がある。
組織が人的資本経営を通じて競争力の向上を目指す上で、今まで以上に、働く多様な当事者との対話を重視し、意見をより反映させた施策を推進していく必要があるだろう。
さらに今回の調査では、所属組織によるオフィス出社回帰の方針がネガティブな感情を所属組織そのものに抱く結果に繋がっていることも明らかになった。
コロナ禍において定着したフレキシブルな働き方は、多様なメンバーの就業を後押ししてきた側面を持っている。今後も多くの組織がオフィス出社回帰の方針を選択することが予想されるが、出社が必要なタイミングを柔軟にする、勤務時間を調整できるようにするなど、組織が新たな「働きやすさ」を模索し、改善していく必要性が示唆されている。
構成/清水眞希