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複業で2つの仕事を掛け持ちした場合、残業代は誰が払うのか?

2024.07.26

複業でも8時間労働を超えれば割増賃金が出る

複業時代に対応するため国のセーフティーネットが進化

 晴れて会社の許可を得て複業をスタートしても、サラリーマンやその家族にとって、収入アップは喜ばしい反面、複(副)業先で事故に遭った場合の労災に関して危惧する人も多いだろう。「もしも本業のA社から副業先のB社に移動する時に事故に遭ったら労災は認められるか、休業補償はどの程度支払われるのか……」。そんな不安や疑問に対して大内教授は次のように答える。

前者のケースは〝通勤災害〟扱いになるので労災は認められますのでご安心を。ただ、休業補償の問題については少し前まで議論になっていました。問題は休業補償(通常、所得の約8割が給付される)が、労災が発生したほうの会社の給料だけをベースにするものであったこと。B社に向かう時の事故とはいえ、複(副)業先のアルバイト程度の収入をベースに休業補償をもらっても、十分ではありません。なので、2020年に労働者災害補償保険法は改正され、2社の給料を合算した額をベースにすることになりました。よって、仮に副業先の事故で、本業を休まざるを得なくなっても、十分な補償を受けられるようになりました」(大内教授・以下同)

 同様に、メンタルヘルス問題や、脳・心臓疾患で倒れたとして、仮に2社それぞれの労働は過重ではなくても、トータルでは過重だったと認められた時には、労災保険の給付が支払われるという。

 もうひとつ、大内教授が複業関連のホットイシューとして挙げたのが、労働時間の算定法だ。

労働者の1日の労働時間が8時間を超えれば時間外労働となって割増賃金が発生します(YouTubeなどの自営での就労は算入されない)。厚労省は複(副)業の場合には、それぞれの労働時間を通算して8時間を超えれば、労働契約を後に締結した企業に割増賃金の支払義務があるとしています。しかし、この規制を機能させるためには他企業での労働時間を互いに把握する必要がありますが、それは現実的ではありません。複業を広めるためにも、労働時間を通算するというルールの見直しが必要です。一方で、働き過ぎの抑止は自己管理に任せるしかないでしょう

 とはいえ、短期間にガイドラインを何度か改正し、複業者のセーフティーネットが確立する国の姿勢からは、複業を促進する本気度が伝わってくる。安心して複業を始められる土壌は整いつつある。

Q|A社で8時間、B社で4時間計12時間勤務時の残業代、誰が払う?

残業代、誰が払う?

A|セオリーは後から契約した会社Bが払う。ただ別ケースも

労働基準法第38条には「異なる事業場で働く労働時間通算される」という規定があり、1日の法定労働時間である8時間を超えると割増賃金をもらうことができる。仮に会社Aで8時間、複(副)業先の会社Bで4時間働いたとして、1日の法定労働時間の8時間を超えるため、会社Bは4時間分の割増賃金を支払うことになる。また会社AとBで1日8時間働き、仮に会社Aで2時間分の残業が発生し8時間を超えた場合は、その割増料金をA社が支払う。

POINT

□ まずは自社の就業規則を確認しよう
□ モデル就業規則と見比べよう
□ 隠れて複業よりも相談して始めよう

※本特集の複業の定義は「複数の仕事を〝どれも本業〟という考え方で働くこと」を指しています。しかし、本ページで紹介する労災保険や労働時間の通算など法律に関係する部分は厚労省が定めた「副業・兼業」(=複数企業と雇用関係がある場合)にのみ適用されるので、その部分を複(副)業と表記しております。

取材・文/安藤政弘

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