新コンセプトの「SIPストア」はなぜ誕生したのか?
そもそも「SIPストア」は何を目的に生まれたのか。
セブン&アイグループは「次世代のセブン‐イレブンの模索」を見据えているという。
顧客の消費行動が多様化する中で、より幅広いニーズに応えていくためにはグループの強みを集結していくことが不可欠。イトーヨーカ堂をはじめとするスーパーストア事業が培ってきた生鮮品等の品揃えや展開管理方法など、多くの知見を「SIPストア」に融合したことが特長だ。
■わずかでも好奇心を満たすための、企業の大きな努力
日本の食品スーパー1号店は、1953年(昭和28年)11月に開業した紀ノ国屋や1956年に福岡県小倉にオープンした丸和フードセンターとされているが、当時の人は、自分で商品を手に取り、レジを通して支払いする方法にワクワクを感じていたと思う。
1974年に江東区豊洲にオープンした国内のセブン‐イレブン1号店。
日本のセブン‐イレブンで初めて売れたのはサングラスだそうだが、このサングラスを買った人も多分「目新しいかたちのお店を見てみたい」というちょっとしたワクワク感を持って店舗に入ったに違いない。
それからスーパーもコンビニも日本中のあちこちにできて、人が少ない地域のことを「コンビニもない町」という表現が使われるほどになった。今はもう、スーパーに行くのも、コンビニに行くのも、毎度ワクワクしている人はいないだろう。
多くの人は新しいものが好きだし、知らなかったものを知りたいという好奇心を持って生きている。だとしたら、お店も街も、そうした「新しいものを求める」気持ちを満たすために変化を強いられるのは仕方ないことかもしれない。
コンビニやスーパーだけでなく、街にある喫茶店、薬局、レストランだって、日常を維持しつつ、少しずつ変化させていかないと、顧客のワクワク感は充足しないし、ほかの新しいものに目移りしてしまう。
長い間、顧客を惹きつけるのは本当に苦労することなのだろうと思う。そして、企業はそのための努力を日々続けているのだと「SIPストア」の誕生から改めて感じた。
「SIPストア」はこれからどんな進化を遂げるのか
多くの人のワクワクを集める「SIPストア」。
10年後、同じような店舗が日本全国を席巻するのか、違うかたちに変化していくのか、そして、どう私たちの日常を満たしてくれるのか。考えただけで期待が膨らむ。
もしかして、私が抱くこの思いこそが、セブン&アイ・ホールディングスの狙いなのかもしれない。
取材・文:内山郁恵