これからのロボットは進化したAIにボディを与える形になる
GMO AIRの顧問を務める、千葉工業大学 未来ロボット技術研究センター所長・古田貴之氏がAIとロボットの融合について語った。
「仮想空間で4096台のロボットとAIを共有して、4096台のAIを2万世代進化させます。これからのロボットはロボットにAIを与えるのではなく、2万世代に育てたAIにボディを与える形となってきます」
電動4足歩行ロボット「Unitree GO2」を使ったデモンストレーションを紹介。このロボットを古田氏は「絶望ロボット」と呼んでいる。自分の脚が4本あるかさえ知らないロボットをAIにボディとして与えることで動きを学んでいく。AIにボディを与えるという形に進化して、人と同じように動ける機械制御を目指してきたロボット研究者を絶望させる、というのが命名の由来だ。
「今までは我々ロボット研究者、ロボットメーカーがロボットを作っていましたが、ロボットが世の中に浸透するには、作るだけではダメなのです。パソコンがハードウェアを作ることから、ソフトウェアの開発者、クリエイターの手に渡ったように、ロボットというのは単なるボディで、AIを開発するソフトウェアメーカー、様々なサービスプロバイダーがボディを与えて事業を展開しなくてはいけないと思っています。
実社会でロボットAIが動くためにとても重要なのは様々なサービスベンダーだと思います。ネットワークや、セキュリティ、技術、お金、保険、こうしたビジネスを全部まとめて、数多あるロボットを世の中に普及させることで、ロボットがビジネスとして浸透していく。GMO AIRがスタートした今日は、時代の転換といえる日だと思います」(古田氏)
発表会では、様々な業界で活躍するロボットたちが登場。「ugo+drone」はジャパン・インフラ・ウェイマーク社とugo社が共同開発。ugoのロボットに遠隔巡視点検用のSkydio社のドローンを搭載し、施設内の特定の場所までロボットがドローンを自動で運搬し、離発着させることができる。
ボストン・ダイナミクス社の多脚型の「Spot」は、遠隔地で人が行っていた業務を代行させて効率化を図り、危険な場所も人より先に向かわせて現場を確認して安全を確保する業務を担う。福島第一原発の調査でも実績を上げている。
「Unitree B2」も絶望ロボットGO2と同様の多脚型。災害現場や建設現場、電力プラントなど、過酷な環境下における巡回監視などでの活躍が期待されている。
「Unitree H1」は購入者が二次開発できる身長180cm、体重47kgのフルサイズのヒューマノイドロボット。開発元のメーカーUnitree社がオープンな開発環境や深層強化学習用のシミュレーションモデルを提供しており、ロボット開発者やAI研究者が注目しているロボットだ。
【AJの読み】今後はAIが主役になるロボットが社会に実装されていく
競合となるソフトバンクロボティックスとの差別化は何かと記者から問われた熊谷代表は、30年培ってきたネットインフラサービスだと答えた。
「Google、Yahooで検索した場合、58%のウェブサイトはGMOのデータセンターで管理され、83%の「.com.co.jp」のドメインはGMOが提供しています。国内のSSLの50%以上をGMOグローバルサインが提供しています。
こうしたGMOのネットインフラサービスの実績、シェアを考えますと、AI産業とロボット産業が融合していく上での仲人役としては圧倒的な実績があり、今後もその点は磨いていけると考えています」(熊谷氏)
紹介されたロボットは多脚やヒューマノイド型など脚があるロボットが多かった。AIにボディを与えるという新しい考え方のロボットでは、人が行う作業を代替できる多脚型、人型のロボットが活躍の場を広げると古田氏は話す。
「今までの産業ロボットはクローラーや車輪が多く、従来型のロボット制御では脚型は実用化される機会が少なかったんです。しかし現在のような非常に進化したAIにボディを与える作り方だと、多脚型や人型は人が働いている環境に対応できる、さまざまな動き方ができます。
社会のあらゆる産業にロボティックスが浸透するためには、進化したAIにボディを与え、さらにそこにネットワーク機能や付随する様々なサービスをつけることで初めて脚型や人型のロボットのサービスを提供できるようになります。
こうしたサービス提供は研究者やメーカーだけ無理です。新会社のGMO AIRは多脚ロボットをはじめとした、世の中の役に立つボディを持っているロボット企業のハブになるといえるでしょう」(古田氏)
取材・文/阿部純子