「技術屋魂」を貫くことで生まれる良い商品と葛藤
三國さんの長年の苦労が実り、ようやく商品化が実現。その原動力には、「技術者としての想い」があったと話す。
「開発当時はまだ、サポニンが鳥類や獣を寄せつけないという文献があまりなく、ヒトデは世間から注目されていませんでした。私は技術者の気質があり、どこかでヒトデから抽出した成分を活用した商品を開発したら、世界的な先駆者になれるとも考えていたんです。私自身が海の近くで生まれ育ったこともあり、漁業者がホタテをヒトデに食べられてしまって悩んでいる光景を見て、『なんとかしたい』という想いもありましたね」
三國さんは、「技術者としての想い」と「商売人としての想い」に葛藤があると続ける。
「カラス避けの商品は、1回使ってカラスが来なくなるとリピートにつながりません。正直、大変な商材を作ってしまったと感じましたね(笑)。ただ、当社のような小さな企業は『良いものを出さなければやっていけない』と思っています。私自身、技術者魂が働いて、リピート購買に繋がらないものばかり作ってしまうんです。開発ばかりやっていて、営業などを後回しにしていると、開発費用だけで資金が底をついてしまいます。『もうダメかも』と感じる場面がこれまでに何度もありました。その度に、新聞やテレビ、ラジオなどのメディアに取り上げていただき、救われてきましたね。そうしたことを十数年繰り返して、今があるといった感じです」
カラス避けの効果には定評があり、北海道のシンボル札幌時計台でも使用されているという。
「札幌の時計台は多くの観光客が写真を撮るスポットですが、カラスのフン被害で困っていたんです。そうした状況から札幌市が当社のテープを導入したところ、ほとんどカラスが寄りつかなくなったと聞いています」
他企業との協業で広がる可能性、生活に密着した良い商品を生み出し続けたい!
北海道環境バイオセクターでは、SARABAカラスくん以外にも、サポニンを活用したさまざまな商品を開発している。
「当社の製品は、科学的な成分は一切使用していないため、どれも安心してお使いいただけます。例えば、魚を扱った際の生臭さを消すことに特化した石鹸『我樹丸(がじゅまる)』は、『皮膚やクーラーボックスに付着した臭いが取れない』という釣り人の声を受けて開発した商品です。今では多目的に使用されており、特殊清掃をする企業でも採用いただいています」
最近では、さまざまな企業から協業の問い合わせも増えてきているという。
「当社のWEBサイトでは、ヒトデから抽出するサポニンの成分が持つさまざまな効能を紹介しています。SARABAカラスくんのように鳥や虫、獣を寄せ付けない効果に加え、消臭効果もあります。他にも医薬品としては止血剤、水虫菌を抑制する効果も期待できるんです。これまでは独自で製品開発してきましたが、今年に入ってきてから、そうした効能に興味を持った企業さんから協業の問い合わせをもらうこともありますね」
最後に三國さんは、今後の展望について次のように語ってくれた。
固形石鹸『SAVON』にはマリンサポニンが含まれ、荒れた皮膚に直接働きかける作用がある
「今後も、人の暮らしに密接なさまざまな商品を開発したいと思っています。現在取り組んでいるのが、石鹸関連の商品です。ヒトデのエキスが、皮膚の活力を取り戻す点を利用して開発しました。また、人間を襲う『蚊』に対抗するためのものとしても利用できます。蚊は人の死につながるデング熱をもたらすこともあるので、蚊避けとなる石鹸商品を開発しました。今後も、人の体を守るための商材を主に開発をしていきたいと思っています。当社だけでは完結できないことも多く、他企業とコラボをしながら良い商品を作っていきたいです。微力ながら、何とか良い製品を世の中に出していきたいという想いを常に持っています」
取材/DIME編集部、文/久我裕紀