ヒトデから抽出した成分を活用し、テープ・ステッカー・シート・塗料タイプのカラス避け商品を販売する、株式会社 北海道環境バイオセクター。同社が開発した『SARABAカラスくん』は、札幌市の時計台をはじめ、さまざまな場所で使用されており、カラスによる被害を防いでいる。
今回はSARABAカラスくんを開発した同社代表 三國康二さんに、カラス避けを開発することになった経緯や開発時の苦労話などについてお話を聞いた。
*本稿はVoicyで配信中の音声コンテンツ「DIMEヒット商品総研」から一部の内容を要約、抜粋したものです。全内容はVoicyから聴くことができます。
ヒトデから抽出される発光成分がカラス避けに有効?
はじめに、三國さんはSARABAカラスくんの特徴について、次のように話す。
「ヒトデから抽出するサポニンという成分は、太陽光に含まれる紫外線の光を吸収して発光します。SARABAカラスくんは、その特性を活用し、カラスが嫌がる光を発することで恐怖を感じさせ、寄せつけない商品です。発せられる光は、人の目では感じ取れないため、人には無害なんです」
北海道環境バイオセクター社は従来、産業廃棄物を扱ってきた企業。ヒトデから抽出したサポニンを活用した商品を開発するに至った経緯について、三國さんは次のように振り返る。
「北海道ではヒトデが帆立を食べ、漁獲量が減ってしまう被害が発生していました。ヒトデの駆除が必要でしたが、ヒトデに含まれるサポニンは一種の毒。ヒトデを分解して処理するには技術が必要です。当社でヒトデを堆肥(たいひ)にする処理を行なっていましたが、『なんとかこのヒトデを活用できないか』と考えていたんです。そんな時、たまたまヒトデを堆肥にし、野積みにしていたところ、カラスが近寄らなくなったことに気づいたんです。これをヒントに商品化を検討するようになりました」
商品化に至るまでの大きな障壁とは?
ヒトデに含まれるサポニンの活用に着目した三國さんだったが、実際に商品化に至るまでには多くの障壁があったという。
「抽出されたサポニンは薄い黄金色で、無臭に近い水溶性の液体です。ステッカーやテープ商品を製造する際は、サポニンをインクに混ぜて印刷する必要があります。ただ、『水と油は混ざらない』とよく言うように、油性のインクと水溶性のサポニンを混ぜることは、とてもハードルの高いことでした」
三國さんは、この課題を解決するために日本全国にある企業を尋ね回った。
「先方に誠意を見せるため、『何としてもこの商品を作りたいんです!』という熱い想いを伝えました。当時は勢いしかありませんでしたね。ただ『そんなことはできない』と回答されることがほとんどでした。そんな中、ある大阪の印刷会社が『やってみましょうか』と言ってくださったんです。私は技術屋で、チャレンジ精神を持って商品開発をしていますが、ご対応いただいた方も技術課長で『一緒に挑戦してみよう』という話になったんです」
一番の問題は、サポニン独特の〝強烈な臭い〟
他にも、3年以上にわたる開発期間で三國さんを苦しめたのが、サポニン特有の〝臭い 〟。 自宅の台所で日々、無臭化するための実験を行なったという。
「手探り状態で開発を進めていく中、一番の壁がサポニンを抽出した後に発生する臭いでした。サポニンの臭いは強烈で、例えば針の先でワイシャツに一滴落としただけでも、近くにいられないほどの強い臭いがします。また、抽出した後にカビが生え、使い物にならなくなってしまう問題もありました。それだけヒトデを扱う商売は難しく、ヒトデ関連の商品が出てこない理由を痛感しましたね。こうした大きなハードルを乗り越えるために、3年以上かかりました」