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世界初の木造人工衛星を生んだ日本の伝統技法と技術力

2024.06.13

木造の人工衛星――果たしてそんなものが成り立つのか。NASA(アメリカ航空宇宙局)もJAXA(宇宙航空研究開発機構)も、視野になかったものが日本人の手で完成した。5月30日、京都大学と住友林業が共同開発した世界初の木造衛星、「LignoSat(リグノサット)」の完成発表会が京都大学で行われた。木造人工衛星は6月4日にJAXAに納入、10月にはISS(国際宇宙ステーション)から宇宙に放出。運用がはじまる。

昨年7月に@DIMEで紹介した木材の宇宙空間の曝露試験について、レクチャーをお願いした住友林業 筑波研究所住宅・建築2グループ マネージャー苅谷健司さん(54)に、木造人工衛星「LignoSat」の開発秘話を語ってもらった。苅谷さんは今回のプロジェクトの初期から関わり、木造人工衛星を開発に至るまでの一部始終を熟知している。

前編はこちら

住友林業株式会社 筑波研究所住宅・建築2グループ マネージャー苅谷健司さん

木は人工衛星に向いているのではないか

宇宙飛行士、土井隆雄氏が2016年京都大学に特定教授に就任し、火星での木材の有利性を説いたことからはじまった。宇宙には木材の敵の湿気、カビ、微生物がない。何千もの小型人工衛星を結ぶメガコンステレーションが進行する中、小型人工衛星のニーズはある。

木は大気圏に突入し燃え尽きても、炭素と酸素と水素に分解され、宇宙環境に悪影響を及さない、人工衛星に向いているのではないか。

2022年にISSの船外に木材を置く、曝露試験を実施。294日間の試験でも、木材にまったく変化が見られない。木材の人工衛星への使用に問題なしという結果を得た。

「LignoSat」の製作は、曝露試験と同時並行して進められた。打ち上げの震動でもびくともしない、木造のキューブ型の10cm角の箱、そのテーマを満たすために日本の伝統技法、「留め形隠し蟻組接ぎ」が用いられた。

写真/黒田工房・京都大学

強固な接合を実現させる伝統技法

「留形隠し蟻組み接ぎ」は、木と木を組み合わせる伝統技法だ。木材の端をくり抜いたり削ったりして、ジグザグ状の溝と舌のような形の突起部分を作り、それをはめ込んで密着させ、強固な接合を実現させる。木材は宇宙空間の曝露試験で試された、割れにくいホウノキが採用された。住友林業の保有林から採集したものだ。

家具や建築等に用いられる「留め形隠し蟻組接ぎ」には通常、厚さ30mm程度の木材が使われる。だが、今回は工房の職人がホウノキの板にカンナをかけ8mmの厚さにし、技法を用いて、キューブ型の箱を作製した。

箱の大きさは10cm×10cm×10cm。JAXAのレギュレーションに沿った寸法だ。NASAやJAXAのレギュレーションを完璧に踏襲し、ISSから宇宙に放出してNASAのお墨付きを得ることによって、将来的に木造人工衛星の汎用性を高めたいという狙いがある。

厚さ4mmの細工

ところが――

「もう少し、容積を大きくすることはできないだろうか」

「LignoSat」の中に納める電子基板の製作チームから、そんな要望が上がる。それに応えるためには、木材をさらに薄くする必要がある。木材の厚さを8mmから4mmに削り、伝統技法で再度、箱をくみ上げた。苅谷健司は言う。

写真/黒田工房・京都大学

「4mmの木材を接ぐのは腕がいりますよ。木には年輪があるから、硬いところと柔らかいところがあります。木の端を彫刻刀で彫るのですが、木目の見方を間違えると簡単に割れてしまいます」

プロジェクトの中心メンバーの一人、京大大学院農学研究科の仲村匡司教授と親交がある黒田工房の技術者は、厚さ4mmのホウノキの板を伝統技法を駆使し、手作業でキューブ状の箱に作り上げていった。

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