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〝ゆるブラック〟企業が生まれる背景にあるもの

2024.05.19

ブラックの存在が社会問題化されてから10年ほどが経ち今では相当に浄化が進みました。

それにより確かにブラック企業は少なくなりましたが、今新たに『ゆるブラック企業』が問題視され始めています。そこで今回は、ゆるブラック企業とは何なのか?ゆるブラック企業が生まれる背景にはどういった原因があるのか。ゆるブラック企業の特徴と脱却策について言及していきたいと思います。

ゆるブラック企業とは?

ブラック企業というワードが一般的に使われ始めたのは2012年頃からと言われています。

ブラック企業とは残業時間が長く、休日も少ない、そしてそれらに対しての賃金の不払いがある、また過度なノルマを課す、ハラスメントが常態化している、コンプライアンスへの意識が低い等のいずれかもしくは複数が該当する企業の事です。

ただ現在は、法律が整備されるなどの外的要因もさることながら、ブラック企業と認定されてしまうことを回避しようとする企業側の内側からの努力もありその数は急激に減りました。

それ自体は良い事だと思うのですが、昨今そのブラック企業への対策の副産物である『ゆるブラック企業』の問題が取り沙汰されるようになってきました。

『ゆるブラック企業』とはブラック企業の程度が緩いという事ではありません。

一言で言うと《労働環境は厳しくないが成長も出来ずスキルも身に付けられない》企業のことです。企業が徹底的にブラック企業の汚名を回避しようとし続けた結果、残念ながらただの『緩い』環境が生まれてしまったのです。

ブラック企業の誕生の経緯とその特徴

ここでゆるブラック企業の特徴について定義しておきたいと思います。

・ 残業や休日出勤がほぼない
・ 厳しいノルマがない
・ ハラスメントの撲滅やコンプライアンス遵守に向けた意識が高い

ということになります。まさにブラック企業とは正反対の様相です。

ブラック企業を回避しようとした企業の姿とすればこういう形になるのはある意味当然です。そのようになることでブラック企業が一掃されようとする社会の中では、追い風が吹きました。具体的には離職が減りさらに採用面でもプラスに働きました。そういった企業が成功事例としてメディア等で取り上げられるようになると、さらに多くの企業が追随する流れが出てきます。「離職率0%」や「残業時間0」のような見出しが持て囃されました。

多くの企業がこぞってそのような体制を築くべく研鑽を重ねました。そして現在に至りますが、結果として今社会には《無自覚のゆるブラック企業》が非常に多く存在してしまっていると感じます。

ゆるブラック企業の弊害

ゆるブラック企業ですが、「ゆる」はつくものの、つまりブラック企業ですからネガティブな意味を持っています。では何が問題なのでしょうか?

それはつまりネーミングの基になっている『緩さ』にあります。

確かに残業はないし休みもしっかり取れる、ノルマもありません。ノルマもないのでストレスもありません。ただただ快適です。ただノルマが無いということは、そうです。目標がありません。目標が無くても出来る単純作業の繰り返しだけになります。それを繰り返しているだけでは当然成長も出来ませんし、新たなスキルも身に付きません。それこそがこの『ゆるブラック企業』がブラックと言われる所以です。またこのような単純作業を繰り返しているだけの社員に多くの給料を支払うことは出来ませんから給料も上がりません。

最初のうちは良かったかもしれませんが、長居をしているうちに仕事に飽きて来たり、将来を不安に感じたり、給料の安さが気になりだすことがあるかもしれません。そうなった時に転職をしようとしますが、それまでやっていた仕事は、安い給料でストレスなくやって来た単純作業のみ。それでは同レベル・同賃金の仕事以外には転職できません。まして時間の経過とともに歳はとりますので年齢が高くなっていき、ますます転職のハードルは上がってしまいます。転職も出来ない…そしてさらに最悪な事に社員に成長の機会を与えられない企業はいつしか企業そのものも弱体化していきます。競争力を失いいつか雇用を維持できなくなるかもしれません。ただ、その時に他へ移ることが出来ないのです。

つまりそのように知らず知らずのうちに抜け出せない蟻地獄のような状況にはまっていく恐れがある企業、それがゆるブラック企業なのです。

ブラック企業はまだブラック企業と気付いた時点で抜け出すことが出来る事を考えると、このゆるブラック企業の方が性質は良くないかもしれません。自身の会社がそのような状況に陥っていないかをよく見てみる必要があると思います。

ゆるブラックを脱却する方法

自身が経営する、もしくは所属する企業がそのような状況に陥っていると気付いたとき、そこから抜け出すにはどうすれば良いでしょうか?

就業の環境は既に改善されていますし、現状の法律等を考えてもそれは維持していくべきですので、変えるべきはそこではありません。方法は簡単です。社員にノルマを課してください。

ノルマというワードには無条件に抵抗感を持つ人も居ますので「目標」と置き換えれば良いです。過度ではないが現状ではクリアできない目標を設定します。それを設定するためにはまず会社自体が目標を持つ必要があります。

「昨年対比売上〇%up・新規顧客数増」等それを達成し続けなければ企業が存続できないはずですので、まずはそれを立てます。そしてそれを達成するために各社員に担って貰わなければならない分を各社員の目標として課すのです。それを課すとそういったことが無い環境に慣れた人たちに最初は嫌がられるかもしれません。ただよく考えて下さい。先程のように設計した目標は過度でも何でもありません。企業が存続するために必要な各自が負担すべき責任なのです。ですから課すべきかどうかではなく課さなければならないものなのです。社員にそれを課さず会社の目標を達成しようとするならばそれは、全て社長が肩代わりしようとしているという事になりますが、そんな思いをしてまで社員を雇っておかなければならないのでしょうか?

しっかり各自に目標を設定しましょう。

目標を設定すると期限を迎える度に各自の過不足が明らかになります。目標を超えられる人にはさらに大きな役割を担って貰い、不足が発生している人にはその不足を埋める事を求めて行きましょう。そのサイクルをどう作って行けば良いかは今回のテーマからはズレますので次回以降に回しますが、そのように社員が成長できる環境を用意しましょう。

就業環境が整っていてかつ成長が出来る。たったこれだけのことでゆるブラック企業から脱することが出来るのです。

まとめ

今回はゆるブラック企業について述べました。

私が新卒で入った会社も今になって思えば完全にブラック企業でした。しかし当時はそれが当たり前の世の中でした。その時は家族との時間も犠牲にしていましたので幸せではありませんでした。報酬が得られているから良い、成長は出来ている、と自分に言い聞かせてごまかしながら過ごしていたのだと思います。それから時間が経ちブラック企業という言葉が出来て問題視され、世の中全体が改善に向かっていく中で多くの人がそういった環境から救われたことは非常に素晴らしい事だと思います。

ただ、現在はそれが行きすぎてしまっています。

就労環境を整えしっかり集中して働ける環境を作ったのであれば、本来はそこでしっかり社員に働いてもらうべきだと思います。その中で社員達に糧を得る力を付けさせ誰の手を借りなくても自立してやっていけるよう手助けをする環境を整えること。それが今後の企業に求められる姿だと思います。

この記事はマネジメント課題解決のためのメディアプラットホーム「識学総研」による寄稿記事です。

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