あの頃感じた原体験を令和の時代にも届けたい
ずっと思いを寄せていた『シティーハンター』への出演に、何かしらの因縁を感じていると語る鈴木さん。運命の作品ともいえる『シティーハンター』は、キャリアにどんな意味をもたらしたのか。
「視聴者に届いて反響を得るまでわからないですが、自分の代表作になったらと思っています。手ごたえはないといえば嘘になりますね。今の時代に冴羽獠を演じる、ひとつの形は提示できた気がしています。そのうえで、ど真ん中の世代には〝これは間違いなく『シティーハンター』だ!〟と感じてもらいたいし、作品を知らなかった人たちには〝ぶっ飛んでいておもしろいな〟と思ってもらえたらうれしい。僕が子供の頃思い描いたように『新宿に行ったらこの人たちに会えるかも』と想像する気持ちを届けたいです」
「僕たちの仕事は拒否され続ける」それでも俳優を続けてきた理由
今作でまたひとつ、憧れの人物を演じる夢をかなえた鈴木さん。とはいえ、俳優としての始まりを振り返れば、決して順風満帆とは言えない苦い経験もある。
「俳優を目指した当時は事務所に入りたくても、オーディションに受かりたくても、なかなか通らないのが当たり前。僕たちの仕事はずっと自分を拒否され続けるんです」
大学卒業後、俳優に主軸を置いて活動しようとするも、待ち受けていたのは認めてもらえない日々。それでも、彼が仕事を続けてきた背景には、俳優という職業へのもうひとつの初恋があった。
「たぶん僕、ものすごく負けず嫌いなんですよね。俳優になりたいと言っても、周りからは荒唐無稽だと思われていたのが悔しかった。絶対にかなえるんだと意気込み、大学で演劇サークルに入部したんです。気持ちだけは強かったので、最初のオーディションでメインの坂本龍馬役を勝ち取ったのが始まりでした」
初めて立った舞台の経験がもたらしたのは、まるで一目惚れのような忘れられない感覚。
「自分とは全くの別人になりきって役を体験するのは難しくて、だけど本当におもしろかった。それに、自分の拙い演技で観客の感情が動いていくのが不思議で。一生の仕事として惚れ込んだ瞬間でした」
そこからスタートした俳優人生。歩みとともに変化し続ける恋心は、今こんな形で彼の中に根づいている。
「40代からは作品を大ヒットさせることや、自分の力を証明することよりも、観ている人の心に強く残る作品を作りたい。自分が死んだとしても、愛してもらえるものを残して、誰かを救うことができたらいいなって思います」
方法は違えど、いつか憧れた冴羽獠のように、自分も誰かを救い続けたい。彼が抱いた初恋は、まだまだ冷めない――。
俳優はおもしろくて、不思議で、難しい。
だから一生の仕事として惚れ込んだ